運動が前立腺がん治療に起因する性機能障害を改善する可能性が豪州の研究で示唆

運動が前立腺がん治療に起因する性機能障害を改善する可能性が豪州の研究で示唆

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解

「運動は前立腺がん治療の副作用の一部を改善することが、以前から示されています。今回のデータは、前立腺がん患者に対する運動の有益性を性機能障害にも拡大するものであり、これらの患者における身体活動の重要性をさらに高めるものです」とASCOの専門家であるPeter Paul Yu医学博士(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べた。

筋力トレーニングと有酸素運動の併用が、前立腺がん患者の性機能を改善する可能性があることが、オーストラリアで実施された新しい試験で示された。この試験は、8月3日から5日まで横浜で開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)Breakthrough会議で発表された。

試験について

「性機能障害は、前立腺がん治療によくみられ、苦痛を伴う持続的な副作用です。前立腺がん患者の半数近くが、性的健康のケアに関して未だ満たされていない需要があると報告しており、前立腺がん治療後の性機能障害管理に対する需要に適切に対応する医療サービスが、現在提供されていないことを強調しています。本試験は、これらの患者が性的健康を改善するために、管理下での運動介入が即時に有益であること、運動が前立腺がん治療に不可欠なものと考えるべきであることを示しています」と、本研究の筆頭著者であり、オーストラリア、パースにあるエディスコーワン大学運動医学研究所のDaniel Galvao博士は述べた。

この3群間試験では、112人の患者を6ヵ月間の管理下集団ベースの筋力トレーニングと有酸素運動(39人)、同じ運動プログラムと性心理療法(36人)、または通常ケア(37人)に無作為に割り付けた。運動は週3日実施し、性心理療法は、心理的および性的健康状態に対処する、簡単な自己管理介入であった。

主な知見

勃起機能は運動で5.1ポイント、通常のケアで1ポイント増加し、性交満足度は運動で2.2ポイント、通常のケアで0.2ポイント増加した。
自己管理による性心理療法はさらなる改善をもたらさなかった。 
通常のケアと比較して、運動は体脂肪量の増加を予防し、身体機能の転帰、および上半身と下半身の筋力を改善した。

次のステップ

著者らによれば、前立腺がん患者の性的健康に対する、運動の長期的な転帰を確立するためにさらなる試験が必要とのことである。 
本試験は、オーストラリアのNational Health and Medical Research Councilから資金提供を受けた。

  • 監訳 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)
  • 翻訳担当者 藤永まり
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  • 原文掲載日 2023/07/31

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