FDAが多発性骨髄腫患者に対するカルフィルゾミブの適応拡大を承認

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

NCI 職員編集

2015年7月24日、米国食品医薬品局(FDA)は前治療歴が1つ以上ある再発多発性骨髄腫患者の治療薬として、レナリドミド+デキサメタゾンとの併用で、carfilzomib[カルフィルゾミブ](商品名:Kyprolis[カイプロリス])を承認した。

2012年、FDAはボルテゾミブや免疫調節薬(例.レナリドミド、サリドマイド)を含む前治療を2つ以上受けた後に進行した多発性骨髄腫患者に対してのみ、FDAの迅速承認プログラムによりカルフィルゾミブを初めて承認した。

「多発性骨髄腫はほとんど高頻度で再発します。一部の患者では初回治療後に寛解持続期間が長期にわたりましたが、現在のところ治癒可能な患者はほとんどいません」とMark Roschewski医師(NCI癌研究センター悪性リンパ腫部門)は説明した。

再発は、一部のがん細胞が治療に抵抗し、長期にわたり生存する能力と関連するのは明らかであるとRoschewski氏は続けた。「したがって、寛解は治癒とは異なります」。

この最新の承認は大規模ランダム化臨床試験結果に基づいた。この試験から、カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン投与患者では、レナリドミド+デキサメタゾン投与患者と比較して、無増悪生存期間が延長することが示された(23.6カ月対17.6カ月)。

カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン投与患者に最も高頻度で生じた一般的な副作用は、倦怠感、汎血球減少症、血小板減少症、下痢、および発熱であった。

「カルフィルゾミブの承認により、再発多発性骨髄腫患者に対する3剤併用療法の重要性が強調されます」とRoschewski氏は述べた。

「こうした症例では、3剤併用療法が、より深くかつ長期にわたる寛解が得られることを示しています」とRoschewski氏は言い添えた。「この3剤併用療法が今後治療効果改善を検証するための臨床試験をデザインする際の重要な基準となるでしょう」。

【図中語句訳】
Multiple Myeloma 多発性骨髄腫
Red marrow where plasma cells are made 赤色骨髄;形質細胞が作られる
Bone 骨
Normal plasma cells 正常形質細胞
Antibodies 抗体
Multiple Myeloma cells (abnormal plasma cells) 多発性骨髄腫細胞(異常形質細胞)

【図の説明】多発性骨髄腫細胞は骨髄内で増殖する異常形質細胞で、人体の多くの骨の中に腫瘍を形成する。
解説: Terese Winslow

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 北尾 章人(腫瘍、血液内科/神戸大学大学院医学研究科)

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