アジア人女性の肺癌リスクを高める遺伝子変異を同定
2012年11月13日
NCIプレスリリース
国際的な研究者グループが、非喫煙アジア人女性が肺癌に罹患しやすくなる3つの遺伝子領域を同定した。この発見により、非喫煙者、特にアジア人女性の非喫煙者の肺癌リスクが、ある特有の先天的な遺伝的特徴と何らかの関連があり、それは喫煙者の肺癌と区別されるというさらなる証拠が得られた。
非喫煙者の肺癌は世界で癌死の原因の第7位であり、東アジアの女性でこれまで肺癌と診断された患者の大半はタバコを吸わない女性である。本試験で発見された特異的な遺伝子変異は、これまで他の集団では肺癌リスクとの関連がみられていなかった変異である。
間接喫煙(環境タバコ煙としても知られる)や屋内調理の排気などの環境因子が、非喫煙アジア人女性の肺癌の原因となることもあり得るが、それは原因の一端を明らかにするに過ぎない。アジア人女性で非喫煙者の肺癌についての理解を深めるため、米国国立衛生研究所(NIH)の傘下である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らが、Female Lung Cancer Consortium in Asiaを設立し、非喫煙女性を対象とする過去最大規模の全ゲノム関連研究(GWAS)を実施するため数ヵ国の研究者と提携した。GWASは、ある疾患またはその特性のある人とない人との間でゲノム全体のDNAマーカーを比較する研究である。
「本研究は世界で非喫煙女性の肺癌を対象とした初めての大規模な全ゲノム関連研究である」とNCIの癌疫学および遺伝学部門の主任研究員であり、本試験のリーダーであるQing Lan医学博士は述べた。
このConsortiumでは計約14,000人のアジア人女性 (肺癌患者6,600人および非肺癌患者7,500人)を対象とした14の試験のデータをまとめるGWASを実施し、その結果は2012年11月11日付オンライン版Nature Genetics誌で報告された。この研究では間接喫煙暴露をはじめとする環境因子のデータも対象とした。
このConsortiumにより、ゲノムの3ヵ所(6番染色体上で2ヵ所、10番染色体上で1ヵ所)でみられた変異が、非喫煙アジア人女性の肺癌と何らかの関連があることが明らかになった。特に10番染色体上での発見は、これまで白人またはアジア人集団の肺癌を対象とした他のGWASではみられなかったため、特に重要であった。
「我々が実施した研究により、よくみられる先天性の遺伝子変異が非喫煙アジア人女性の肺癌リスク増加に寄与しているという有力なエビデンスが得られた」と、NCIの癌疫学および遺伝学部門の主任研究員であり、本試験の共著者であるNathaniel Rothman医師は述べた。同医師はまた、「このような変異は環境タバコ煙などの環境因子による肺癌リスクも増加させる可能性がある」とも述べた。
研究者らは、喫煙者の肺癌を対象にこれまで実施された多くのGWASにおいて肺癌リスクと何らかの関連がみられた15番染色体上のある位置での変異との関連は検出しなかった。今回この関連がみられなかったことにより、15番染色体上の遺伝子変異には喫煙が関連している可能性があるとする考えがさらに裏付けられる。
研究者らは、新たに同定された遺伝子変異のうちの1つを持つアジア人女性では、環境タバコ煙の影響をさらに受けやすくなる可能性があるというエビデンスをいくつか発見した。しかし、この結果から確定的結論を得るには調査がさらに必要であると著者らは注記している。
「本研究は、特有の特性がある、または環境曝露を受けている集団の先天的な遺伝リスクを全ゲノム関連感受性研究がどのようにすれば評価できるのかを示す一例である」と、NCIのCenter for Cancer Genomicsの臨時共同ディレクターであり、本試験の共著者でもあるNCIのStephen J. Chanock医師は述べた。同医師はまた、「先天的な遺伝因子が環境曝露からのリスクをどのように変化させるのかについてさらに理解を深めるため、我々はこの評価方法を改善、洗練して適用するべく開発を続け、環境因子に関する詳細な情報を得ている集団に適用する」とも述べた。
この研究は部内プロジェクト番号ZIACP010121としてNCIの癌疫学および遺伝学部門の援助を受けている。
(写真キャプション)肺の左側に肺癌の可能性がある増殖がみられる胸部X線写真
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小高良子 訳
大淵俊朗 (呼吸器外科/福岡大学医学部)監修
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原文
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