イレッサ(ゲフィチニブ)が不応性非小細胞肺がんの一部の患者に生存の有利性

イレッサ(ゲフィチニブ)が不応性非小細胞肺がんの一部の患者に生存の有利性

キャンサーコンサルタンツ
2005年7月

肺癌におけるイレッサの生存評価第Ⅲ相試験(ISEL)に関する以下のような最新の結果が示された。イレッサ(gefitinib)はアジア人と喫煙未経験者で有意な生存率の改善に関与するが、グループ全体の生存率改善をいまだ示すにいたらなかった。[1]これらの結果は2005年7月3-6日スペイン、バルセロナで開催された第11回世界肺癌会議のプレジデンシャルシンポジウムで発表された。

無作為化第Ⅱ相試験の結果に基づき、イレッサは米国で進行性NSCLC患者の治療に承認された最初のEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ抑制剤である[2]。残念なことに次に行われたイレッサとプラセボの第Ⅲ相比較試験((ISEL)は全患者集団で生存の有利を示すことができなかった[3]。世界肺癌会議で発表された結果はこれらの結果の最新のものである。

この試験にかかわった患者は28カ国210センター1692人であった。患者は局所的進行又は転移性NSCLCであった。患者は以前に一つか二つの化学療法を受け最新の治療法に不寛容か不応性で、最後の化学療法の投薬から90日以内に進行があった患者と定義された。患者はイレッサ+緩和維持療法(BSC)またはプラセボ+BSCに無作為に割り付けられた。

全体としてイレッサは生存の有利に関与しないという結果であった。しかし、アジア人と喫煙未経験者においては統計的に有意な生存の利点が報告された。肺腺癌患者は生存において有利でなかった。(表1)

表1:不応性進行NSCLC治療におけるイレッサ

イレッサ+BSC

プラセボ+BSC

生存中央値(月)

5.6

5.1

1年生存

27%

21%

肺腺癌患者の生存中央値(月)

6.3

5.4

肺腺癌患者の1年生存

30%

18%

アジア人患者の生存中央値(月)

9.5

5.5

喫煙未経験者の生存中央値(月)

8.9

6.1

奏効率は喫煙者の5%に対して喫煙未経験者の方が高かった(18%)。しかし、奏効率ではアジア人の患者ではプラセボで治療した患者の6.5%に比較して12%で、有意とは言えなかった。

イレッサを受けた患者で高頻度に発現した主な副作用は、発疹(プラセボを受けた患者の10%に対してイレッサでは37%)と下痢(プラセボを受けた患者の9%に対してイレッサでは27%)であった。重篤な有害事象はイレッサ19%に対してプラセボ17%で相違がなかった。

コメント

この試験の討議でChandra Belani博士は以下の考えを示した。「この試験と、肯定的であったタルセバ(erlotinib)pivotal試験の結果は本来ほとんど同等のはずであることを考えると、イレッサは低量すぎる投与であったかもしれない。」

参考:

[1]Thatcher N,Chang A,Parikh P, et al.ISEL:一つないし二つの化学療法を以前に受けたNSCLC患者でイレッサ+BSCとプラセボ+BSCの第Ⅲ相生存率比較試験。2005年スペイン、バルセロナ第11回世界肺癌会議に先行。議事録#Pr4
[2]Kris MG, Natale RB, Herbst RS, Lynch TJ, Jr., Prager D, Belani CP, et al. 症状のあるNSCLC患者でのイレッサ,上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ抑制剤の有意性、:無作為化試験JAMA.2003;290:2149-58
[3]Thatcher N, Chang A, Parikh P, Pemberton K, Archer V. 一つないし二つの化学療法を以前受けた進行性NSCLC患者でBSC+イレッサとプラセボの比較対照試験(ISEL).Proc Am Assoc Cancer Res. 2005; 46: 議事録#LB-6


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翻訳担当者 内村 美里人

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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