シクロホスファミド療法は、幹細胞移植後のGVHDの予防に新たな標準療法

ジョンズホプキンス大学

同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)を予防する新たな標準療法が第3相試験の結果から得られ、6月22日付けNew England Journal of Medicine誌で公表された。新たな標準療法は、現在の標準療法と比較して、GVHD予防効果が高く、副作用も少なかった。

本研究の主著者である、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター腫瘍学教授Javier Bolaños-Meade医学博士は、「新たな標準療法では移植の毒性を抑えることができます」と言う。

同種骨髄移植において、健康な幹細胞は、患者の血縁者(一卵性双生児以外)の骨髄、あるいは患者と遺伝的に類似した非血縁ドナーの骨髄から採取される。しかし、骨髄移植は、生命を脅かす深刻な合併症であるGVHDを引き起こす可能性がある。骨髄移植の分野では、ドナーの免疫系がレシピエントの組織に反応して起こるGVHDの発生率を下げようと、数十年前から研究が行われている。患者の免疫系が移植臓器だけを拒絶しようとする臓器移植とは対照的に、GVHDでは、移植された新たな免疫系が患者全体とすべての臓器を攻撃する可能性がある。

「ホプキンス大学では、現状よりも効果的にGVHDを抑えるため方法を研究してきました」とBolaños-Meade氏は言う。「1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ホプキンスでは、移植後のシクロホスファミドをベースとした高用量療法の役割を研究してきました」。

白血病・リンパ腫・骨髄腫などの血液腫瘍患者における幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)の標準的予防法

骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)予防を目的とした現在の標準療法は、タクロリムスやシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害剤とメトトレキサートの2剤併用である。今回、複数施設で行なわれた第3相試験では、このGVHD予防標準療法を、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルの3剤からなる試験的レジメンと比較検証した。患者を募集し、いずれかの群にランダムに割り付けた。被験者募集とランダム化はCOVID-19のパンデミック中に行われたにもかかわらず、試験は予定より早く完了した。患者431人が 全米37施設から登録された。患者に対して、血縁者の場合はHLA型が合致するドナーを選び、血縁者でない場合はHLA型が合致しなければならないが、抗原の不一致が1つあってもよいこととした。全患者の登録に2年を要し(2019年6月から2021年6月)、患者に対して1年以上追跡調査を行った。

グレード3、4の急性GVHDも、免疫抑制を必要とする慢性GVHDもなく、腫瘍の再発や進行がなく生存している患者を、主要評価項目達成とみなした。1年後に主要評価項目を達成する確率は、シクロホスファミド投与群では52.7%であったのに対し、メトトレキサート+タクロリムス投与群では34.9%であった。

Bolaños-Meade氏は次のように述べている。「シクロホスファミド投与群では、グレード3、4の急性GVHDや、免疫抑制が必要な慢性GVHDがなく、疾患の再発や進行もなく生存している患者が半数以上いたのに対して、メトトレキサート+タクロリムス投与群では3分の1でした。一連の副次評価項目では、重症急性GVHDの減少、慢性GVHDの減少がみられました。非常に重要なことは、GVHDコントロールがよいほど疾患再発が増加するという従来の再発増加傾向がみられなかったことです。今回のケースでは、GVHDのコントロールが良くなっても、再発は増えていません」。

今回の研究者らは、1980年代以来初めて、移植片対宿主病(GVHD)重症例を予防する、より効果的な薬物療法を確認でき、それは新たな標準治療となると述べている。「これは重要なことです。なぜなら、メトトレキサートとタクロリムスは毒性が大変強いからです。これで高齢者にも移植ができるようになります。実際、今回の試験の年齢中央値は66歳でした」とBolaños-Meade氏は言う。

本研究は、米国国立心肺血液研究所および米国国立がん研究所から、血液・骨髄移植臨床試験ネットワークに対する助成金(#U10HL069294および#U24HL138660)による援助を受けた。

本研究に貢献した他の研究者一覧は原文参照。

  • 監訳 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/06/22

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