パノビノスタットは再燃性/難治性ホジキンリンパ腫治療に有望

キャンサーコンサルタンツ

多数の前治療を受けた再燃性および難治性ホジキンリンパ腫(HL)患者において、試験薬パノビノスタット(Panobinostat、試験薬剤名:LBH-589)の有望な活性が、進行中の研究で報告された。本所見は、2010年米国臨床腫瘍協会(ASCO)年次総会で発表された。

ホジキンリンパ腫はリンパ系の癌で、リード・ステルンベルグ細胞という本疾患の特徴的な細胞の存在をもとに診断される。ホジキンリンパ腫は通常身体の1カ所のリンパ節で発生し、リンパ系全体に広がっていく。リンパ系以外にも、肺、肝臓、骨、骨髄などその他の器官に転移することがある。

前治療後に再発したホジキンリンパ腫は、再燃性あるいは再発性疾患とみなされ、標準治療に効果を示さないホジキンリンパ腫は、難治性疾患とみなされる。再燃性および難治性ホジキンリンパ腫患者には、高用量化学療法や幹細胞移植(SCT)による治療を行う。

パノビノスタットは、汎デアセチラーゼ阻害剤として知られている薬剤で、ホジキンリンパ腫では細胞の増殖ないし成長を抑制し、 アポトーシスないし細胞死を誘発して癌に作用する。ホジキンリンパ腫のほかに、皮膚T 細胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、乳癌、前立腺癌などの疾患においても、パノビノスタットの第2相臨床試験と第3相臨床試験が進行中である。先行研究では、パノビノスタットはホジキンリンパ腫の治療に有望であると考えられた。

現在進行中の研究である第2相国際試験では、多数の前治療を受けた再燃性および難治性ホジキンリンパ腫患者129人を対象に、パノビノスタットが評価された。前治療には自己造血幹細胞移植(AHSCT)と最大5つまでの化学療法レジメンが含まれた。パノビノスタット40mgを週3回投与し、21日を1サイクルとした。2サイクル投与ごとにCTスキャンやMRIを用いて治療効果を観察した。

患者の3%は完全寛解に達し、22%は部分寛解(検出可能癌の大きさが50%以上縮小)を得た。

最も多く認められた副作用は血小板減少症(血液中の血小板数の減少)であるが、患者の大半において治療を中断するほど重症ではなかった。

研究者らは、多数の前治療を受けた再燃性および難治性ホジキンリンパ腫患者に対して、パノビノスタットは活性と良好な忍容性を示すと結論づけた。本研究は進行中のため、さらなる所見が期待される。

参考文献:

Sureda A, Engert A, Browett P J, et al. Interim results for the phase II study of panobinostat (LBH589) in patients (Pts) with relapsed/refractory Hodgkin’s lymphoma (HL) after autologous hematopoietic stem cell transplant (AHSCT). Presented at the 2010 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, June 4-8, 2010, Chicago, IL. Abstract 8007.


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翻訳担当者 マクドナルド 晋子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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