新規RET阻害剤が複数のがん種に奏効

MDアンダーソンがんセンター

RETがん遺伝子を有する肺がん患者と甲状腺がん患者において有意で持続性のある病勢コントロールを確認

MDアンダーソンニュースリリース

2018年4月15日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の第1相ヒト初回投与試験で、RETという受容体型チロシンキナーゼの変異によって引き起こされるがんの患者にとって効果的で安全な治験薬が初公開された。今回、この薬剤が、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、非小細胞性肺がん、大腸がん、胆管がんなど、従来、治療が困難であるRET由来のがんの治療薬として有望であることがわかった。

経口薬であるBLU-667は多施設共同非盲検試験が行われている。前臨床・早期臨床での評価がCancer Discovery誌4月15日版の電子版に掲載された。当該臨床試験の結果は、4月15日、シカゴで開催された米国がん学会2018年次総会で発表された。

「RET遺伝子変異を有するがんに効果的な薬剤の臨床的ニーズはほとんど満たされていません。RET遺伝子由来のがんに有効で強力な承認済阻害剤がないからです」とInvestigational Cancer Therapeutics助教のVivek Subbiah医師は述べた。「現在、これらのがんの治療は、古典的な化学療法と初期世代の非特異的なキナーゼ阻害剤に限られています。これらの治療法での成功率は限定的で、かつ、患者の生活の質に重大な影響を及ぼす副作用をしばしば認めます」。

Subbiah医師はBLU-667が新規高精度標的薬となりうるか調べ、BLU-667が高選択的RET阻害剤として有望な活性を持ち、病勢をコントロールすることを示した。この薬剤はRET遺伝子が変異したがんを標的としており、がん化していない器官が受ける副作用が少ない。

RETは甲状腺髄様がん全体の半分と関連し、甲状腺乳頭がんの20%、非小細胞肺がんの1~2%とも関連している。Subbiah医師のチームは、手術に適さない進行がんの患者43人を追跡調査した。研究では、甲状腺髄様がん患者26人、非小細胞肺がん患者15人、およびRET遺伝子由来の他のがん種の患者2人についても調査した。

「腫瘍の縮小と持続性のある奏効がほとんどの患者、特に、化学療法とマルチキナーゼ阻害剤の投与ではがんが進行した患者のほとんどで認められました」とSubbiah医師は述べた。「私たちの研究では、RET由来のがんの全奏効率が37%でした。非小細胞肺がんの45%、甲状腺髄様がんの32%に奏効しました」。

BLU-667が試験対象に選ばれた理由としては、試験された他のキナーゼに比べてRETに対する選択性が100倍高かったこと、そして複数のキナーゼ療法への耐性と関連している、いわゆるゲートキーパーと呼ばれる遺伝子変異を阻止するのに有効であることが判明したこと、が挙げられる。

「総じて、今回の研究は、次世代キナーゼ阻害剤を用いた高精度標的療法がRET由来のがん患者に強力な影響を与えることを示しています」とSubbiah医師は語った。「このドライバー遺伝子に合わせた高選択的薬剤を提供することで、キナーゼが引き起こす疾患の治療法に革命を起こした昨今のゲノムプロファイリイングの進歩による利益を、この治療法を受ける患者も享受できるようにしたいのです」。

本研究に関わったMDアンダーソン所属の他の研究者は以下のとおりである。

Mimi Hu, M.D., Endocrine Neoplasia and Hormonal Disorders

他の機関の研究者は以下のとおりである。

Massachusetts General Hospital, Boston; Blueprint Medicines Corp., Cambridge, Mass.; Abramson Cancer Center, University of Pennsylvania, Philadelphia; Chao Family Comprehensive Cancer Center, University of California Irvine Medical Center; The Knight Cancer Institute, Oregon Health & Science University; and Vall d’Hebron Institute of Oncology, Barcelona.

この研究は、BLU-667を開発したBlueprint Medicines Corp.社によって資金提供された。

翻訳担当者 関口 百合

監修 川上 正敬(胸部・頭頸部腫瘍内科/MDアンダーソンがんセンター)

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