FDAが再発または難治性多発性骨髄腫にteclistamabを承認

2022年10月25日、米国食品医薬品局は、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、抗CD38モノクローナル抗体を含む4ライン以上の治療を過去に受けたことがある再発または難治性多発性骨髄腫の成人患者に対し、初の二重特異性T細胞誘導抗体(BCMA: bispecific B-cell maturation antigen)指向性CD3 T細胞エンゲージャーであるteclistamab-cqyv [テクリスタマブ](販売名:Tecvayli [テクベイリ]、Janssen Biotech, Inc. 社)を迅速承認した。

Teclistamabは、MajesTEC-1試験(NCT03145181; NCT04557098)において、単群、複数コホート、非盲検、多施設共同試験で評価された。有効性の対象集団は、プロテアソーム阻害剤、免疫調整剤、抗CD38モノクローナル抗体を含む3ライン以上の治療を過去に受けたことがあり、BCMAを標的とした治療を受けたことがない患者110人だった。

有効性の主要評価項目は、国際骨髄腫ワーキンググループ2016年版基準を用いた独立審査委員会評価による奏功率(ORR)であった。ORRは61.8%(95%CI:52.1、70.9)であった。奏効者の追跡期間中央値は7.4カ月で、推定奏効期間(DOR)率は6カ月時点で90.6%(95%CI:80.3、95.7%)、9カ月時点で66.5%(95%CI:38.8、83.9%)であった。

Teclistamabの処方情報には、生命を脅かすまたは致命的なサイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性(ICANS)を含む神経学的毒性に関する枠組み警告が記載されている。Teclistamabを推奨用量で投与された患者のうち、CRSは72%に、神経毒性は57%に、ICANSは6%に発現した。グレード3のCRSは0.6%に、グレード3または4の神経学的毒性は2.4%に発現した。

ICANSを含むCRSと神経毒性のリスクがあるため、teclistamabはTecvayli REMSと呼ばれるリスク評価・軽減戦略(REMS)の下、制限付きプログラムを通じてのみ入手可能である。

安全性解析対象集団165人に特に多く見られた有害事象(20%以上)は、発熱、CRS、筋骨格痛、注射部位反応、疲労、上気道感染、悪心、頭痛、肺炎、および下痢であった。グレード3~4の臨床検査値異常(20%以上)の主なものは、リンパ球数減少、好中球数減少、白血球数減少、ヘモグロビン数減少 (貧血)、血小板数減少であった。

Teclistamabの推奨用量は、1日目に0.06 mg/kg、4日目に0.3 mg/kg、7日目に1.5 mg/kgを皮下投与し、その後、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで1週間毎に1.5 mg/kgを皮下投与する。

Tecvayli の全処方情報はこちらを参照。

監訳:佐々木 裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

翻訳担当者 滝坂 美咲

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...
多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果の画像

多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象とした大規模ランダム化臨床試験で、標準治療レジメンにダラツムマブ(販売名:ダラキューロ配合皮下注)を...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少の画像

【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験で脾臓縮小患者数が約2倍に希少な骨髄がんである骨髄線維症の中リスクまたは高リスクの成人患者に対して、JAK阻害剤ルキ...