2007/03/27号◆癌研究ハイライト「イマチニブ「休薬」は疾患進行リスク」「ゾレドロン酸と骨密度増加」「手術は進行肺癌の生存率を改善しない」「ホジキンリンパ腫」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年03月27日号(Volume 4 / Number 13)
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◇◆◇癌研究ハイライト ◇◆◇

イマチニブ「休薬」は疾患進行のリスクを伴う

Journal of Clinical Oncology (JCO)に3月20日付けで掲載された欧州のランダム化試験によると、イマチニブでコントロールされていた進行性消化管間質腫瘍(GIST)患者では、治療を中断すると急速に疾患が進行するリスクを伴う。

進行性GIST患者の最高90%に対して、イマチニブは腫瘍をコントロールし、全生存期間を延長させることができる。通常、イマチニブの副作用は軽度であるが、慢性化する場合も多い。GISTに対する標準的治療は、腫瘍の進行あるいは再発が認められるまでイマチニブを投与することであるため、同薬の有害作用が発現した患者は、癌がコントロールされている場合、投与中断を要求することがある。しかし、投与中断がこのような患者にとって安全であるか否かを検証した試験はこれまでにない。

試験責任医師は、1年以上イマチニブ投与を受けて疾患がコントロールされている患者58名を、投与継続群または投与中断群にランダムに割り付けた。投与継続群の28名中8名で疾患が進行し、投与中断群の32名中26名で、疾患が進行した。このことにより、同試験は中止され、医師らは全患者に対してイマチニブ投与を再開するよう勧告した。

投与中断群でイマチニブ投与再開を選択した26名中、24名は再び腫瘍のコントロールが認められた。結論として執筆者らは、「両群間で全生存期間に差は認められないが、本試験は、投与中断後における生存期間の同等性やイマチニブに対する抵抗性増加を示すようにデザインされたものではない。GISTに対するイマチニブ投与中断は、通常の診療において推奨すべきではない」と述べている。

ゾレドロン酸1年1回投与により前立腺癌患者の骨密度が増加する

小規模プラセボ対照ランダム化試験によると、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト投与を受けていた非転移性前立腺癌男性において、ゾレドロン酸の単回投与は骨密度(BMD)を12カ月間にわたって増加させる上で十分であることが判明した。GnRHアゴニストは、BMD減少および骨折リスクの増加と関連している。

JCOに3月20日付けで掲載された本試験では、GnRHアゴニスト投与を受けていた非転移性前立腺癌男性40名を、ゾレドロン酸4mg静脈内投与群またはプラセボ群にランダムに割り付けた。これらのうち36名に対して、12カ月後にBMD検査を実施した。本試験では検査を行なった4箇所の骨で、プラセボ群ではBMD減少が認められた。一方、ゾレドロン酸群では、同部位でBMD増加が認められた。両群間におけるBMDの最大累積差異(7.1%)は、腰椎の背腹(腰部における脊柱の部分)でみられた。また、ゾレドロン酸は、破骨細胞(骨量減少および骨リモデリング(再形成)に関与する細胞)活性のバイオマーカーであるN-テロペプチドの濃度を低下させた。

同様のBMD改善は、前立腺癌患者に対してゾレドロン酸を3カ月毎に1年間投与を行った試験においても認められた。代表執筆者であるMassachusetts General HospitalのMatthew R. Smith医師らは、「BMDの結果と血清中N-テロペプチドの抑制持続に関する同等性から、ゾレドロン酸1年1回投与は性腺機能の低下した男性の骨量減少を予防する上で十分であることが示唆される」と記している。

同研究チームは、本試験の過剰解釈について警告している。なぜならば、本試験には骨折リスクに対する影響の有無を検出する力がないためである。付随の論説において、ワシントン大学のCelestia S. Higano医師は同意見を繰り返し述べており、「骨転移を伴う前立腺癌患者を治療する際に骨関連の合併症のリスクを減らすことを意図するならば、ゾレドロン酸をより少ない頻度で用いればよいということを本結果が意味しているわけではない」と論じている。

