カルフィルゾミブの週1回投与は再発/難治性多発性骨髄腫に有望

ARROW試験のレジメンで、週1回カルフィルゾミブを投与する治療を受けた再発または難治性多発性骨髄腫の患者は、週2回投与の治療を受けた患者よりも奏効率が高く、患者にとってより簡便な投与方法となる見込みである。

スペインにあるサラマンカ大学病院のMaría-Victoria Mateos医学博士は、6月1日の口頭アブストラクトセッション「血液学的悪性疾患―形質細胞疾患」(アブストラクト8000)において第3相臨床試験の結果を発表した。本試験の結果によると、週1回レジメンは週2回レジメンと比較して無増悪生存期間が3.6カ月改善し、増悪または死亡のリスクが30.7%低下した。

「週2回のスケジュールと比較して、週1回のカルフィルゾミブ投与ではより簡便な投与レジメンによる望ましいベネフィット(便益)・リスクプロファイルを示しました」とMateos医師はセッションの中で述べた。

第1/2相CHAMPION-1試験1では、患者にとってより簡便な治療レジメンを探し出す取り組みとして、週1回のカルフィルゾミブ+デキサメタゾン投与をすでに評価しているとMateos医師は述べた。CHAMPION-1試験では、カルフィルゾミブの最大耐量を70 mg/m2と確定した。CHAMPION-1試験の有望な結果に基づき研究者らが開始したARROW試験では、再発/難治性多発性骨髄腫に対して、カルフィルゾミブ70 mg/m2+デキサメタゾンを週1回併用投与するレジメンと、カルフィルゾミブ27 mg/m2+デキサメタゾンを週2回併用投与するレジメンを比較した。

この2群比較ARROW試験は約100カ所で実施された国際的臨床試験であり、過去に2~3種類の治療を受け、プロテアソーム阻害薬および免疫調節薬の投与を受けたことがある患者478人が登録された。患者は、疾患の増悪または許容できない毒性が生じるまで28日サイクルでカルフィルゾミブ+デキサメタゾンを週1回投与される群または週2回投与される群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。

週1回投与群に対して、カルフィルゾミブ(30分の点滴)を全サイクルの1日目、8日目および15日目に投与した。投与量は、初回サイクルの1日目は20 mg/m2、それ以降は各回70 mg/m2とした。週2回投与群に対しては、カルフィルゾミブ(10分の点滴)を全サイクルの1日目、2日目、8日目、9日目、15日目および16日目に投与した。投与量は、初回サイクルの1日目および2日目は20 mg/m2、それ以降は各回27 mg/m2とした。患者全員が全サイクルの1日目、8日目および15日目にデキサメタゾン40 mgの投与を受けた。患者全員が、第1~9サイクルのみ22日目にデキサメタゾン40 mgの投与も受けた。

主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、週1回投与群で11.2カ月であったのに対し、週2回投与群で7.6カ月であった(HR 0.693, 95% CI [0.544, 0.883], p = 0.0029)。副次的評価項目である全奏効率は、週1回投与群で62.9%であったのに対し、週2回投与群で40.8%であった(p < 0.0001)。完全奏効または改善は、週1回投与群で7.1%であったのに対し、週2回投与群で1.7%であった。週1回投与群の患者では、27.1%が非常に良好な部分奏効であったのに対し、週2回投与群の患者では11.8%であった。

週1回投与群の治療期間中央値はカルフィルゾミブで38週間、デキサメタゾンで37.1週間であった。週2回投与群の治療期間中央値は、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンのいずれも29.1週間であった。

Mateos医師が言うには、安全性の知見が「カルフィルゾミブの既知の安全性プロファイルと一致」しており、「新たなリスクは認められなかった」とのことであった。グレード3以上の有害事象の割合は、週1回投与群で67.6%であったのに対し、週2回投与群で61.7%であった。治療に関連したグレード5の有害事象の割合は、週1回投与群が2.1%であったのに対し、週2回投与群で0.9%であった。

討論参加者であるマサチューセッツ総合病院のNoopur S. Raje医師は、ARROW試験の結果が、カルフィルゾミブ投与のより簡便な方法の有無や、カルフィルゾミブが用量反応を示すか否かなど、今後の試験における重要な検討課題を示していると述べた。Raje医師は、「これはカルフィルゾミブによる治療を進展させる新たな基準となるでしょうか」と思案した。

–Kathy Holliman, MEd

参考文献:
1. Berenson JR, et al. Blood. 2016;127:3360-8.

翻訳担当者 太田奈津美

監修 野﨑健司(血液・腫瘍内科/大阪大学大学院医学系研究科 )

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