レナリドミドのFDA承認

原文 2005/12/27掲載 2013/06/05更新

商標名:Revlimid®

マントル細胞リンパ腫(2013/06/05)
多発性骨髄腫(2006/6/29)
骨髄異形成症候群(MDS)(2005/12/27)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

マントル細胞リンパ腫
2013年6月5日、米国食品医薬品局は、過去に2つ、うち1つはボルテゾニブ(ベルケイド®)を含む療法を受けた後に再発または進行したマントル細胞リンパ腫患者の治療に対し、レナリドミドのカプセル(Revlimid®、Celgene社製)を承認しました。

この承認は、ボルテゾミブまたはボルテゾミブを含む療法を受けたあと再発した、またはこれらの治療法では効果が得られないマントル細胞リンパ腫患者134人が参加した単一治療群多施設臨床試験の結果に基づいています。患者134人全員が過去にボルテゾミブ療法を受けており、60%がボルテゾミブ療法では効果が得られない疾患がありました。患者が過去に受けたマントル細胞リンパ腫の療法の数の中央値は4つでした。患者の年齢の中央値は67歳で、81%が男性、96%が白人、61%が3年以上マントル細胞リンパ腫でした。

有効性のエンドポイントは全奏効率(完全奏効、未確定の完全奏効、または部分奏効)および奏効期間です。有効性を評価しえた患者133人のうち、全奏効率は26%(95% CI [18.4, 33.9])。完全奏効(確定または未確定)に達したのは、9人(7%)で、25人(19%)が部分奏効を達成しました。奏効を達成した34人の奏効期間中央値は16.6カ月(95% CI [7.7, 26.7])でした。

安全性データの評価は、134人の患者に対して実施され、全員が1回以上レナリドミドの投与を受けました。治療期間中央値は95日(範囲は1~1002日)で、78人(58%)が治療を3サイクル以上受けました。76人(57%)が、有害事象のため投与を1回以上中断し、51人(38%)が有害事象による投与量の減量を1回以上受けました。26人(19%)が有害事象のため治療を中止しました。

最も多く見られる(15%以上)グレード1~4の有害事象には、好中球減少症、血小板減少症、疲労、貧血症、下痢、吐き気、咳、発熱、発疹、呼吸困難、掻痒症、便秘、末梢浮腫および白血球減少症がありました。最も多く見られた(5%以上)グレード3~4の有害事象は、好中球減少症、血小板減少症、貧血症、肺炎、白血球減少症、疲労、発熱性好中球減少症、呼吸困難および下痢でした。

レナリドミドの推奨用量およびスケジュールは、28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回25 mgの投与を継続します。レナリドミドは、食事と一緒または食事と一緒でなくても、毎日ほぼ同じ時間に服用しなければなりません。

また、一変申請には20 mgの新しいカプセルの承認も含まれています。

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松長えみ訳
吉原哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)監修 
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多発性骨髄腫
2006年6月29日米国食品医薬品局(FDA)は、過去に治療歴のある多発性骨髄腫患者に対し、レナリドミド経口カプセル(Revlimid®、Celgene社製)をデキサメサゾンとの併用治療に使用することを承認した。レナリドミドはRevAssistSM(詳細は下記)と呼ばれる特別に規制された流通プログラムの下で入手することができる。

過去に1回以上治療を受けたことのある多発性骨髄腫患者に対して、レナリドミドと経口デキサメサゾンパルスの併用とデキサメサゾン単独使用を比較した2件の無作為化・二重盲検・多施設・多国間共同・プラセボ対照比較試験において効果および安全性が示された。

レナリドミドは1日25mg経口投与を初期投与量とし、28日サイクルの1日目から21日目に25mgカプセルを単回投与した。デキサメサゾンは28日サイクルで最初の4サイクルは1~4日目、9~12日目および17~20日目に1日40mgを経口投与した。その後は両試験ともどちらの治療群に対しても28日サイクルで1日目から4日目に1日40mgを経口投与した。

2試験に参加した患者692人(試験1に341人、試験2に351人)に対してデータの評価を行った。主要エンドポイントである無進行期間(TTP)が、各試験においてあらかじめ明記されている中間分析で評価された。試験1ではTTPの中央値はレナリドマイド・デキサメサゾン投与群が37.1週間で、これに対しデキサメサゾン単独投与群では19.9週間であった(HR=0.356、95%CI[0.257、0.494]、p値<0.0001)。試験2におけるTTP中央値はデキサメサゾン単独投与群で20週間であったのに対し、レナリドマイド・デキサメサゾン併用治療群では中央値を推計できなかった(HR=0.392、95%CI[0.274,0.562]、p値<0.0001)。

2つの治療群の691人に対し安全性に関するデータの評価を行った。グレード3および4の好中球減少、血小板減少、白血球減少、リンパ球減少、有熱性好中球減少、深部静脈血栓症、肺塞栓、心房細動、便秘、下痢、倦怠感、肺炎、低カリウム血症、低カルシウム血症、筋力低下、神経障害および抑うつがデキサメサゾン単独投与群と比較してレナリドミドとデキサメサゾン併用投与群において大きい割合で報告された。

両試験を合算した解析によると、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血栓症、脳静脈洞血栓症といった血栓および血栓塞栓イベントは、デキサメサゾン単独投与群で報告されたのは4%であったのに対し、レナリドミドとデキサメサゾン併用投与群の患者においては12%と、より高頻度に報告された。

