原発性マクログロブリン血症の再発にベネトクラクスが有望な可能性

ベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)は、原発性マクログロブリン血症に対して高い有効性および安全性を示す経口治療薬になると研究主任らは語る。

現在承認されている唯一の薬剤クラスに属する治療薬が効かない原発性マクログロブリン血症の患者に対しても、がん細胞の不死性を取り除く薬剤が新たな治療選択肢として有効であることを、ダナファーバーがん研究所の研究者らが臨床試験で示した。

試験に参加した32人の患者のうち、80%以上が2年間のベネトクラクス投与に対して「大奏効」を示し(これは標準治療に匹敵する割合である)、副作用はおおむね管理可能なものであった。Journal of Clinical Oncology誌に掲載されたこの結果を受け、ベネトクラクスが原発性マクログロブリン血症に許可される治療薬として全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)の承認を得る可能性が高いと著者らは語る。

原発性マクログロブリン血症は非ホジキンリンパ腫の一種であり、米国では毎年1,000~1,500人が診断される。この疾患は、B細胞と呼ばれる白血球の異常に起因し、血液を濃くするタンパク質が過剰に産生され、貧血や免疫系の低下を引き起こす。

「現在、本疾患の患者さんに対する主な治療には、化学療法、プロテアソーム阻害薬と呼ばれる薬剤とモノクローナル抗体の併用、またはBTK阻害薬と呼ばれる新しい薬剤があります」と、筆頭著者であり、ダナファーバーBing Center for Waldenström Macroglobulinemia(原発性マクログロブリン血症の専門病院)臨床部長のJorge Castillo医師は語る。「これらの治療は高い有効性を示す一方で、それぞれが望ましくない副作用を引き起こします。化学療法では吐き気、脱毛、疲労、二次性白血病などがみられ、BTK阻害薬では高血圧、不整脈、出血などがみられます。しかも、BTK阻害薬は一生服用し続けなければなりません」。

「本試験では、ベネトクラクスがこれらの治療と同等の有効性を有し、かつこれらの治療のデメリットを回避できるかどうか検討しました」。

多くのがんと同様、原発性マクログロブリン血症の悪性細胞は「不死化」しており、絶えず増殖と分裂を繰り返している。原発性マクログロブリン血症では、BCL-2と呼ばれる細胞タンパク質が過剰に存在することにより、この際限のない増殖が促進される。慢性リンパ性白血病(CLL)の治療薬として米国食品医薬品局に承認されたベネトクラクスは、BCL-2を阻害し、腫瘍細胞を死滅させる。

今回の試験には、過去に治療を受けた後に原発性マクログロブリン血症を再発した32人の患者が登録された。治療の最初の3週間は、ベネトクラクス錠を徐々に用量を増やしながら投与した(慢性リンパ性白血病患者での経験から、初めから高用量を投与すると、死滅するがん細胞が大量の毒性物質を血中に放出することがわかっていた)。最大用量に達した後は、ベネトクラクス錠を1日1回、2年間にわたり服用した。

治療開始後の最初の2カ月で、50%の患者に薬剤への反応の徴候(腫瘍量の指標であるIgMタンパク質の減少によって示される)がみられた。2年後の奏効率(IgM値が25%以上減少した患者の割合)は83%であった。また、80%の患者は、IgMが50%以上減少する「大奏効」を示した。さらに、20%の患者は、IgMが90%以上減少する「非常に良い部分奏効」を示した。

BTK阻害薬による治療を受けていた参加者の50%と、過去の治療過程で耐性となった参加者の38%に反応がみられた。

Castillo医師によると、治療の副作用はおおむね管理可能なものであった。「他の治療でしばしばみられる出血、不整脈、神経障害は確認されませんでした。また、化学療法で起こりうる二次性白血病の発症も、2年経過した時点で認められませんでした」。一部の患者に吐き気や腹部膨満感などの消化器症状がみられたが、標準的な薬物療法により治療可能であった。最も一般的な副作用は、好中球と呼ばれる白血球の減少であった。約10%の患者が、好中球レベルの回復にブースター注射を要した。

試験終了後の12カ月間に、一部の患者は病状が悪化したが、25〜30%の患者は良好な状態を維持し、追加治療も不要であった。

「ベネトクラクスを一生服用し続ける必要のない患者さんもいるかもれません」とCastillo医師は言う。「2年以上の治療が不要な患者さんもいると思います」。

試験の有望な結果を受け、研究者らはBTKとBCL-2阻害薬を併用した試験を開始しており、BCL-2阻害薬をモノクローナル抗体と併用する別の試験も計画されている。

統括著者:Steven P. Treon, MD, PhD, of Dana-Farber. 共著者: Kirsten Meid, MPH, Carly Leventoff, Timothy P. White, Catherine A. Flynn, FNP-BC, Shayna Sarosiek, MD, Maria G. Demos, Maria L. Guerrera, MD, Amanda Kofides, Xia Liu, MD, Manit Munshi, MS, Nicholas Tsakmaklis, Lian Xu, Guang Yang, PhD, Christopher J. Patterson, Zachary R. Hunter, PhD, and Matthew S. Davids, MD, of Dana-Farber; John N. Allan, MD, and Richard R. Furman, MD, of New York-Presbyterian Hospital, Weill Cornell Medical College; Tanya Siddiqi, MD, of City of Hope National Medical Center; Ranjana H. Advani, MD, of Stanford Cancer Institute; and Andrew R. Branagan, MD, of Massachusetts General Hospital.

翻訳担当者 工藤章子

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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