FDAが転移性非小細胞肺がんの治療薬としてゲフィチニブを承認

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米国食品医薬品局(FDA)は、その認可検査で腫瘍の上皮成長因子受容体(EGFR)のエクソン19欠失あるいはエクソン21置換による変異(L858R)が同定された転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療薬として、ゲフィチニブ(イレッサ)を承認した。該当する患者を同定するためのコンパニオン診断検査薬therascreen EGFR RGQ PCR Kitの適応追加申請も、ゲフィチニブと同時に承認される予定である。

ゲフィチニブの承認は、多施設、単一群、非盲検で実施した臨床試験の結果に基づいており、本試験では、治療歴がないEGFR遺伝子変異陽性の転移性非小細胞肺がん患者106人が、疾患の進行まで、あるいは忍容できない毒性の発現まで毎日ゲフィチニブ250mgの投与を受けた。主な有効性評価項目は、RECISTガイドライン(固形がんの治療判定のための新ガイドライン)改訂版1.1に従った奏効率であり、有効性評価項目の評価は、匿名の独立第三者評価機関(BICR)および治験責任医師が実施した。BICRによる評価の奏効率は50% (95%信頼区間:41%~59%)、奏効期間中央値は6.0カ月であった。試験責任医師による評価の奏効率は70%(95%信頼区間: 61%~78%)、奏効期間中央値は8.3カ月であった。

本臨床試験の有効性に関する結果は、一次治療を受ける、組織型が腺がんの転移性非小細胞肺がん患者を対象として多施設で実施したランダム化非盲検臨床試験の部分集団予備解析により裏づけられた。この臨床試験で患者は、ゲフィチニブ250mg1日1回投与あるいは、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法最高6サイクル実施のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けられた。BICRが評価した有効性評価項目は、無増悪生存期間および奏効率などである。予備解析に用いた部分集団を構成するのは、患者1,217人のうち、EGFR遺伝子変異陽性と同定され、BICRが後方視的評価で利用可能なX線CT画像がある186人(15%)であり、その内訳は、ゲフィチニブ投与群の患者88人、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法群の患者98人であった。BICRの評価によると、ゲフィチニブ投与群の無増悪生存期間のハザード比は0.54(95%信頼区間: 0.38~0.79)、無増悪生存期間中央値は10.9カ月であった。カルボプラチン+パクリタキセル併用療法群の無増悪生存期間中央値は7.4カ月であった。また、BICR評価によるゲフィチニブ投与群の奏効率は67%(95%信頼区間: 56%~77%)、奏効期間中央値は9.6カ月であり、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法群の奏効率は41%(95%信頼区間:31%~51%)、奏効期間中央値は5.5カ月であった。

1,692人の患者を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、患者に多く認められた副作用について安全性データを評価した。これら試験のゲフィチニブ投与群の患者1,129人において最も多く(20%以上)認められた副作用は頻度の高い順に、皮膚反応、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)上昇、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)上昇、タンパク尿、下痢であった。最も多く(2%以上)認められたグレード3~4の副作用は頻度の高い順に、タンパク尿、下痢、ALT上昇、食欲不振、AST上昇、皮膚反応であった。ゲフィチニブ投与群の約5%が、副作用が原因で投与を中断した。

ゲフィチニブのまれな重い副作用に関して、ゲフィチニブ単剤療法を受けた非小細胞肺がん患者2,462人を対象として、3つのランダム化臨床試験により評価した。重大な副作用は、間質性肺炎(1.3%の患者に発現)、致死的肝毒性(0.04%の患者に発現)およびグレード3の眼疾患(0.1%の患者に発現)であった。

ゲフィチニブの推奨用量は、1日1回食後または空腹時の250mg経口投与である。ゲフィチニブの投与は疾患の進行、あるいは忍容できない毒性の発現まで続けることとする。

出典:FDAニュースリリース

参考文献:
Douillard JY et al. First-line gefitinib in Caucasian EGFR mutation-positive NSCLC patients: a phase-IV, open-label, single-arm study. Br J Cancer 2014 Jan 7; 110, 55-62. doi: 10.1038/bjc.2013.721.


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翻訳担当者 清水裕美子

監修 吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

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