遺伝子検査Oncotype DXは侵襲性前立腺癌リスク予測に有用

キャンサーコンサルタンツ

独立した3つの研究の結果によると、17遺伝子Oncotype DX遺伝子前立腺スコア(GPS)は、診断時における前立腺癌の侵襲性予測に役立つため、医師は適切な治療を選択しやすくなると思われる。この研究結果はEuropean Urologyに掲載された。

積極的治療が治療延期よりも生存期間を延長させるという明確なエビデンスはまだないため、早期前立腺癌の治療法については意見が分かれる。さらに、治療は勃起不全や尿失禁などの持続する副作用を伴うことがある。監視療法または待機療法と呼ばれる、より保存的なアプローチ(症状が現れたり、増悪の徴候がみられたりするまで治療を延期する方法)を選ぶ患者もいる。このアプローチにより、不要な治療や持続する可能性のある副作用を避けることができる場合もある。しかし、侵襲性が高く治療が必要な癌であるかどうか、あるいは、進行が遅く治療が必要になるまで監視療法を適用可能な癌であるかどうかの予測は、これまで不可能とされていた。

Oncotype DX前立腺癌検査は、4つの生物学的経路における17の遺伝子の発現レベルを測定して、前立腺癌の侵襲性を予測する。検査結果として示されるスコアGPS0100)を他の臨床的因子と組み合わせて、男性のリスクを治療介入前に明確に評価する。

研究者らは、Oncotype DXによって前立腺癌の侵襲性を明確に予測できるか、さらに、患者にとって速やかな治療あるいは治療の延期のいずれが有益であるかを確実に予測できるかどうかを検証するために、3種類の予後処置の所見とOncotype DXに基づく予測の比較を行った。総計732人の患者の遺伝子を研究対象とした。

上記の予後処置とは以下の3種類である。

・前立腺摘除(前立腺の除去)
生検
・低リスクから中間リスクであり、監視療法を指示された患者から事前に採取してあった針生検の検証

3つの研究において、臨床的再発、前立腺癌による死亡、あるいは、前立腺の除去および検査後の侵襲性癌の発見(悪性病理所見)が認められた場合に、該当の前立腺癌を「侵襲性」であるとみなした。

Oncotype DX GPSに基づく予測と3種類の予後処置の結果とを比較した研究者らは、Oncotype DXは再発を含む侵襲性疾患の予測に有用であることを見出した。具体的には、解析の対象とした患者732人の遺伝子のうち288人の遺伝子(約40%)で再発が確実に予測され、732人のうち198人(約27%)で侵襲性疾患が確実に予測された。

上記の結果から、Oncotype DXは診断時における前立腺癌の侵襲性予測に有用であると思われる。より確実な見通しにより、医師はより良い治療を選択できるようになるであろう。すなわち、侵襲性疾患のリスクの高い患者は速やかな治療を選択でき、リスクの低い患者は治療の延期を選択して、不要かもしれない治療介入による副作用を避けることができる。

参考文献

Klein EA, Cooperberg MR, Magi-Galluzzi C, et al. A 17-gene Assay to Predict Prostate Cancer Aggressiveness in the Context of Gleason Grade Heterogeneity, Tumor Multifocality, and Biopsy Undersampling. European Urology [early online publication]. May 16, 2014.

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翻訳担当者 木下秀文

監修 辻村信一 (獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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