若年女性では肺がん罹患率が男性より高い

喫煙行動の男女差で発生率の差異の根拠が十分に説明できない

2018年5月24日にNew England Journal of Medicine誌で発表された研究結果により、米国で肺がんの発生率は歴史的に女性より男性のほうが高いというこれまでの傾向が、1960年中頃以降に生まれた非ヒスパニック系白人およびヒスパニック系の間で覆され、この研究結果が喫煙行動の男女差により十分に説明できないことが明らかになった。今後、若年女性の肺がん発生率の高い理由を明らかにする研究が必要である。

著者は、米国で肺がん発生率は女性より男性のほうが高いことがこれまでの研究で明らかになっていると研究背景に記載した。同時代の人々の肺がん発生率は男性より女性のほうが高いのか、もしそうであれば喫煙行動の男女差で十分に説明がつくのかどうかを同時に評価するため、男女別、人種または民族集団別に米国のがん発生率および喫煙率の最新データを、アトランタのアメリカがん協会(ACS)内の監視および保健サービス調査機関(Surveillance and Health Services Research)およびメリーランド州ロックビルの米国国立がん研究所(NCI)内のがん疫学・遺伝学部門(Division of Cancer Epidemiology and Genetics)の研究者グループが調査した。

特に研究者らは、男女別、人種または民族集団別、年齢群別(30~34才、35~39才、40~44才、45~49才および50~54才)、生年別(1945~1980)および診断の暦時間別(1995~1999年、2000~2004年、2005~2009年および2010~2014年)に全国的な集団ベースの肺がん発生率を調査し、発生率の女性対男性の比率を算出し、また1970~2016年の米国国民健康聞き取り調査(US National Health Interview Survey)のデータを用いて喫煙率を調査した。

過去20年間、年齢別の肺がん発生率は人種や民族集団すべてにおいて30~54歳の男女ともにおおむね減少しており、男性の肺がん発生率は急激に減少している。その結果、非ヒスパニック系白人は男性より女性のがん発生率の比率が増加し、30~34才、35~39才、40~44才および45~49才の年齢群において1.0を超えた。例えば、40~44才の年齢群の白人では、男性より女性のがん発生率の比率が、1995~1999年の0.88(95% 信頼区間[CI]、0.84 to 0.92)から2010~2014年の1.17(95% CI、1.11 to 1.23)に増加した。

男女別の肺がん発生率の交差が1965年以降に生まれた非ヒスパニック系白人の間で見られた。男女別の肺がん発生率の減少が非ヒスパニック系の黒人、ヒスパニック系、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系の間で見られ、男性から女性への肺がんの高発生率の交差がヒスパニック系のみで見られた。

1965年以降に生まれた女性の喫煙有病率は男性の喫煙有病率に迫っているが概して超えていない。

筆者は、禁煙後、腺がん(男性より女性に多い肺がんのタイプ)はその他種類の肺がんよりもリスクが緩やかに減少することを説明した。限定的ではあるが、TP53およびKRASがん遺伝子など重要なドライバー遺伝子の変異頻度が高いなど女性の感受性の高さを裏付ける生物学的および遺伝的エビデンスが一部ある。

女性の肺がん症例の積極喫煙以外の要因は約15%を占め、男性では10%を占める。アスベストやヒ素など肺がんの発がん性物質の職業性曝露は、喫煙との相乗作用があり歴史的に女性よりも男性に多かったが、過去数十年間にわたり激減した。これは男性の肺がんの急減に寄与している可能性がある。受動喫煙も過去数十年にわたり大幅に減少しているが、この減少は男女間に有意差があると確認されていない。同様に屋外大気汚染曝露の変化について男女差は期待できない。逆に、併合した大規模コホート研究結果により、非喫煙者の肺がん発生率が70歳未満について男性より女性のほうがわずかに高いようであることが明らかになった。しかし、非喫煙要因への曝露の経時的変化および患者背景がもつ確率における性差により女性の肺がんリスクがどの程度増えるかを推定することは困難であろう。

男性より女性において、検診や画像診断で無症候性肺腫瘍が検出される頻度が高いことは、女性の肺がん発生率が高いことのもう一つの説明である。

可能性の低さが主要な研究知見の解釈に影響する場合があるという警告がいくつかあることを除き、最近の研究の強みは、肺がん発生率および喫煙率の全国的な集団ベースの高品質データを使用している点である。したがって、歴史的に女性より男性のほうが、肺がん発生率が高いという傾向は1960年中頃以降に生まれた非ヒスパニック系白人およびヒスパニック系について覆され、喫煙行動の男女差で十分に説明できないと筆者は結論付けた。

本研究結果は公衆衛生について重要な意味が含まれている。若年のコホートとしては、男性より女性の間で今後肺がん全体の疾病負荷が高まる前兆となるということだが、それは若年女性の喫煙を減少させるため喫煙防止対策強化の必要性をさらに強調している。また本研究結果から、若年女性の肺がん発生率が高い理由を明らかにするために、男女別の肺がんリスクについて継続的にモニターすることや喫煙に関連した肺がんに対する感受性の男女差を含む病因を研究することが求められる。

本研究は米国がん協会による支援を受けた。

Devesa医師およびThun医師が同等に本記事に貢献した。

Reference
Jemal A, Miller KD, Ma J, et al. Higher Lung Cancer Incidence in Young Women Than Young Men in the United States. NEJM2018; 378(21):1999-2009. doi: 10.1056/NEJMoa1715907

翻訳担当者 松長愛美

監修 稲尾崇 ( 呼吸器内科/天理よろづ相談所病院 )

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原文掲載日 

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