患者と主治医は血栓塞栓症の兆候および症状に対し注意深く観察するように指導されている。レナリドミドと併用して投与される予防的な抗凝固治療または抗血小板治療が静脈血栓塞栓イベントの発生を減らすことができるかどうかは知られていない。予防的措置を施すか否かの決定は、各患者の潜在的危険因子を評価した後に注意深く検討するべきである。

腎機能障害のある患者は本試験から除外された。レナリドミドは主として腎臓により排出されるため、腎機能を注意深く監視する必要がある。

女性患者はレナリドマイド服用中には妊娠しないように指導されている。レナリドミドは、生命に危険を及ぼす重篤な出生異常を引き起こす既知の催奇形性物質であるサリドマイドの類似体である。レナリドマイドの催奇形性の可能性について評価するため生殖毒性に関する試験が続行中である。

胎児曝露を避けるためレナリドミドはRevAssistと呼ばれる特別に規制された流通プログラムの下でのみ入手することができる。このプログラムのもとでは、プログラムに登録されている処方者および薬剤師のみがレナリドミドの処方および調剤をすることができる。本剤を受け取るためにこのプログラムに登録される患者はRevAssistプログラムの要求事項に従うことに同意しなければならない。詳しい情報についてはRevAssist Web site にアクセスするかまたはCelgene社のカスタマーケアセンター(フリーダイヤル1-888-423-5436)に連絡のこと。

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エリザベス 訳
榎本 裕(泌尿器科)監修 
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骨髄異形成症候群(MDS)
2005年12月27日、FDAは、5q染色体欠失性細胞遺伝学的異常がある(その他の細胞遺伝学的異常のあるなしは問わず)低リスクまたは中程度1のリスクを持つ骨髄異形成症候群(MDS)による輸血依存性貧血を持つ患者に対する治療のため、レナリドミド経口カプセル(レブリミド®、Celgene Corporation社製品)に対しH区分下の承認(限定販売)を与えました。レナリドマイドは、Thalomid®に対し設立されたS.T.E.P.S®プログラムと同様な、特別限定販売プログラムであるRevAssistSMの下でのみ、入手できます([siteurl=modules/nci_bulletin/]FDAプレスリリース日本語訳[/siteurl]参照)。

148人の一群多施設臨床試験において、安全性と有効性が証明されました。この多施設試験では、5q染色体欠失性細胞遺伝学的異常がある(その他の細胞遺伝学的異常のあるなしは問わず)低リスクまたは中程度1のリスクを持つMDSによる輸血依存性貧血を持つ患者を登録しました。患者は、試験の治療開始前の8週間以内に、2単位以上の赤血球(RBC)の輸血を受けていなければなりませんでした。

主要評価項目は、RBC輸血非依存となる反応(8週間以上の無輸血期間)でした。レナリドミドは、1日10 mg連日投与または10 mgを21日間投与を28日ごとに行われました。服用の遅延や1日5 mgへの減量と1日おきに5 mgの減量が認められました。好中球減少症を発現した患者は、顆粒球コロニー刺激因子の投与を受けることが許されました。

RBC輸血非依存となる反応は、試験において67%(99/148)の患者で観察されました。RBC輸血反応期間中央値は、44週(0週から67週以上の範囲)でした。奏効した患者の90%で、レナリドミド開始後3カ月以内に奏効のエビデンスが証明されました。

患者の100%で、少なくとも1種類の有害事象が報告されました。患者の89%(131/148)で、少なくとも1種類のグレード3または4の有害事象が認められました。最も頻度が高く報告された有害事象は、血小板減少症(62%)と好中球減少症(59%)でした。グレード3または4の血小板減少症または好中球減少症が、それぞれ50%と53%観察されました。その他の一般的な有害事象は、下痢(49%)、そう痒(42%)、発疹(36%)、疲労感(31%)でした。

試験中、80%は、毒性のため服用遅延および減量を必要としました。34%は、第2段階の服用遅延または減量を必要としました。好中球減少症と血小板減少症に対し推奨する投与量の調整は、製品ラベルに記載してあります。患者は、投与開始からの8週間は毎週、その後は少なくとも毎月、血球数の観察を週受けなければなりません。

5q染色体欠失性細胞遺伝学的異常を持つMDS患者における複数のレナリドミド試験で、血栓塞栓事象が生じることはあまりありませんでした。しかし、最近報告された多発性骨髄腫において実施されたいくつかの試験で、レナリドミド併用治療を受けた患者で著しく増加した深部静脈血栓症と肺塞栓症のリスクが観察されました。レナリドミドでの予防的抗凝固療法および抗血小板療法の役割はいまだ十分に評価されていません。予防方法は、個々のリスク因子の十分な評価後に記載される必要があります。

血清クレアチニンが2.5mg/dl以上の患者は、試験から除外されました。レナリドミドは、主に腎臓から排出されるため、腎機能の十分な観察を必要とします。

女性は、レナリドマイド服用中の妊娠を避ける必要があります。レナリドミドは、重度のヒト先天性欠損症が生じるヒト催奇形物質として知られているサリドマイドの類似体です。今後、レナリドミドの催奇形性の可能性を評価する生殖毒性試験が実施されることでしょう。RevAssistSMプログラムの下、登録した処方医師および薬剤師のみがレナリドミドの処方または調剤ができます。患者はRevAssistSMプログラムの要件に従うことを同意しなければなければなりません。

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湖月みき 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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