CAR-T細胞療法薬はレナリドミド不応の多発性骨髄腫の進行リスクを74%下げる

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)

ASCOの見解

「レナリドミド(販売名:レブラミド)は骨髄腫患者の治療の基礎となっていますが、広く使用されるにつれ、治療効果が得られなくなる患者も増えていきます。Ciltacabtagene autoleucelシルタカブタジン オートルーセル](販売名:CARVYKTI)は、骨髄腫患者の現在の選択肢よりも極めて有効な結果が得られただけでなく、早期の治療段階で安全に使用できることも示されました」。
-Oreofe Odejide医師(ASCO)

B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬である、シルタカブタジン オートルーセルは、標準治療に比べて、レナリドミドによる治療効果が得られない患者の多発性骨髄腫の進行を顕著に遅らせたり抑制することが認められた。本試験は、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表された。

試験要旨

目的レナリドミドによる治療に反応しない多発性骨髄腫
対象者レナリドミドによる治療効果が得られない多発性骨髄腫患者419人
結果・シルタカブタジン オートルーセルは、疾患進行リスクを74%低下させた(HR = 0.26;P < 0.0001)。

・有効性の高い現在の標準治療レジメンに割り付けられた患者と比較し、シルタカブタジン オートルーセル群の患者は、客観的奏効率(ORR:85%対67%)、完全奏効率(73%対22%)、および微小残存病変陰性率(MRD:61%対16%)のすべての割合が有意に改善した。また、全生存率(HR 0.78、95%CI、0.5-1.2)についても改善の傾向が認められた。
重要性これらの結果により、現在承認されている4ライン以上の治療に加え、初回再発の早い段階でレナリドミドに難治性である(治療効果が得られない)場合、シルタカブタジン オートルーセルの使用が支持された。

主要な知見

国際共同第3相臨床試験であるCARTITUDE-4には、レナリドミドを含む1~3ラインの治療を既に受け、効果が得られなくなった多発性骨髄腫患者419人が参加した。シルタカブタジン オートルーセル群に208人、標準治療群に211人が登録され、ボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)+ポマリドミド(販売名:ポマリスト)+デキサメタゾン併用療法、またはダラツムマブ(販売名:ダラザレックス)+ポマリドミド+デキサメタゾン併用療法が行われた。

シルタカブタジン オートルーセルは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬である。CAR-T細胞療法では、患者の血液から一部のT細胞を取り出し、実験室で改変されて受容体と呼ばれる特定のタンパク質を有することとなる。改変されたT細胞は、この受容体によってがん細胞を認識することができる。患者の体内に戻された改変T細胞は、がん細胞を探し出して破壊する。

中央値16カ月の追跡調査の結果、シルタカブタジン オートルーセルは、標準治療と比較して疾患進行のリスクを74%低下させることが判明した。また、客観的奏効率(治療が奏効したがん患者の割合)は、シルタカブタジン オートルーセル投与群では84.6%であったのに対し、標準治療投与群では67.3%であった。微小残存病変陰性率については、標準治療群(15.6%)と比較してCAR-T細胞療法(シルタカブタジン オートルーセル)群(60.6%)は良好であった。微小残存病変陰性率は、治療後に検査でがん細胞の残存が認められなかった患者の割合を示す。

本試験代表者であるBinod Dhakal,医師(ウィスコンシン医科大学)は、次のように述べている。「レナリドミドを用いた治療は、若年層から高齢者まで、移植が受けられる人も受けられない人も、初回治療として幅広く使用されています。これにより、疾患の初期にレナリドミドによる治療効果が得られなくなるケースが増加します。今回の試験結果により、レナリドミド難治性多発性骨髄腫患者において、初回再発後の早期段階でシルタカブタジンオートロイセルは非常に有効であることが示されました」。

大半の参加者において(シルタカブタジン オートルーセル投与群97%、標準治療群94%)、感染症(27%対25%)、好中球減少、血小板減少、貧血などの血球数低下(94%対86%)などのグレード3または4の有害事象がみられた。サイトカイン放出症候群は、治療によって免疫細胞がオーバードライブになることで生じる可能性があり、シルタカブタジン オートルーセル投与群の76%で発症した。CAR-T細胞療法を受けた約5%が、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)を発症した。

試験について

CARTITUDE-4には、米国、欧州、アジア、豪州を含む16カ国から参加者が登録された。試験参加者の年齢は61歳前後、55%が男性で、75%が白人であった。本試験は、多発性骨髄腫の初期治療ラインにおけるCAR-T細胞療法を検討する2つしかない第3相臨床試験のうちの1つである。CARTITUDE-4は、現在、多発性骨髄腫の初回再発後にCAR-T細胞療法を用いることを検討している唯一の第3相試験である。

次のステップ

研究者らは、シルタカブタジン オートルーセルの長期的な効果を明らかにするため、試験参加者の追跡調査を継続する予定である。また、健康関連QOL、サブグループ解析、バイオマーカー解析など、データの追加解析は進行中である。研究者らは、追加の知見が得られ次第、公表することを考えている。シルタカブタジン オートルーセルは、現在進行中の他の臨床試験においても、初回治療として検討されている。

  • 監訳 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
  • 翻訳担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2023/06/05

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