ASCO、 がん患者の妊よう性温存に関する診療ガイドラインを更新
患者の選択肢が増えたが、保険適用が依然として治療の障壁
米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、がん患者の妊よう性温存に関する臨床診療ガイドラインの更新版を発表した。ASCOは現在、医療提供者に対し、診断時のカウンセリングに加え、がん治療後のサバイバーシップケアに妊よう性温存を含めることを推奨している。また、同ガイドラインの更新では、一部の患者に対する妊よう性温存の新たな方法として、卵子の体外成熟培養(IVM)を推奨している。
ASCO会長であるRobin T. Zon医師(FACP、FASCO)は次のように語った。「今回初めて、がん医療提供者に対し、サバイバーシップケアに妊よう性温存を明確に含めることを正式に推奨します。がん治療の前後に妊よう性を温存する方法があり、患者と臨床医が治療を通して選択肢について話し合うことで、患者が十分な情報を得た上で決断し、人生の目標を達成する最善のチャンスを得られるようにしたいのです」。
ASCOは2006年にがん患者の妊よう性温存に関する臨床ガイドラインを初めて発表し、2013年と2018年に更新版を発表した。同ガイドラインには、男性と女性の両方に対する推奨が含まれていたが、がんサバイバーに対する推奨のギャップが残っていた。2025年更新版では、医療提供者が治療のどの段階においても、がん患者の生殖能力を可能な限り確実に維持できるよう、妊よう性温存の選択肢を評価し、話し合い、提供するための包括的なアプローチを提供する。
Zon医師はこう語る。「研究の進歩により、がんサバイバーの数と妊よう性温存の選択肢の数は増加しています。今回の更新版では、臨床医が妊よう性温存をがん治療全体に統合するよう推奨することにより、自らがそう認識するようになることを目的としています」。
また、2025年更新版では、がん治療前の新たな妊よう性温存の方法として、卵子の体外成熟培養(IVM)を推奨している。この変更は、2018年のガイドライン更新時点ではまだ実験的であったIVMに関する関連科学文献の包括的レビューと解析に従ったものである。
選択肢は増えたが、妊よう性温存への大きな障壁が残る
ASCOは、化学療法、放射線療法、手術などのがん治療を受けている患者にとって妊よう性温存は医学的に必要であると考えているが、このようなサービスの高額費用や医療保険における一般的な格差のために、多くの患者はこれらケアを受けることができない。このような問題は、必要な医療を受けるのに苦労している人々にとって特に深刻である。
がん治療による不妊のリスクは明らかであるにもかかわらず、保険会社は不妊治療を医学的に必要でないとみなすことが多い。12以上の州では、ASCOのガイドラインに沿った不妊治療法が制定されている。しかし、この法律はすべての患者に適用されるとは限らない。全米の中では不妊治療の保険適用方針はまとまっておらず、全体像としてはほとんどが適用外である。
「がんと診断されてもなお子供を持ちたいと願う患者は、すでに自分のケアと将来について難しい決断を迫られています。エビデンスに基づく医学的に必要なケアに立ちはだかる経済的障壁によって、これらの決断がさらに複雑になるべきではありません」と、Zon医師は語った。
『がん患者における妊よう性温存: ASCOガイドライン更新版(英語)』
エビデンス表、スライド、臨床ツールおよびリソース、患者情報などの補足情報は、www.asco.org/survivorship-guidelinesを参照のこと。
- 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
- 記事担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2025/03/20
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