新たに診断された多発性骨髄腫患者への経口投与治験薬ixazomib併用の有望性

キャンサーコンサルタンツ

メイヨークリニックの試験結果

経口投与が可能な治験薬であるixazomibは、レナリドミド(レブラミド)+デキサメタゾンとの併用によって、新たに診断された多発性骨髄腫患者の治療に有望であるとの研究結果がLancet Oncology誌に掲載された。

多発性骨髄腫は形質細胞のがんである。形質細胞は、身体の免疫システムの一部である白血球の特別な型である。形質細胞は通常、骨髄内に存在し、抗体と呼ばれる蛋白質を作り出す。この抗体は血中を循環し、特定の種類の感染症を防ぐ。また形質細胞は、骨の破壊を促す破骨細胞活性化因子と呼ばれるホルモンを分泌することにより、骨の維持に関与している。多発性骨髄腫の患者では、血液や尿中で検出可能な免疫機能上、役に立たない抗体を産生する異常形質細胞数が増加している。この異常抗体はパラプロテインまたはモノクローナル蛋白質、血液中ではM蛋白、尿中ではベンス・ジョーンズ蛋白と呼ばれる。

ボルテゾミブ(ベルケイド)は、プロテアソーム阻害剤と呼ばれる新種の抗がん剤として、多発性骨髄腫治療用に認可を受けた最初の薬剤で、初期治療における標準治療薬剤の一部となっている。ボルテゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンは新たに診断された多発性骨髄腫患者にきわめて効果的な治療法である。Ixazomibもまた試験研究中の経口投与プロテアソーム阻害剤であり、多発性骨髄腫に対する治療効果が有望で、末梢神経障害の発症率は低い。ボルテゾミブの代わりにixazomibを用いることで、経口投与剤療法の種類が増え、患者の利便性が改善されることになる。

今回の研究は、新たに多発性骨髄腫と診断された患者に対して、レナリドミド、デキサメタゾンと併用した場合のixazomibの安全性、忍容性および活性を調べることを目的として実施された。メイヨークリニックの医師らは、2010年11月から2012年2月までに、65人の患者を対象として経口投与療法を評価する臨床試験を行った。この治療法の忍容性は概して良好で、患者の92%において、少なくとも部分的には抗腫瘍効果を示した。

すべて経口薬での併用結果は、今回の経口薬併用と注射薬による併用を、多発性骨髄腫を対象に直接比較する臨床試験への展開を支持するものである。

参考文献:Kumar S, Berdeja J, Niewsvizky R, et al. Safety and tolerability of ixazomib, an oral proteasome inhibitor, in combination with lenalidomide and dexamethasone in patients with previously untreated multiple myeloma: an open-label phase 1/2 study. The Lancet Oncology, Volume 15, Issue 13, Pages 1503 – 1512. December 2014.


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翻訳担当者 大木勝弥

監修 佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)

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