白金製剤耐性となった卵巣癌に対するペルツズマブ+ジェムザールⓇとジェムザール単剤の比較

キャンサーコンサルタンツ
2009年11月

国際ランダム化試験に参加した研究者らは、pertuzumab(ペルツズマブ)が白金製剤耐性卵巣癌の治療においてジェムザールⓇ(ゲムシタビン)の活性を増強させる可能性があると報告した。本試験の詳細は、Journal of Clinical Oncology誌の2009年11月9日付早期電子版に掲載された。[1]

ステージ3、4期の大半の卵巣癌患者では、最終的に再発がみられ、難治性卵巣癌となる。そのため、卵巣癌患者に対する新規治療法を開発するとともに、難治性卵巣癌患者を対象に新薬の試験を行う必要性は大きい。ヒト上皮増殖因子受容体(HER)経路は、細胞複製の制御に関与する数種の細胞内生物学的経路の集まりである。ペルツズマブは、ハーセプチンの開発企業でもあるジェネンテック社がHER二量体化阻害薬として開発したものである。二量体化はすべてのHER受容体のシグナル伝達活性に必須とされており、ペルツズマブはこの活性化(二量体化)を阻害する。現在、二量体化が関与する癌種を対象に、複数の試験が実施されている。シダーズ・サイナイ医療センターの研究者らが実施した第1相試験では、ペルツズマブの安全量が確立し、膵島細胞癌患者1人と卵巣癌患者1人で部分奏効がみられた。先行試験では、多くの先行治療を受けた進行卵巣癌患者においてペルツズマブ単剤は活性を示すと考えられていた。

白金製剤耐性卵巣癌の患者130人を、ジェムザール単剤群とジェムザール+ペルツズマブ群のいずれかにランダムに割り付けた。ペルツズマブを併用することで、無増悪生存率が34%改善した。客観的奏効率は、ジェムザール単剤群で4.6%に対し、ジェムザールⓇ+ペルツズマブ群で13.8%となった。HER3 mRNAの発現量が少ない患者では効果の増大が認められた。

コメント:これらのデータから、ペルツズマブは卵巣癌に対して有意な活性を示し、同薬に対する反応はHER3 RNAの発現量によって予測し得ることが示唆される。

参考文献:
[1] Makhija S, Amler LC, Glenn D, et al. Clinical activity of gemcitabine plus pertuzumab in platinum-resistant ovarian cancer, fallopian tube cancer, or primary peritoneal cancer. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. November 9, 2009.


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翻訳担当者 阿部 美由紀

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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