肺癌薬と治療のマウス試験-IKK-α

 NCIニュースノート

米国国立癌研究所(NCI)の研究者らは、遺伝子操作マウスを利用してヒト肺扁平上皮癌(SCC)の研究を行ってきた。SCCは、肺癌の中で最も多い非小細胞肺癌の一種で、5年生存率は約15%である。基礎実験結果に基づいて創薬を行う際には、多くの場合に次のステップとしてマウスモデルが用いられる。このようにマウスモデルは創薬の重要な過程であるため、彼らはマウスモデルを利用して研究を行った。NCI癌研究センターの実験免疫学研究室(Laboratory of Experimental Immunology)のYinling Hu博士が率いたこの研究の結果は、2013年4月15日付けのCancer Cell誌に掲載された。

この研究において研究者たちは、細胞の増殖・生存・免疫の制御に関与する酵素の一種であるIKK-alpha (IKK-α)のような分子標的を見出すために、さまざまなマウスモデルを作成した。10年以上にわたってHu博士の研究室では、IKK-αの欠損・変異・過剰発現といった様々な遺伝子操作をマウスに加えることによって、ケラチノサイト(皮膚でSCCの発生の元になる細胞)の細胞発達においてIKK-αが果たす機能に焦点を絞って研究を行ってきた。この研究でHu博士のグループは、肺SCCの周囲の微小環境および腫瘍細胞そのものの両者における、ヒトとマウスのSCCの類似性を検討した。肺SCC自身のレベルおよび肺の腫瘍微小環境内でのヒトとマウスの肺SCCの共通点を探求した。その結果、彼らは、IKK-αの減少は、癌を誘発するタンパクを増加させ、肺SCCでの癌抑制タンパクを減少させることを示した。さらに、IKK-αが減少したマウスでは肺における炎症細胞が増加し、これが肺SCCの発生と進展の原因となってことも示した。

翻訳担当者 岩崎多歌子

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)

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