多発性骨髄腫患者のレナリドミド維持療法、第3相臨床試験で有用性を裏づけ

キャンサーコンサルタンツ

Alliance for Clinical Trials in Oncologyが指揮する大規模共同グループ臨床試験で、レナリドミドは多発性骨髄腫患者の無増悪期間を延長させる薬剤であり、希少であるが増加傾向にある造血器腫瘍である多発性骨髄腫の患者にとって重要な治療選択肢になるという従前のエビデンスが確認された。現在進行中の本臨床試験はロズウェルパークがん研究所(Roswell Park Cancer Institute :RPCI)在籍のPhilip McCarthy医師およびSarah Holstein医学博士が率いており、その最新結果はシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)第51回年次総会のポスターセッションで注目を集めるであろう。

今回のランダム化第3相臨床試験では、初発多発性骨髄腫と診断された患者の自家造血幹細胞移植後のレナリドミド(レブラミド)剤による維持あるいは継続療法を比較している。試験参加者461人(全員70歳以下)は、レナリドミド投与群かプラセボ投与群に無作為割り付けを行う前に、移植後100日目の病態が安定、または抑制状態にあることが確認された。レナリドミド投与患者で二次性悪性腫瘍の発現率が上昇したが、研究者らは本剤の維持療法が患者に著しい有効性を示すことを発見した。

「試験結果は、レナリドミド維持療法が無増悪期間と全生存期間の両方を有意に改善することを示し、このような有用性は、ランダム化時点で完全寛解に入っているか否か、導入療法時のサリドマイド剤やレナリドミド剤投与の既往の有無に関係しない」と、試験の筆頭発表著者でロズウェルパーク内科腫瘍学助教Holstein医師は述べている。

無増悪期間の推定中央値はプラセボ群で27カ月、レナリドミド群では約2倍の53カ月であった。追跡期間65カ月後の全生存期間中央値について、レナリドミド投与群では中央値にまだ達していないが、プラセボ投与群では76カ月である。レナリドミド投与群のうち二次性悪性腫瘍を認めたのは25人であったのに対して、プラセボ群では10人であった。試験は追跡期間中央値18カ月時に治療内容が明かされ、病勢増悪がないプラセボ群患者86人はレナリドミド投与群への転向を選択した。

「われわれの発見は、この治療アプローチが多発性骨髄腫患者の病勢増悪を抑制し、患者の転帰を改善することができる有力なエビデンスとなる」と、本試験統括著者、ロズウェルパーク造血細胞・骨髄移植プログラム・ディレクター、腫瘍学教授であるMcCarthy医師は言及する。

今回の試験「CALGB/ECOG/BMT CTN 100104の最新分析結果:多発性骨髄腫(MM)の単独自家造血幹細胞移植(ASCT)後の維持療法、Lenalidomide (Len) 対プラセボ (PBO)の検討」(アブストラクト8523)は、5月31日(日曜日)8 :00~ 11:30am、ポスターセッション「リンパ腫と形質細胞疾患」において、演題340番としてマコーミックプレイスS Hall Aにて発表される。当日後半4:30~5:45pmにはポスターセッションでも取り上げられる(マコーミックプレイスE354b)。

米国国立衛生研究所(NIH)および米国国立がん研究所(NCI)の助成金で支援される本研究(プロジェクト番号U10CA180821、U10CA180882、 U01HL069294、U10CA21115、 U10CA031946 、 U10CA33601)は、三つの血液研究機関CALGB/The Alliance for Clinical Trials in Oncology、Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG)、Bone Marrow Transplant Clinical Trials Network (BMT-CTN)による共同研究である。

ASCOは 1964年に設立され、がん患者のケアに携わる医師で構成される世界トップクラスの専門家組織である。

ASCO2015は、イリノイ州シカゴ、マコーミックプレイスにて5月29日から6月2日まで開催され、世界中のがん専門医約30,000人が集結した。

ロズウェルパークがん研究所(RPCI)の使命は、がんの理解と予防、そして治療である。

1898年に設立されたRPCIは、米国国立がん研究所が最初に総合がんセンターに指定したがんセンターの一つであり、ニューヨーク州北部ではこの指定を受ける唯一の研究機関である。

同研究所は、米国の主要がんセンター同盟として有名な全米総合がんセンターネットワークに加盟しており、関連サイトを維持管理し、国内外の共同プログラムに参加している。

出典:ロズウェルパークがん研究所


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 岐部幸子

監修 北尾章人 (総合内科、腫瘍内科/公立豊岡病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...
多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果の画像

多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象とした大規模ランダム化臨床試験で、標準治療レジメンにダラツムマブ(販売名:ダラキューロ配合皮下注)を...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少の画像

【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験で脾臓縮小患者数が約2倍に希少な骨髄がんである骨髄線維症の中リスクまたは高リスクの成人患者に対して、JAK阻害剤ルキ...