少数転移の非小細胞肺がんに対する局所地固め治療

MDアンダーソン OncoLog 2016年7月号(Volume 61 / Issue7)

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少数転移の非小細胞肺がんに対する局所地固め治療

3カ所以下の少数転移(oligometastatic disease)を伴う非小細胞肺がん患者を対象とした第II相臨床試験の結果、導入化学療法後、手術、放射線、または双方による積極的治療を行った群が、標準治療群に比べ、無増悪生存期間が延長した。

試験に登録された全患者は導入化学療法を実施後、標準治療あるいは局所地固め治療にランダム化された。標準治療は担当医が決定し、経過観察のみ、あるいは手術や放射線治療以外の全身維持療法が実施された。局所地固め治療は、腫瘍内科医、腫瘍外科医、放射線腫瘍科医で構成される総合医療チームが決定し、手術のみ、放射線のみ、あるいは双方が行われた。

局所地固め的治療群では、手術は原発巣および1カ所以上の転移巣の両方、またはいずれかに対して行われた。放射線治療は、3D原体照射法、強度変調放射線、定位放射線、陽子線治療が実施された。

「本研究は、現在すでに一般診療で患者に行われている治療の幅を広げられるよう、実用性を期待して行いました」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍学准教授であるDaniel Gomez医師は述べた。Gomez医師は、多施設研究の統括責任者を務めた。

過去の研究で非小細胞がんに対する局所地固め治療の良好な成績は示されていたものの、それらの研究では、低リスク患者が入念に選択されていました。「われわれの研究は、少数転移肺がん患者に対する積極的治療の効果を標準治療(通常維持療法か経過観察)と比較した、初のランダム化前向き試験です」とGomez医師は述べた。

今回実施された前向き第II相試験は、患者94人として計画されたが、局所地固め治療を受けた患者で有益性がみられたため、49人の時点で登録終了となった。追跡期間中央値18.7カ月の時点で、局所地固め治療を受けた患者の無増悪生存期間は11.9カ月、標準治療では3.9カ月だった。腫瘍増大後、標準治療群の大半は局所地固め治療へ変更された。

6月に開催された米国臨床腫瘍学会で試験結果を発表したGomez医師は、「今回の知見は、積極的な局所治療のエビデンスと熱意をもたらします。妥当性が検証されれば、数万人もの肺がん患者に根治的治療の道が拓ける可能性があります」と述べた。本試験の患者の全生存とQOL(生活の質)は今後検討される。今後の試験が計画されている。

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翻訳担当者 佐々木亜衣子

監修 久保田 馨(呼吸器内科/日本医科大学付属病院

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