MDA研究ハイライト2022/08/24【1】リンパ腫

初発大細胞型B細胞リンパ腫に化学療法前の標的治療が有望

この数十年にわたり、初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者は化学免疫療法のみで治療されてきたが、奏効しないか再発を経験した患者が多くいた。Jason Westin医師が主導したSmart Start試験では、化学療法前のリツキシマブ、レナリドミド(販売名:レブラミド)、イブルチニブ(販売名:イムブルビカ)を組み合わせた標的治療レジメン(RLI)の有効性を検証した。本試験は、悪性リンパ腫の初発患者に対して、化学療法を行わずに標的治療薬を組み合わせた治療を行う初めての試験である。第2相試験には、60人の非胚中心B細胞様DLBCL初発患者が登録された。2回の治療後、化学療法を行う前の奏功率は86.2%、その後に化学療法とRLIを併用した場合の完全奏功率は94.5%であった。2年後の無増悪生存率、全生存率はそれぞれ91.3%、96.6%であった。これらの結果は、こういった状況において化学療法を行わずに標的治療薬を組み合わせて治療することの可能性を確立するものであり、現在Smart Stop試験で検証されている。詳細はJournal of Clinical Oncology誌で確認できる。

CAR‐T細胞療法が有効でない大型B細胞リンパ腫患者の特定に遺伝子マーカーが有効

CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は画期的な進歩であるが、再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者の半数以上は治療効果が得られない。予後バイオマーカーは、代替療法が有効な高リスクの患者を特定するのに役立つ可能性がある。低パス全ゲノムシーケンス(lpWGS)は、複数のサンプルからの少量の試料を用いて塩基配列を決定し、遺伝子の変異を検出するために用いられる迅速かつ効果的なDNAシーケンス技術である。コピー数変化(CNA)を研究し、予後不良のマーカーを開発するため、Hua-Jay J. Cherng医師、Michael Green博士、Jason Westin医師が率いる研究チームは、CAR-T細胞療法前の患者122人の血液試料中のセルフリーDNAを低パス全ゲノムシーケンスで解析した。その結果、ゲノムの不安定性を示す限局した領域の CNAスコア(focal CNAスコア)が高いことが、予後不良につながる最も重要な変数であることが判明した。focal CNAスコアと腫瘍の大きさを示す従来のマーカーを組み合わせることで、別の治療戦略が有効な患者の優先順位を評価する貴重なリスクモデルを提供できる。詳細はBlood誌で確認できる。

日本語記事監訳:佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

翻訳担当者 伊藤彰

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