タモキシフェンに肺癌死亡リスクを減らす可能性

キャンサーコンサルタンツ

乳癌治療薬である抗エストロゲン剤タモキシフェンに、肺癌による死亡リスクを減らす可能性がある。これに関連する一連の研究結果がCancer誌に掲載された。
これまでの研究で、更年期障害の治療に使われるエストロゲンとプロゲスチンを併用するホルモン補充療法が、肺癌による死亡リスクを増大させる可能性があることが指摘されてきた。こうした知見は、ホルモンと肺癌の成長に何らかの関連性があり得ることを示唆している。そうした関連性が存在するならば、ホルモン受容体陽性の乳癌治療に使われるタモキシフェン等の抗エストロゲン剤に肺癌死亡率を低める効果があるかもしれない、と着眼した研究者がいる。

彼らは、抗エストロゲン療法が肺癌死亡率を軽減させるか否かを検証するため、タモキシフェンを服用した女性肺癌患者の予後と、タモキシフェンを服用しなかった女性の予後を比較した。研究には全部で6,655人の女性が参加し、そのうち46%が抗エストロゲン療法を受け、残る54%は受けなかった。予後は、一般集団データと比較された。

• 参加者のうち40人が肺癌を発症した。
• 抗エストロゲン剤服用群の肺癌発症率と一般集団の肺癌発症率に差はなかった。
• 抗エストロゲン剤服用群の肺癌死亡率は、予測値を下回った。抗エストロゲン剤服用群における肺癌死亡数は、一般集団に比べ、87%低かった。

こうした結果は、抗エストロゲン剤が肺癌による死亡リスクを低下させるのに有効である可能性を示している。「プロスペクティブ(前向き)試験で今回の結果が確認され、抗エストロゲン剤が肺癌の予後を改善することが実証されれば、臨床現場に大きな影響を与えることになるでしょう」と研究者たちは述べている。

参考文献:

Bouchardy C, Benhamou S, Schaffar R, et al. Lung cancer mortality risk among breast cancer patients treated with anti-estrogens. Cancer [early online publication]. January 24, 2011.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 村上 智子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がんに術前デュルバルマブ併用免疫療法が有効の画像

肺がんに術前デュルバルマブ併用免疫療法が有効

MDアンダーソンがんセンター橋渡し研究の知見が、単剤療法より併用療法を支持早期の非小細胞肺がん(NSCLC)の術前(前外科的)療法において、抗PD-L1モノクロナール抗体のデュ...
ニボルマブと定位放射線の併用は、放射線単独と比較して肺がんの予後を改善の画像

ニボルマブと定位放射線の併用は、放射線単独と比較して肺がんの予後を改善

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/07/19】より免疫療法薬と定位放射線療法の併用は放射線単独よりも肺がん(NSCLC)の予後を改善手術不能の早期非小細胞...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
AACR:術前免疫化学療法+術後デュルバルマブにより肺がんの転帰が有意に向上の画像

AACR:術前免疫化学療法+術後デュルバルマブにより肺がんの転帰が有意に向上

MDアンダーソンがんセンター

第3相試験で、免疫療法と化学療法の併用は化学療法単独と比較して、疾患の再発、疾患の進行、疾患による死亡の割合が32%低下したことが判明した。

抄録:CT005...