肺癌治療に遺伝子発現を正常化する薬剤entinostatが有望

キャンサーコンサルタンツ

薬剤ビダーザ(アザシチジン)および治験薬剤entinostat(エンチノスタット)の2剤併用は、進行性で、治療歴がある非小細胞肺癌患者の一部の治療に有望である。この結果はCancer Discovery誌で発表された。

合衆国の癌死の主要な要因は、肺癌である。非小細胞肺癌NSCLCは、肺癌全体の約85%を占めている。

非小細胞肺癌の治療には、手術療法、化学療法、標的療法、放射線療法、またはこれら療法の併用がある。以前に何種類かの治療を受けたにもかかわらず、癌が増悪している患者にとって治療選択肢は限定される。

癌の理解および治療における1つの有望な研究分野に、エピジェネティックス(後生遺伝学)がある。エピジェネティックスとは、細胞の中で何らかの影響により、複数の因子が遺伝子スイッチを入れたり切ったりすることをいう。癌細胞には、制御不能の細胞増殖の原因となる後生遺伝学的変化があり、この変化を標的とする薬剤により、癌増殖が遅延するか停止することがある。

ビダーザおよびentinostat(エンチノスタット)は、あるエピジェネティックな異常増殖を標的とする薬剤である。転移性非小細胞肺癌の治療歴のある患者に対し、この2剤併用の効果を評価するため、45人の患者に対し、第1相/第2相臨床試験が実施された。参加者全員にビダーザおよびentinostat(エンチノスタット)が投与された。

  • 参加者45人中、1人は完全奏効(検出可能な癌腫の消滅)を示し、もう1人は、部分的奏効を示した。さらに10人の患者には、癌が進行しない状態が少なくとも12週間継続した。
  • 少数の患者のみが治療に奏効したが、その反応は顕著であった。現在、どのような患者がこの種類の治療に奏効する可能性があるか把握しようと試みている。
  • 19人の患者がビダーザおよびentinostat(エンチノスタット)の2剤併用後に追加の抗癌治療(化学療法か標的免疫療法の一方)を受け、そのうち4人が、この追加治療に良好な反応を示した。

 本試験は、非小細胞肺癌の特定の患者にとっては、エピジェネティック治療の併用が有効であること示唆している。この試験はすでに複数の治療を受けた患者に焦点を合わせたが、当該薬剤は、非小細胞肺癌治療のより早期の段階で投与された場合にも効果的であると立証される可能性があり、研究者はこれについても探求しようとしている。

参考文献:Juergens RA, Wrangle J, Vendetti FP et al. Combination epigenetic therapy has efficacy in patients with refractory advanced non-small cell lung cancer. Cancer Discovery. 2011;1:598-607.

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翻訳担当者 佐藤茂男

監修 大渕俊朗 (呼吸器外科/福岡大学医学部)

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