新規診断がん患者に多く見られるがんの既往

2009年から2013年の間に新たに原発性がんと診断された患者のおよそ20%が過去に1つ以上のがんと診断されていたことが新たな研究で示された。

特定の患者の過去のがんと今回のがんがヒトパピローマウイルス感染や喫煙などの危険因子に起因している可能性を考慮すると、この罹患数の多さはがん検診およびがんサバイバーシップケアに影響を与えるとFred Hutchinson Cancer Research CenterのNancy Davidson医師は本稿の論評で述べた。

また、白血病などの二次原発性がんは、過去のがんを治療するために使用された化学療法または放射線療法に関連する可能性があり、がんサバイバーを診る臨床医はこれらの関連性を認識すべきであると、研究著者らは述べた。

本研究の筆頭著者であり、ダラスのテキサス大学南西医療センター公衆衛生学修士のCaitlin Murphy博士は、臨床試験の組み入れ基準の見直しをおこなう可能性があると話した。従来、がん既往歴を有する患者は多くの臨床試験から除外されていると同博士は述べた。

「しかし、治療の進歩により、がんサバイバーの生存期間は延び、予後も良好です。臨床試験の除外基準はその進歩に追いついていません」とMurphy博士は補足した。

がんサバイバーを臨床試験から除外することによってもたらされる懸念

テキサス大学南西医療センターの研究者らは、2009年1月から2013年12月の間に新たにがんと診断された740,990人の米国国立がん研究所(NCI)Surveillance Epidemiology and End Resultsのがん登録データを抽出した。

全体的に見て、研究者らは新たに診断された患者の18.4%にがんの既往歴があることを見出した。研究チームが年齢別に結果を分析したところ、65歳以上の患者では25.2%、また若年患者では11%にがんの既往歴がみられた。

新たに診断されたがんによっては、がん既往歴を有する患者の割合が特に高いものがあった。 例えば、新たに白血病と診断された患者のうち、65歳未満の患者の約4分の1、65歳以上の患者の約37%が別のがんの治療を受けていた。

これら数が多いを考慮すると、がん既往歴を有する患者を除外した場合、希少がん、とりわけ高齢者に罹患傾向の高いがんを対象とした臨床試験への参加を妨げる可能性がある、と研究著者らは述べた。

また、Murphy博士は、臨床試験からがん既往歴を有するすべての患者を除外すると、かねて想像していたよりも、はるかに多くの患者層に臨床試験の結果を適用することができなくなる、と述べた。

「現在、臨床試験の結果は、必ずしも人口集団全体に適用されるわけではありません」とMurphy博士は述べた。

臨床試験登録の今後

がん研究コミュニティは、臨床試験の古く制限の多い除外基準の限界を認識し始めている。その結果、研究者らは、これまで臨床試験から除外されている多くの人口集団から患者の安全性を確保しつつ、どのように組み入れるかについて検討に入ったとNCIのExperimental Therapeutics Clinical Trials Networkのプログラムディレクター、S. Percy Ivy医師は説明した。

例えば、NCIらの研究者は、HIV感染症が良好に管理されている患者(多くが高齢期まで生存)を免疫療法の臨床試験に組み入れることは安全であるかもしれないと示している。

11月、米国臨床腫瘍学会および共同研究者らは、これまで除外されていたグループに属する一部の患者が安全に臨床試験に参加できるかを検討した一連の論文を発表した。これらには、他の疾患または臓器機能不全を有する患者、がん既往歴を有する患者、および現在のがんの脳転移を有する患者が該当する。

「組み入れ基準を拡大する余地はかなりあります」とS. Percy Ivy博士は述べた。

テキサス大学南西医療センターの他の研究では、局所進行肺がん患者の生存率は、がん既往歴のある患者とない患者で有意差がないことを認めている。

現在、乳がん、結腸直腸がん、膵がん、腎がんおよび非ホジキンリンパ腫の患者について同じ調査を実施中だとMurphy博士は述べた。「がん既往歴を有する患者の臨床試験への組み入れ基準の見直し」について議論を推進することが目標だと話した。

翻訳担当者 小熊未来

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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