FDAが肺がんの補助療法としてアレクチニブを承認

外科的切除が可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一部は、標的治療薬アレクチニブ(販売名:アレセンサ)による術後療法を受けるべきであることが、大規模臨床試験の結果から示唆された。

ALINA試験参加者の腫瘍にはALK遺伝子異常があった(ALK陽性肺がん)。手術後にアレクチニブを投与された患者は、現在の標準治療である術後化学療法を受けた患者よりも、がんが再発することなく生存した期間が長かった。

4月10日付けNew England Journal of Medicine誌に発表された結果によると、手術後にアレクチニブ投与(補助療法)を受けた人の約94%が2年後にがんが再発することなく生存していたのに対し、補助化学療法を受けた人での割合は約64%であった。

さらに、アレクチニブを投与された人においては化学療法を受けた人に比べ、がんが脳へ転移する人がはるかに少なかった。

4月18日、ALINA試験の結果に基づき、FDA(米国食品医薬品局)はALK陽性NSCLC患者に対する補助療法としてアレクチニブを承認した。

アレクチニブによる治療期間は化学療法による治療期間よりはるかに長かったが、アレクチニブ群では重篤な副作用はわずかに多かっただけであった。

アレクチニブを投与された参加者が化学療法を受けた参加者よりも全生存期間が長いかどうかを確認するために、試験参加者の追跡調査を現在も継続している。結果公表時点で死亡していた人は、アレクチニブ治療を受けた130人中2人のみ、化学療法を受けた127人中5人であった。

全生存に関するこれらの差はわずかなものであるが、ALINA試験においてアレクチニブで確認された再発の大幅な減少はとても期待できるものです、と本試験の責任者であるBenjamin Solomon医師(オーストラリア、メルボルン、Peter MacCallum Cancer Centre)は述べた。

「治癒という言葉を使うことには慎重です。しかし、肺がんが再発した場合、治癒することはありません。治癒への第一歩は再発を遅らせるか防ぐことです。そして、がんの再発を防ぐことは、患者にとって本当に意味のあることです」とSolomon医師は言う。

肺がんの再発と転移の予防

ALK陽性NSCLC患者は、ALK陰性NSCLCと診断された患者に比べると、若年で喫煙経験がない傾向がある。全体として、非小細胞肺がんのうちALK陽性は4%から5%程度である。

「しかし、肺がんは世界中で最も多いがんであり、がん死亡の最も多い原因です」とSolomon医師は言う。「ですから、肺がんの中では少数派であっても、相当な人数ということになります」。

アレクチニブは、ALK遺伝子に再構成と呼ばれる特定の変化を有するがん細胞を標的とする。この薬剤は、ALK陽性の転移性NSCLC患者の生存期間を延長することが示されており、ALK陽性肺がん患者の治療の主力となっている。この治療法はまた、肺がん患者によくみられる脳へのがん転移のリスクを低くする。

「脳転移は患者に多大な影響を与えることがあります。運転ができなくなります。仕事や家族の世話ができなくなるかもしれません」とSolomon医師は話す。「ですから、がんが脳に再発するのを防ぐこともとりわけ重要なのです」。

アレクチニブが、より進行したALK陽性NSCLC患者において有益な効果を示したことから、より早期の患者においても同様の改善がみられるかどうかを調べるためにALINA試験が開始された。

アレクチニブにより、がんが脳に転移する可能性は低くなる

アレクチニブの製造元であるF. Hoffmann-La Roche/Genentech社が資金提供したALINA試験の参加者は全員、外科的に切除可能なALK陽性肺腫瘍で、体内の他のどこにも広がっていなかった。

試験に参加した257人のうち、130人がアレクチニブ(錠剤)を1日2回、最長2年間毎日服用する群に無作為に割り付けられた。残りの127人は、標準的な化学療法レジメンの1種類を3週間4サイクルで静脈内投与された。

試験参加者を中央値で2年強追跡した結果、疾患が再発した、あるいは死亡した人は全体で65人であり、内訳は アレクチニブ群15人、化学療法群50人であった。

試験参加者のうち、より進行しているが外科切除可能であった患者231人の解析においては、
アレクチニブ群のほぼ94%が再発を認めずに生存していたのに対し、化学療法群では63%であった。

試験中に再発してしまったがんの転移部位で最も多かったのは脳であった。

しかし、試験中に脳転移が認められたのは、化学療法群では14人であったのに対し、アレクチニブ群ではわずか4人であった。

アレクチニブによる最も多い副作用は、便秘と、腎障害の初期徴候である血中バイオマーカーの変化であった。化学療法群では吐き気と食欲低下が最も多かった。副作用のため早期に治療を中止した患者は、アレクチニブ群では約5%、化学療法群では約12%であった。

肺腫瘍に関する遺伝子情報の必要性の高まり

最適な治療期間を含め、術後の最適なアレクチニブ投与方法にはまだ課題が多いとSolomon医師は言う。「薬剤を長く投与するほど、がん再発が少なくなるかどうかはわかりません」と説明した。

Solomon医師は、いくつかの異なる要因に基づき、がんの再発リスクが特に高い人々を、より長期間の治療についてさらに研究するべきグループとして挙げた。手術後に化学療法や他の薬剤とアレクチニブを併用する研究も、再発リスクの高い人々にとって重要であるとSolomon医師は説明した。

血液を分析してがん再発リスクが高いかどうかを調べるリキッドバイオプシー検査によって、より集学的な補助療法が必要な患者を特定できる日が来るかもしれない、と同医師は付け加えた。

手術で取り除いた後であるか転移しているがんを治療する場合のいずれにしても、アレクチニブを投与する前に、肺がん患者はFDAが承認した検査を受けて腫瘍のALK状態を確認する必要がある。

肺がんでは特定の遺伝子変化を標的とする薬剤が非常に多いことから、腫瘍医は早期がん患者を含むすべての患者において腫瘍の遺伝子異常等を確実に検査することの重要性が浮き彫りになるとChen Zhao医師(NCIがん研究センター)は説明した。同医師は今回の研究には関与していない。

そうした検査は転移性肺がんの患者には現在標準的に行われているが、外科的に切除可能な腫瘍の患者の場合には必ずしも行われているわけではないとZhao医師は述べた。

補助療法として標的療法を試験する臨床試験は数多く行われており、腫瘍の遺伝子検査は、承認済みおよび試験中の標的療法や免疫療法に関する臨床試験を患者が見つけるのにも役立つとZhao医師は付け加えた。

「手術で摘出可能な肺腫瘍の患者は、是非とも遺伝子検査を実施するように自分で主張する必要があるかもしれません」と彼は述べた。

  • 監訳 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/05/08

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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