ARID1A変異陽性卵巣がんにスタチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用を検討

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/03/29】より

前臨床卵巣がんモデルにおいて、スタチン併用療法が抗腫瘍効果を向上させる

がん抑制因子ARID 1 Aの不活性化はヒトのがんで頻繁に起こり、卵巣明細胞がんの半数以上が含まれる。これらの遺伝的に定義された腫瘍を免疫療法に対してより受容性の高いものにしようと、Rugang Zhang博士率いる研究者らは、ARID 1 Aの不活性化が、がん細胞の生存に不可欠なメバロン酸経路のスタチンによる阻害を受けやすいようにすることを示した。メバロン酸経路を阻害すると、炎症性の強い細胞死であるパイロトーシスが促進され、免疫細胞の浸潤が増加する。スタチンとチェックポイント阻害薬を併用すると、腫瘍の増殖が抑制され、抗腫瘍免疫が強化されたことから、この併用は、既知の薬剤を転用することでARID 1 A変異を有するがんの治療に応用できる可能性が示唆されている。詳しくはCancer Cellを参照のこと。

MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/03/29号:治療効果を予測する主なAIモデルや新規バイオマーカーに加え、唾液腺がん、骨髄がん、卵巣がんに対する新規併用療法を紹介

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、がんの治療、研究、予防における最新の飛躍的な進歩について紹介している。これらの進歩は、MDアンダーソンの世界を代表する臨床医と科学者との間での円滑な共同研究によって可能となり、実験室での発見が病院へ提供され、還元される。

最近の開発では、CAR-T細胞療法反応を予測するマイクロバイオームベースのバイオマーカー、胃がんにおける免疫療法反応の新規予測マーカー、希少な唾液腺がんに対する新しい併用療法、高リスク骨髄異形成症候群に対する有望な併用療法、卵巣腫瘍を免疫療法に反応するようにさせる併用療法、トリプルネガティブ乳がんにおけるネオアジュバント治療反応を予測する人工知能モデルなどがある。

  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 三宅久美子
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  • 原文掲載日 2023年3月29日

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