FDAがALK陽性非小細胞肺がんにブリガチニブを迅速承認

米国食品医薬品局(FDA)は2017428日、進行した、またはクリゾチニブ抵抗性の転移性未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座(ALK)陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療薬としてbrigatinib[ブリガチニブ](商品名:Alunbrig錠、武田薬品工業株式会社、その完全子会社ARIAD Pharmaceuticals, Inc社)を迅速承認した。

この承認は、クリゾチニブ投与中に進行した局所進行または転移ALK陽性NSCLC患者における、臨床的に意味のある長期的な全奏効率(ORR)を検証する非比較二群、非盲検の多施設共同臨床試験に基づいて行われた(ALTA試験:NCT02094573)。全患者は、FDA承認済みの診断薬または別の診断薬を用いた検査に基づいてALK再配列を有すると報告され、十分量の保存腫瘍組織を用いて、体外診断用医薬品、Vysis® ALK Break-Apart FISH(fluorescence in situ hybridization )プローブキットによってALK配列が確認された。222人の患者を、ブリガチニブ90 mg/日経口投与群(n=112)、または7日間の90 mg/日の導入投与後180 mg/日投与群(n=110)のいずれかにランダムに割付けた。

全奏効率(ORR)の評価は、独立した審査委員会が固形がん効果判定基準(RECIST 1.1)に従って行った。ORRは、90 mg群では48%95% 信頼区間 (CI): 39%, 58%)、180 mg群では53%95% CI: 43%, 62%)であった。中央値8か月間の追跡期間後、奏効期間(DOR)中央値は両群とも13.8か月であった。治療前に測定可能な脳転移がある患者では、頭蓋内ORRは、90 mg群(n=26)では42%95% CI: 23%, 63%)、180 mg群(n=18)では67%95% CI: 41%, 87%)、頭蓋内のDOR中央値は90 mg群では評価不能であったが、180mg群では5.6カ月であった。頭蓋内奏効を示した患者のうち、頭蓋内奏効が4カ月以上持続したのは、90mg群では78%180 mg群では68%であった。

ALTA試験では、1回以上のブリガチニブ投与を受けた219人の安全性を評価した。ブリガチニブ投与を受けた患者の25%以上に生じた最も頻度の高い有害反応は、悪心、下痢、疲労、咳嗽、頭痛で、最も頻度の高い重篤な有害反応は、肺炎および間質性肺炎であった。致死的な有害反応は3.7%に発生し、肺炎(2例)、突然死、呼吸困難、呼吸不全、肺塞栓症、細菌性髄膜炎、尿路性敗血症(各1例)であった。ブリガチニブの投与を受けている患者には、視覚障害も生じた。ブリガチニブ投与中止となった有害反応が生じたのは、90 mg群では2.8%180 mg群では8.2 %だった。

ブリガチニブ投与を受けている患者は、呼吸器症状、高血圧、徐脈、視覚症状、アミラーゼ上昇、リパーゼ上昇、血糖上昇、クレアチニンホスホキナーゼ上昇の新たな出現または悪化について、注意する必要がある。

ブリガチニブの推奨投与計画は、投与開始後7日間は90 mg/日を経口投与し、忍容性が認められたら180mg/日の経口投与に増量することになっている。

添付文書の全文は以下に掲載されている。https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2017/208772lbl.pdf

FDAは承認に先立ち、ブリガチニブを、クリゾチニブ耐性のALK陽性NSCLC患者に対する治療薬として画期的治療薬指定とし、ALK陽性NSCLC治療薬としてオーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品)指定)とした。FDAはこの申請に優先審査を適用した。迅速承認の条件として、武田はAlunbrigの臨床的有益性を検証的試験で確認するよう求められる。FDA迅速承認プログラムの説明は、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品および生物学的製剤」にある。

医療従事者は、いずれかの医薬品および医療機器の使用との関連が疑われる重篤な有害事象をすべて、FDAMedWatch報告システムに報告しなければならない。報告は、http://www.fda.gov/medwatch/report.htmにあるフォームへの入力、上記ホームページにある郵便料金支払い済み宛先フォームのファックス送信(1-800-FDA-0178)もしくは郵送、または電話(1-800-FDA-1088)で行うこと。

翻訳担当者 粟木瑞穂

監修 田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/九州大学病院 呼吸器科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)の画像

世界肺癌学会2024で発表されたMDアンダーソン演題(非小細胞肺がん)

特集:術前・術後の免疫療法、HER2およびEGFR遺伝子変異を標的とした治療など、肺がん治療における有望な臨床的進歩テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは...
肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長の画像

肺がん手術と腫瘍病理診断の質の向上により術後生存期間が延長

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「過去15年間にわたり、ミシシッピ・デルタ中心部における質改善の取り組みは、この高リスク集団の...
RET融合陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブ治療は東アジアの患者に有効の画像

RET融合陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブ治療は東アジアの患者に有効

食道がん、上咽頭がん、肺がんの治療の進歩ーASCOブレークスルー会議新しい治療法が生存とQOLの改善に役立つ食道がん、上咽頭がん、肺がんにおける新たな研究の進展を詳述する3つの...
電子タバコと紙タバコの二重喫煙で、肺がん発症リスクが4倍に増加の画像

電子タバコと紙タバコの二重喫煙で、肺がん発症リスクが4倍に増加

電子タバコと従来の紙巻タバコを併用して喫煙する人は、紙タバコの喫煙のみの人に比べて肺がんを発症する可能性が4倍高かった。この結果はオハイオ州立大学総合がんセンター、アーサーG・ジェーム...