一部の非ホジキンリンパ腫(NHL)における危険因子を特定

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2014年9月2日

非ホジキンリンパ腫(NHL)の危険因子に関する大規模国際共同研究において、稀なサブタイプを含め、11種の異なるNHLサブタイプについて、病歴、生活要因、血液やリンパ由来の癌の家族歴、および職業に関連するリスクを定量化することができた。毎年、世界中で50万人を超える人々が、多様な免疫系の癌であるNHLと診断されている。過去の研究では、NHLのタイプごとにその原因も異なることが示唆されたが、こうした個々の研究では、それを証明できる十分な統計的検出力に欠けていた。この問題を解決するため、International Lymphoma Epidemiology Consortium (国際リンパ腫疫学コンソーシアム)の100人を超える研究者らは試験データを統合し、2014年8月30日付のJournal of the National Cancer Institute誌に研究論文13報を発表した。

解析のために統合した集団にはNHLを有する17,471人とNHLを有さない対照群23,096人が含まれた。北米、ヨーロッパ、イスラエル、オーストラリアで実施され、データが統合された20件の研究に基づき、著者らは以下の事項を見出した。

・NHLの各タイプでは、病歴要因(自己免疫疾患、C型肝炎ウイルス、皮膚炎、輸血)、白血病と多発性骨髄腫症の家族歴、アルコール摂取、喫煙、およびある種の職業により、リスクは有意に異なる。

 ・NHLの家族歴、娯楽としての日光暴露、枯草熱、アレルギーと社会経済的地位によるリスクは、NHLの各タイプで同程度である。

・自己免疫疾患には特有のパターンがあり、B細胞が活性化される疾患ではB細胞リンパ腫のリスクは上昇する(例えば、シェーグレン症候群の病歴があると辺縁帯リンパ腫のリスクは40倍近く上昇する)。同様に、T細胞を活性化する疾患ではT細胞リンパ腫のリスクが上昇する傾向が強い。

・免疫機能障害と末梢性T細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫およびリンパ形質細胞性リンパ腫との関連は、菌状息肉腫/セザリー症候群、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫およびマントル細胞との関連よりも強い。

こうした研究の成果により、NHLサブタイプが発生する生物学および臨床的特徴を本質的に理解することができるであろう。この大規模な国際的で学際的な取り組みは、多数の症例を必要とする複雑な問題を、研究者がデータを共有して解決したことを示すものである。この取り組みは、疫学、免疫学、実験科学や病理学の分野の研究者により行われ、米国国立癌研究所、癌疫学・遺伝学部門のLindsay M.  Morton医学博士が共同で指導した。

原文 

翻訳担当者 小縣正幸

監修 吉原哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)

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