ニボルマブが中枢神経系または精巣原発悪性リンパ腫に有効

小規模症例研究によると、古典的ホジキンリンパ腫の持続的寛解を誘導する免疫療法薬が、2種類のまれなアグレッシブタイプの非ホジキンリンパ腫のいずれかを有する患者に有効である可能性がある。

患者の治療を担当したダナファーバーがん研究所の研究者らは、2016年12月5日(月曜日)の第58回米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会でその結果を報告する。

この研究では、再発または難治性の中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)または精巣原発悪性リンパ腫(PTL)患者5人がニボルマブによる治療を受けた。ニボルマブとは免疫系の一部であるT細胞の表面に存在するタンパク質として重要なPD-1を阻害する薬剤である。PD-1を阻害することで、T細胞によるリンパ腫細胞への攻撃にブレーキがかからなくなるのである。患者5人のうち4人にニボルマブによる完全奏効が認められ(画像検査で脳腫瘍が消失)、1人に部分奏効が認められた。

PCNSLおよびPTLは、リンパ節外から発生するアグレッシブタイプの非ホジキンリンパ腫であり、従来の治療法では不十分であると考えられている。

診断後2年以内にPCNSL患者のほぼ半数は再発し、PTL患者のほぼ半数は初回化学療法後に悪化する。これらの疾患においては再発した場合や初回治療において治療効果を得られなかった場合、治療選択肢がほとんどない。

ニボルマブは、古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とした臨床試験で著しい成功を収めている。第1相および第2相の試験結果では、薬剤耐性を示す患者の約70%が、ニボルマブによる治療後に完全寛解または部分寛解になった。

統括著者Margaret Shipp医師(ダナファーバーがん研究所)の研究室の研究者らは、PCNSLおよびPTLは古典的ホジキンリンパ腫と共通の重要な分子異常を有することを発見し、この2種類の疾患に対してもニボルマブが効果的であるという仮説を立てた。

本臨床試験の筆頭著者であるLakshmi Nayak医師(ダナファーバーがん研究所)は、「高用量化学療法と自己幹細胞移植などのPCNSLの治療では、特に若年の健康な患者に対して大きな進歩を遂げていますが、患者が診断される年齢の中央値は65歳ですので、移植が選択肢に入るとは限りません。われわれの発見は非常に有望なものであり、特にわれわれの患者ではニボルマブに対する反応が10カ月以上持続しています」と述べた。

研究成果および臨床結果に基づき、試験担当医師らは、再発または治療抵抗性のPCNSLおよびPTLを有する患者を対象としたニボルマブの第2相試験を開始したところである。

共著者は以下のとおりである。Ann LaCasce, MD, Margaretha Roemer, Bjoern Chapuy, MD, PhD, Philippe Armand, MD, PhD, and Scott Rodig, MD, PhD, of Dana-Farber; Fabio Iwamoto, MD, of Columbia University; and Srinivasan Mukundan Jr., MD, PhD, of Brigham and Women’s Hospital.

翻訳担当者 喜多洋子

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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