進行非小細胞肺癌患者におけるアービタックス®およびパラプラチン®にタキサンを併用した療法での忍容性および有効性

キャンサーコンサルタンツ
2008年11月

タキサン系抗癌剤—タキソール® (パクリタクセル)またはタキソテール®(ドセタキセル)—にアービタックス®(セツキシマブ)を追加した一次治療は、進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者において実用的で有効な療法であるとした2つの論文が最近掲載された。

進行NSCLC患者に対する治療成績は現在でも満足のいくものではない。しかし、標的治療の出現により、化学療法と併用した場合に患者の転帰改善に有望であることが示された。現在、イレッサ®(ゲフィチニブ)およびアバスチン®(ベバシズマブ)については、FDAによりNSCLC治療への適用が承認されている。アービタックスは、NSCLCなどの多種の癌細胞表面のタンパク質である上皮成長因子レセプター(EGFR)に部分的に結合することで癌増殖を抑制する機序を有する医薬品である。本医薬品は頭頚部癌および大腸癌の治療に対してFDAの承認を受けている。

米国フォックスチェイスがんセンターの研究者等の報告では、アービタックス、タキソール、パラプラチン療法は、進行NSCLCに対する一次治療法として有効性および忍容性が認められたことを発表した。本臨床試験内容は2008年11月発行のJournal of Thoracic Surgery誌に掲載された。本臨床試験では、前治療歴が無い患者53人を組み入れた。奏効率は57%で、3人に完全奏効率が認められた。全体での生存期間は14ヶ月、また無増悪生存期間は5.5カ月であった。投与12カ月時点では患者の20%において癌の進行は認められなかった。女性患者およびEGFR陽性腫瘍患者では生存期間がさらによかった。

ペンシルバニア州立Hersheyがんセンターの研究者らも、転移および進行NSCLC患者における一次治療としてアービタックス、タキソテールおよびパラプラチン療法を用い、忍容性ならびに有効性が認められたとする報告を発表した。本臨床試験内容は2008年11月発行のCancer誌に掲載された。本臨床試験では、反応性が認められる患者を対象とし、1年間または癌進行が認められるまでの期間アービタックス単剤投与を受ける維持療法を行っている。試験には80人を組み入れた。奏効率は15%であった。また無増悪生存期間の中央値は4.6カ月、全生存期間中央値は10カ月であった。25人はアービタックスを維持療法薬として投与した。

コメント:

本データにより、アービタックスはパラプラチンとタキサン安全に追加でき、毒性は許容できるものであることが示された。生存率改善の是非については、無作為化試験の実施が必要である。

参考文献:
Borghaei H, Langer CT, Millenson M, Phase II study of paclitaxel, carboplatin, and cetuximab as first line treatment for patients with advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): results of OPN-017. Journal of Thoracic Oncology. 2008;3:1266-1292.
Belani CP, Schreeder MT, Steis RG, et al. Cetuximab in combination with carboplatin and docetaxel for patients with metastatic or advanced-stage nonsmall cell lung cancer: a multicenter phase 2 study. Cancer. 2008;113:2512-2517.


 c1998- 2009CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 菅原宣志

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

FDAが、非小細胞肺がんにラゼルチニブとアミバンタマブ併用を承認の画像

FDAが、非小細胞肺がんにラゼルチニブとアミバンタマブ併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年8月19日、食品医薬品局(FDA)は、FDA承認検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン19欠失またはエクソン21 L858R置換変異...
治療困難なKRAS変異肺がんモデルにおいて、活性型RAS阻害薬が抗腫瘍効果をもたらすの画像

治療困難なKRAS変異肺がんモデルにおいて、活性型RAS阻害薬が抗腫瘍効果をもたらす

ある種のKRAS G12C阻害薬に対する耐性は、活性のあるGTP結合型RASの蓄積に起因する可能性があり、これはがん患者の腫瘍増殖を促進させる。したがって、活性型RASを効果的に阻害す...
肺がん、食道がん、鼻咽頭がんの治療の進歩ー日本開催ASCOブレークスルー会議の画像

肺がん、食道がん、鼻咽頭がんの治療の進歩ー日本開催ASCOブレークスルー会議

米国臨床腫瘍学会 (ASCO) のブレークスルー会議では、臨床医、腫瘍学のリーダー、医療技術および研究の先駆者が一堂に会し、がん治療技術の最新イノベーションを活用して進歩を加速し、患者...
新たなTIL免疫療法薬リフィリューセルが進行肺がんに有望の画像

新たなTIL免疫療法薬リフィリューセルが進行肺がんに有望

オハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG・ジェームズがん病院・リチャードJ・ソロブ研究所(OSUCCC – James)の研究者らは、第2相多施設臨床試験の結果を発表した。それによ...