EGFR変異肺がんへの初回化学療法併用が無増悪生存期間を延長

ダナファーバーがん研究所

上皮成長因子受容体(EGFR)変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に標準療法と化学療法とを併用した場合、標準療法単独と比較して無増悪生存期間が中央値で約9カ月延長したことが、ダナファーバーがん研究所とフランスのグスタフルーシー研究所(Institut Gustav Roussy)主導の第3相国際臨床試験FLAURA2において明らかになった。

「われわれは、非小細胞肺がんに対してより効果的な治療を開発したいと考えています」と、共同研究者でダナファーバーLowe Center for Thoracic Oncology所長であるPasi A. Jänne医学博士は言う。「その方法のひとつは、初期治療を強化することです」。

Jänne氏は、9月11日にシンガポールで開催された世界肺癌学会(IASLC)の世界肺癌会議においてこの研究を発表した。

米国では約10~15%、アジアでは50%の非小細胞肺がん患者が腫瘍にEGFR変異を有している。この変異はがんの増殖を促進する。

これらの患者は、発がん性変異を正確に標的としてブロックする第三世代のEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)オシメルチニブ(販売名:​​タグリッソ)による標準治療を受ける。オシメルチニブは前世代のEGFR-TKIよりも有効であることが示されている。

しかし、それでも患者はこの薬剤に耐性を獲得して再発することがある。耐性に対処するひとつの方法は、耐性が生じるまで待った上で、再発時に化学療法を追加し治療することである。

「この試験では、補完的な方法をとり、化学療法を前もって追加して、耐性を防げるかどうかを検討しました」とJänne氏は言う。

以前の研究で前世代のEGFR-TKI+化学療法による有効性が示されていたので、初回治療を強化する戦略を試す価値があるとみられた。

本試験では、オシメルチニブ+化学療法併用の安全性を最初に検証した後、557人のEGFR変異を有する進行非小細胞肺がん患者を、オシメルチニブ単独群、またはオシメルチニブ+ペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチンを併用した化学療法併用群にランダムに割り付けた。併用療法群にランダムに割り付けられた患者は、3カ月間にわたり4回の化学療法を受け、その後オシメルチニブ+ペメトレキセドの投与を継続した。

併用療法群の無増悪生存期間中央値は25.5カ月であったのに対し、オシメルチニブ単独療法群では16.7カ月であった。併用療法を受けた患者は、化学療法追加に伴う有害事象がより多くみとめられた。

「無増悪生存期間は有意に改善しました」Jänne氏は言う。「それが全生存期間の延長につながるかどうかは分かりませんが、オシメルチニブ+化学療法は本試験の全患者に有効でした」。

本研究は継続中である。研究者らは、強化した治療により全生存期間が改善するかどうかを判断するため、患者の観察を続ける予定である。また、収集したデータ、血液サンプル、腫瘍生検を分析し、併用療法が奏効しやすい患者の特性があるかどうかを調べる予定である。

「すでにオシメルチニブ単独療法で長期間良好に経過している患者もいます」とJänne氏は言う。「どのような患者に化学療法を追加する必要があるか分かれば、それを患者に伝え、リスクと利点を話し合うことができます 」。

資金提供:本研究はアストラゼネカ社から資金提供を受けた。

  • 監訳 稲尾 崇(呼吸器内科/神鋼記念病院)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日  2023/09/11

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