喫煙が外見に及ぼす影響―2016年11-12月号

喫煙が外見に及ぼす影響―2016年11-12月号

MDアンダーソン OncoLog 2016年11-12月号(Volume 61 / Issue 11-12)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

喫煙が外見に及ぼす影響

喫煙は早期老化などの美容上の問題を引き起こす

喫煙が肺がんや、口腔、咽喉、肝臓、腎臓、膵臓、大腸など多くの臓器のがんを引き起こすことを聞いたことがあるだろう。

また、喫煙が心疾患、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の問題、気管支炎や肺気腫といった呼吸障害など健康上の問題を引き起こすことも知っているだろう。だが、喫煙が外見にも影響を及ぼすことは知っていただろうか?

早期老化

喫煙者は若いうちから顔にしわができる可能性が非喫煙者に比べ2~3倍にもなる。喫煙は肌の弾力と潤いを奪い、肌をくすませ、しわや溝をつくる。これは主として喫煙の血管収縮作用や皮膚乾燥作用によるが、喫煙動作それ自体、すなわち目をすがめる動作や口をすぼめる動作も、目や上唇の周りにしわが刻まれる原因と考えられる。喫煙者はタバコを繰り返し口にくわえるため、頬がこけてきて、やつれた顔つきになることもある。

このような喫煙の早期老化作用は、日光曝露より劇的でさえある。喫煙の老化作用は20~30歳の若いうちから目に見えるようになり、40歳になる頃には60歳の非喫煙者と同じだけの多くのしわができてしまうこともある。

口腔衛生不良

喫煙は口腔内に大きなダメージを与える。タバコの煙は口臭や、歯・歯肉の色素沈着の原因になり、特にタバコの煙により歯肉が暗い色になることは「喫煙者のメラノーシス」と呼ばれている。喫煙によるその他の美容上の影響には「喫煙者の舌」があり、舌の上に見られる白色の点や斑を特徴とする。これと似た影響は「喫煙者の口蓋」で、ニコチン口内炎とも呼ばれ、口の屋根(口蓋)に見られる赤色の隆起を伴う灰白色の斑を特徴とする。

タバコの煙は歯肉組織の感染防御能も低下させるため、喫煙者では歯周炎(歯の周りの組織の炎症)のリスクが高まり、歯肉の腫れや歯の喪失につながることがある。喫煙者は非喫煙者より歯周炎を発症しやすいだけでなく、治療の効果が非喫煙者より劣る傾向もある。

また、歯科インプラントによる合併症リスクも喫煙者のほうが高く、喫煙量が多いほど歯科インプラントの失敗リスクが高くなりやすい。

歯科の問題は外見に影響を及ぼすだけでなく、発話や摂食の能力にも影響を及ぼしうる。このような歯科の問題が治療可能な場合でも、喫煙者は歯科受診を何度も余儀なくされることがある。

その他の影響

喫煙は、早期老化や歯科の問題の他にも、外見に影響するいくつかの状態と関連する。

乾癬

喫煙者は乾癬(不快で見た目の悪い鱗状皮疹を特徴とする慢性皮膚病)の発症リスクが非喫煙者の約2倍である。また、喫煙者における乾癬の重症度は非喫煙者より高い傾向がある。

腹部脂肪

タバコの煙に含まれる化学物質の影響により、脂肪が臀部ではなく腹部周囲など上部胴体に蓄積する。その結果、喫煙者の腹部と臀部の周囲長の比(腹囲/臀囲比)は非喫煙者より大きいことが多い。これは、腹周りに贅肉をつけるだけでなく、糖尿病と心疾患のリスクも上昇させる。

にきび

喫煙者は、非喫煙者と比較して、重症度のより高いにきびをより高頻度に発症し、治癒までにより長い期間を要する。

頭髪へのダメージ

タバコの煙は血行低下、また毛包のDNA損傷により頭髪にも影響を及ぼす。その結果、頭髪の色が変わり、薄毛になり、若白髪が生え、冴えない外見になる。

手指の色素沈着

喫煙者はタバコを持つ指や爪が黄色く変色する傾向がある。

多くの喫煙者において、喫煙が外見に及ぼす影響は、禁煙を決心する上で重要な役割を果たす。禁煙を行うことで、がんなどの生命を脅かす病態のリスクを低下させ、外見への蓄積的なダメージを抑止することができる。

—– E. Nielsen

For more information, talk to your physician or call askMDAnderson at 877-632-6789. MD Anderson’s Tobacco Treatment Program can be reached at 713-792-QUIT or 866-245-0862. You can also visit www.mdanderson.org or www.cancer.org/healthy/stayawayfromtobacco.

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

翻訳担当者 永瀬祐子

監修 前田 梓(医学生物物理学/トロント大学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

米FDAが非扁平上皮非小細胞肺がんにセバベルチニブを迅速承認の画像

米FDAが非扁平上皮非小細胞肺がんにセバベルチニブを迅速承認

2025年11月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法歴のある局所進行または転移性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者のうち、FDA承認済み検査でHER2(ERBB...
手術可能な中皮腫に術前・術後ニボ+イピの安全性、有効性を初めて示した臨床試験の画像

手術可能な中皮腫に術前・術後ニボ+イピの安全性、有効性を初めて示した臨床試験

ジョンズ・ホプキンスのキンメルがんセンターとブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所の研究者らが主導した新たな研究によると、手術前後の併用免疫療法薬を用いた新たな治療法が、手術可能な...
EGFR変異非小細胞肺がんで、オシメルチニブと化学療法の併用が全生存期間を延長の画像

EGFR変異非小細胞肺がんで、オシメルチニブと化学療法の併用が全生存期間を延長

標準の一次治療であるEGFR-TKI療法に化学療法の追加で有益性を確認: ダナファーバーが共同で主導した第3相FLAURA2試験の最終解析

EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCL...
肺がんの新たな局面:喫煙歴のない若年女性の画像

肺がんの新たな局面:喫煙歴のない若年女性

主なポイント:肺がんは若い女性や非喫煙者においてますます多く診断されるようになっている。新規肺がん診断のほぼ20%を非喫煙者が占めている。住宅内のラドン濃度を測定することは、肺...