手術は進行性NSCLC患者の生存率を改善させない

導入化学療法後に手術を受けた3A期N2非小細胞肺癌(NSCLC)患者では、化学療法後に放射線療法を受けた患者と比較して、全生存期間あるいは無増悪生存期間が改善されなかった。これらの結果は、Journal of the National Cancer Institute誌に3月21日付けで掲載されている。

ベルギーにあるヘント大学病院のJan P. van Meerbeeck医師らは、多施設前向きランダム化試験を実施し、1994年12月1日~2002年12月1日にEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer-Lung Cancer Groupから3A期でリンパ節転移陽性(N2)のNSCLCを有する適格患者579名を組入れた。

同患者に対する導入化学療法として、シスプラチンあるいはカルボプラチンを1種類以上の他の化学療法剤と併用して3サイクル投与した。適格患者579名のうち332名に対して、外科的切除あるいは胸部放射線療法をランダムに割り当てた。各群154名ずつの患者が割り付けられた通りの治療を終了した。

研究者らは、手術によって患者の全生存期間あるいは無増悪生存期間が改善されないことを見出した。生存期間の中央値は、放射線療法群で17.5カ月、手術群で16.4カ月であった。5年後の全生存率は、放射線療法群で14%、手術群で15.7%であり、統計学的有意差は認められなかった。

論説において、David H. Johnson医師、Valerie W. Rusch医師、およびAndrew T. Turrisi医師は、「本データから、3A期NSCLC患者のうち術前検査でN2であることが判明した一部の患者に対する放射線化学療法は、依然として適切な治療法であることが示された。また、本結果から、手術適応患者を注意深く選択することの重要性、および肺切除術の種類に関する重要性が強調される」と述べている。

さらに同医師らは次のようにコメントしている。「我々の技術は発展していることから、今後の目標は、予後や、薬剤感受性、および薬剤抵抗性の分子マーカーとされるものの前向きな検証に焦点を置くことである。将来、これらの有望な技術が、患者選択および治療決定の指針として用いられるようになることを期待したい。」

ホジキンリンパ腫生存者では生涯を通じて固形癌のリスクが増加する

ホジキンリンパ腫(HL)生存者のリスクに影響する評価項目について分析した新しい試験によると、同患者集団では、生涯を通して固形癌のリスクが有意に増加する。JCOのオンライン版に3月19日付けで公表された同国際共同試験の結果には、リスク評価と生存者に対するスクリーニング計画に役立つリスク推定が示されている。

試験責任医師らは、診断後5年以上生存したHL患者18,862名のデータを使用した。これらのデータは、NCIのSEERプログラムおよび欧州における4つの登録から収集した。リスクのモデルに使用した評価項目は、性別、HL診断時期、HL診断時の年齢、初回治療、および固形癌診断時の年齢であった。

同定された固形癌1,490個のうち、850個が過剰癌であると推定された。固形癌発症のリスクは、HL診断時の年齢、経過年数、および性別に依存しており、若年時にHLの診断を受けた女性で最もリスクが高かった。リスクの傾向は固形癌の種類により異なり、また過剰癌の頻度が高かった部位は、女性の乳房、肺、および結腸直腸であった。

結腸直腸癌および乳癌について、HL若年生存者の絶対的リスクは、通常スクリーニングが推奨される年代(結腸直腸検査では50歳以上、マンモグラフィーでは40歳以上)の対象者におけるリスクと同等であった。このことから、早期に定期的スクリーニングを受けることがHL生存者にとって有益であると示唆される。

本試験の執筆者の1人であるNCI DCEGのEthel Gilbert医師は次のように述べている。「これは、ホジキンリンパ腫診断時の特定の年齢に対する固形癌の性別累積的リスクを定量した初めての試験である。現在の生存者に対しては、2次癌の罹患率および死亡率を減少させるためのインターベンションを検討する必要がある。」

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斉藤 芳子 訳

榎本 裕 (泌尿器科) 監修 

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