FDAが多発性骨髄腫にエラナタマブを迅速承認

米国食品医薬品局(FDA)

2023 年 8 月 14 日、米国食品医薬品局(FDA)は、プロテアソーム阻害剤、免疫調整剤、および抗 CD38 モノクローナル抗体を含む4 ライン以上の治療歴のある再発/難治性多発性骨髄腫の成人患者を対象に、二重特異性 B 細胞成熟抗原(BCMA)指向性 CD3 T 細胞エンゲージャー(訳注:疾患の原因となっている細胞にCD3T細胞などの免疫細胞を近づけて疾患の原因を取り除く医薬品)である エラナタマブ[elranatamab-bcmm](商品名:Elrexfio、ファイザー社)を迅速承認した。

有効性は、非盲検単群多施設共同試験である MagnetisMM-3(NCT04649359) で評価され、プロテアソーム阻害剤、免疫調整剤、抗 CD38 抗体のいずれの薬剤に対しても1剤以上不応の再発/難治性多発性骨髄腫患者が組入れられた。患者は登録時に国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)基準による測定可能な病変を有していた。

主要評価項目は客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)であり、IMWG 基準に基づき盲検化された独立中央評価委員会が評価した。主要有効性集団は、BCMAによる前治療歴がなく、プロテアソーム阻害剤、免疫調整剤、抗CD38モノクローナル抗体を含む治療歴が4ライン以上ある患者97人であった。推奨用量を投与された97例のORRは57.7%(95%信頼区間(CI):47.3%、67.7%)であった。奏効例の追跡期間中央値は11.1カ月で、DOR中央値には到達しなかった(95%CI:12カ月、到達せず)。6カ月後のDOR率は90.4%(95%CI:78.4%、95.9%)、9カ月後のDOR率は82.3%(95%CI:67.1%、90.9%)であった。

エラナタマブの添付文書には枠囲み警告として、生命を脅かすまたは死亡の恐れがあるサイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性(ICANS)を含む神経毒性が含まれる。推奨用量のエラナタマブを投与された患者のうち、CRSは58%に、神経学的毒性は59%に、ICANSは3.3%に発現した。グレード3のCRSは患者の0.5%に、グレード3または4の神経毒性は7%に発現した。

CRSおよびICANSを含む神経毒性のリスクがあるため、エラナタマブはELREXFIO REMSと呼ばれるREMS(Risk Evaluation and Mitigation Strategy:リスク評価・軽減戦略)の下、制限されたプログラムを通じてのみ入手可能である。

特に多くみられた有害事象(20%以上)は、CRS、疲労、注射部位反応、下痢、上気道感染、筋骨格痛、肺炎、食欲低下、発疹、咳、悪心、発熱であった。特に多くみられたグレード3~4の臨床検査値異常(20%以上)は、リンパ球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少、白血球減少、血小板減少であった。

エラナタマブの推奨用量は以下の通りである: 「ステップアップ用量1」として1日目に12 mg、「ステップアップ用量2」として4日目に32 mg、その後8日目に76 mgを初回投与し、その後24週目まで毎週76 mgを投与する。エラナタマブを24週間以上投与され、部分奏効以上を達成し、2カ月間以上奏効を維持した患者については、投与間隔を2週間ごとのスケジュールに移行する。エラナタマブは疾患進行または許容できない毒性が認められるまで継続投与できる。

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  • 監訳  吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫兵庫医科大学)
  • 翻訳担当者 後藤 若菜
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  • 原文掲載日 2023/08/14

 

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