【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少

MDアンダーソンがんセンター

MDアンダーソン主導の第3相試験で脾臓縮小患者数が約2倍に

希少な骨髄がんである骨髄線維症の中リスクまたは高リスクの成人患者に対して、JAK阻害剤ルキソリチニブ(商標名:ジャカビ)とBCL-xL阻害剤navitoclax[ナビトクラックス]の併用療法は、標準治療のルキソリチニブ単剤療法と比較して、臨床的改善の主要指標である脾臓腫大の縮小を達成した患者数が約2倍にのぼることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによって報告された第3相TRANSFORMー1試験の結果によって明らかとなった。

国際共同ランダム化プラセボ対照臨床試験のデータは、本日、2023年米国血液学会(ASH)年次総会において、白血病科の教授であるNaveen Pemmaraju医師により発表された。データ締め切り時点で、ルキソリチニブとプラセボを投与された患者では31.5%の達成率であったのに対し、ルキソリチニブとナビトクラックスを投与された患者では63.2%が24週間以内に少なくとも35%の脾臓容積減少を果たし、本試験の主要評価項目を達成した。

「承認された治療法に他の薬剤を追加することで、現在の標準治療と比較して脾臓容積の減少を改善することができました。このことは、新規薬剤併用の臨床的有用性の重要な評価となります。なぜなら、脾臓が肥大したままでは、治療効果が低下する可能性があるからです」とPemmaraju氏は述べた。「もし、骨髄線維症の治療を病気の経過の早い段階で行うことができれば、全体的な病気の変化に影響を与え、患者の予後を改善し、症状の負担を軽減する機会が得られるかもしれません」。

現在、骨髄線維症の治療薬として米国食品医薬品局から承認されている薬剤はほとんどない。利用可能な選択肢は患者に脾臓の状態と症状に関して改善をもたらすが、依然として、持続的な脾臓サイズの縮小や他の長期的な臨床効果をもたらす治療法の開発が切望されている。同種幹細胞移植は有効な治療法であるが、すべての患者に適応するわけではない。

この国際共同試験には、JAK阻害剤による治療歴のない、中リスクまたは高リスクの骨髄線維症で測定可能な脾腫を有する患者252人を登録した。この試験では、125人の患者をナビトクラックス+ルキソリチニブの併用療法を受ける群に、127人の患者をルキソリチニブ+プラセボの併用療法を受ける群に無作為に割り付けた。患者の多くは男性で(57%)、年齢中央値は69歳であった。

本試験は、24週時点で主要評価項目である脾臓容積減少を達成した。時期を問わず、脾臓容積減少を達成した患者は、併用群で77%、対照群で42%であった。最初の脾臓容積減少反応までの期間中央値は、併用療法で12.3週、単剤療法で12.4週であった。24週時点で、本試験の副次評価項目である骨髄増殖性腫瘍の症状評価において、両群間に有意差は認められなかった。

併用療法を受けた患者には、管理しやすく過去の試験と一致した副作用が起こった。特に多く見られた治療関連の副作用は、血小板減少症、貧血、下痢、好中球減少症であった。重篤な有害事象は、併用群で26%、対照群で32%の患者が経験した。

「本試験は、骨髄線維症の領域において、最初に報告された国際共同ランダム化フロントライン併用療法の第3相臨床試験の1つとして、特筆すべき成果をもたらしました」とPemmaraju氏は語る。「本データセットは、骨髄線維症を治療するための併用療法に関する付加的な研究と調査への扉を開くものであり、なにより、患者のために病気の変容を調査する新時代の到来を象徴しているものです。TRANSFORMー1試験からの追加データは、現在評価中です」。

本試験は、AbbVie社から資金提供を受け、Pemmaraju氏は、AbbVie社から研究支援を受けている。共著者の全リストおよび開示情報はこちらを参照。

  • 監訳 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
  • 翻訳担当者 山口みどり
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  • 原文掲載日 2023/12/10

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