FDAがROS-1陽性進行肺がんにクリゾチニブの適応を拡大
速報
米国食品医薬品局(FDA)は3月11日、ROS-1遺伝子異常を有する進行(転移性)非小細胞肺がん(NSCLC)の治療にクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)を承認した。クリゾチニブは、ROS-1陽性NSCLC患者に対してFDAに承認された初となる唯一の治療薬である。
肺がんは米国のがんによる死亡の最大の原因であり、米国国立がん研究所(NCI)によると2015年には221,200人が新たに肺がんと診断され、158,040人が死亡したと推定されている。ROS-1遺伝子異常は細胞異常を引き起こすと考えられており、非小細胞肺がんを含む様々ながんで見つかっている。非小細胞肺がんでは患者の約1%にROS-1遺伝子異常が認められている。ROS-1遺伝子異常を有する非小細胞肺がんの患者および疾患の全般的な特徴は、クリゾチニブの使用が既に承認されている未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子異常陽性の非小細胞肺がんに似ているようである。クリゾチニブは、異常ALK遺伝子陽性の進行期の非小細胞肺がん患者治療において2011年に承認されている。
「肺がんは治療が困難です。その1つの要因として、患者がさまざまな変異を有していることが挙げられ、中にはまれな変異もあります」と、FDA医薬品評価研究センター、血液および腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は述べている。「クリゾチニブの適応拡大により、医療従事者はROS-1陽性非小細胞肺がんに的を絞ったより個別化された治療を行うことができるようになり、まれで治療が難しいROS-1遺伝子変異陽性の患者に対して貴重な治療選択肢を提供することが可能になるでしょう」。
クリゾチニブは、ROS-1遺伝子異常を有する腫瘍におけるROS-1タンパクの働きを阻害する経口薬剤である。このROS-1への作用により、非小細胞肺がんの増殖や進行を防ぐ。
クリゾチニブをROS-1陽性のがん患者の治療に用いたときの安全性および有効性は、ROS-1陽性の転移性非小細胞肺がん患者50人を対象とした多施設共同の単群試験で評価された。患者にクリゾチニブを1日2回投与して肺がんに対する薬剤の効果を測定した。本試験は奏効率、つまり腫瘍が完全にまたは部分的に縮小した患者の割合、を評価するようデザインされた。試験の結果、患者の66%で非小細胞肺がんの腫瘍の完全または部分的縮小が得られ、効果持続期間の中央値は18.3カ月であった。
安全性に関する本試験の結果は、ALK陽性の転移性非小細胞肺がん患者1,669人において評価されたクリゾチニブの安全性プロファイルと概ね一致していた。
クリゾチニブの副作用でよくみられたものは、視覚障害、悪心、下痢、嘔吐、腫脹(浮腫)、便秘、肝障害(トランスアミナーゼ上昇)、疲労、食欲低下、上気道感染および浮動性めまい、そして手足の無感覚やうずき(ニューロパチー)であった。クリゾチニブにより、肝障害、生命を脅かすか死亡に至る肺の炎症、心拍異常、片眼あるいは両眼の部分的または完全な視力喪失などの重篤な副作用が発現する可能性もある。
クリゾチニブの適応拡大申請は、FDAにより画期的治療薬の指定および迅速審査の適用を受けた。これらの制度は、重篤または生命を脅かす疾患を有する患者にもたらされ得る医薬品のベネフィットを踏まえて、開発および審査の促進を意図した差別化プログラムである。クリゾチニブは、希少疾病用医薬品の指定も受けた。これは希少疾患を対象とした医薬品開発を補助、奨励する目的で、税控除、ユーザーフィー(訳者注:新薬審査に必要であるとして当の製薬企業に拠出が求められる財源)の免除や独占販売権などの奨励が受けられる制度である。
クリゾチニブは、ニューヨーク州ニューヨークを拠点とするファイザー社が製造販売している。
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