HER2遺伝子変異を有する肺腺がん

化学療法およびHER2標的薬投与患者で構成された欧州試験EUHER 2コホートからの結果

議題:オーダーメイド医療/肺腫瘍および他の胸部腫瘍/抗がん剤および生物学的療法

HER2遺伝子変異は、肺がんのドライバー遺伝子として特定されており、肺腺がんの1~2%でみられる。しかし、これらの患者に対する標準治療は存在しない。EUHER2試験の後ろ向きコホートにおける一連の研究は、HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の化学的感受性およびHER2標的薬の潜在的な利益を示した。この結果は、2015年11月23日付のAnnals of Oncology誌で発表された。

本試験の背景として、著者らはチロシンキナーゼ阻害剤がEGFR遺伝子変異またはALK遺伝子転座を有する進行性NSCLCに対する治療が承認されていたと説明した。NSCLCにおいて、MET遺伝子増幅およびFGFR1遺伝子増幅、PIK3CA、AKT、KRAS、NRAS、BRAF、およびHER2各遺伝子の変異、ならびにRET遺伝子再構成およびROS1遺伝子再構成など、他のドライバー遺伝子も知られている。これらの遺伝子変化を標的とする薬剤は、目下臨床試験で研究中である。

HER2遺伝子変異は、肺腺がんの1~2%でみられる。この患者集団において報告されてきたいくつかの症例報告およびごくわずかな臨床試験は全て、アファチニブ、ダコミチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブなどの抗HER2薬は、腫瘍反応と関連しうることを報告している。

French National Programmeまたは米国肺がん遺伝子変異コンソーシアムなどの大規模なバイオマーカースクリーニングプログラムは、HER2遺伝子変異の体系的な検査を提案している。そのため、EUHER2試験の著者らは、今までで最大の集団(治療を受けた患者101人)を解析することによって、患者の管理、特に従来の化学療法およびHER2標的薬への反応を理解するうえでのさらなる手がかりとなる本試験を開始することを目的としていた。彼らは、得られた知見がこの集団の将来的な臨床試験へと導く一助となる可能性があると予測していた。

本試験はフランス、スイス、スペイン、イタリア、ポーランド、ポルトガルおよびオランダの38施設で実施された。適格患者は、エクソン20のHER2遺伝子変異/挿入を有する進行性NSCLCであり、1回以上の全身的抗がん治療ラインを受けており、腫瘍の文書化された評価(2、3カ月ごとのCTスキャン)などの適切な経過観察を受けていたことであった。

臨床上および病理学的データは、治療している医師により各患者から収集された。データは各地域の施設で匿名化された後、フランスのトゥールーズにあるコーディネーティングセンターで臨床試験コーディネーターにより収集され一元化された。

組織構造は、各地域の習熟した病理学者らにより、WHO基準および最新の国際肺がん学会の分類を用いて評価された。

臨床病理学的病期は、TNM(Tumour-Node Metastasis)分類第7版より病変ごとに割り当てられた。

治療効果は、治療開始時からの最縮小効果から増悪まで、固形がんの効果判定規準(RECIST)第1.1版により定義された。

年齢の中央値は61歳(範囲:30~87歳)で、患者の62.4%が女性であり、60.4%は喫煙歴がなかった。腫瘍はすべて腺がんであった。

EGFR遺伝子変異を伴う患者5人、ALK遺伝子転座を併発した患者1人、およびROS遺伝子転座を併発した患者1人が、それぞれ認められた。

治療ライン数の中央値は、3であった(範囲:1~11)。

全生存期間の中央値は24カ月であった。従来の化学療法(分子標的治療を除く)による全奏効率および無増悪期間中央値(PFS)は、一次治療でそれぞれ43.5%、6カ月で、二次治療でそれぞれ10%、4.3カ月であった。

65人の患者が1回以上HER2標的薬の投与を受け、うち47人の患者が1回、14人が2回、4人が2回を超える抗HER2薬の投与を受けた。全体的に、トラスツズマブ(57人)、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)(1人)、ネラチニブ(14人)、アファチニブ(11人)およびラパチニブ(5人)など、88人の患者にHER2遺伝子に対する標的治療薬が投与され、評価された。

化学療法を併用したトラスツズマブでは、奏効率(RR)が50%、病勢コントロール率(DCR)が75%、およびPFSが5.1カ月であった。ビノレルビン(24人)、ドセタキセル(12人)、パクリタキセル(12人)、シスプラチン(7人)などの化学療法に対し、患者2人はトラスツズマブ単剤を投与された。

アファチニブでは、RRが18.2%、DCRが63.7%、およびPFSが3.9カ月であった。

ネラチニブを投与された患者は、臨床試験(PUMA-NER)に組み入れられた。暫定的な結果が報告され、最終結果が待ち望まれている。

ラパチニブは、患者5人に対しては三次治療または四次治療で投与され、最初の効果が評価された時、5人全員が増悪していた。

患者1人が、T-DM1に対し迅速な効果を示した。

トラスツズマブをベースとした治療とT-DM1の結果を合わせると、RRが50.9%、PFSが4.8カ月であることがわかった。

参考文献:
J. Mazieres, F. Barlesi, T. Filleron, et al. Lung cancer patients with HER2 mutations treated with chemotherapy and HER2-targeted drugs: Results from the European EUHER2 cohort. Ann Oncol 2015; First published online November 23. doi: 10.1093/annonc/mdv573

翻訳担当者 太田 奈津美

監修 小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性の画像

【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性

ASCOの見解(引用)「LAURA試験は、切除不能なステージIII疾患におけるEGFR標的療法の役割を明確にした最初の試験である。本試験ではオシメルチニブと現在の標準治療である...
周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善の画像

周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善

周術期におけるニボルマブ+化学療法併用により、化学療法単独と比較して疾患の再発、進行、または死亡の確率が有意に低下することが第3相試験で明らかに

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター...
FDAが肺がんの補助療法としてアレクチニブを承認の画像

FDAが肺がんの補助療法としてアレクチニブを承認

外科的切除が可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一部は、標的治療薬アレクチニブ(販売名:アレセンサ)による術後療法を受けるべきであることが、大規模臨床試験の結果から示唆された。

AL...
グレシラシブがKRAS G12C変異陽性進行肺がんの治療に有望の画像

グレシラシブがKRAS G12C変異陽性進行肺がんの治療に有望

ASCO専門家の見解
「今回の発表で、KRAS G12Cを阻害する複数の薬剤は、同程度に有効であるというデータを得ることができました。中国以外の国での臨床現場を変えるには、 この薬剤が、...