運動で免疫療法薬治療患者の疲労軽減、生活の質向上
ASCOの見解(引用)
「疲労は、免疫療法薬を受けている患者にとって最もよくみられる問題の1つでありながら、十分な対策が講じられていませんでした。こうした状況において、運動は効果が確認されている数少ない介入法の一つです。特筆すべきは、遠隔医療(テレヘルス)という手法が用いられた点であり、これにより、疲労が強すぎるために、あるいは遠隔地に住んでいるために、対面での指導を伴うプログラムに参加できない患者にも支援を届けることが可能となりました。特に注目すべきは、生活の質(QOL)の改善効果のおよそ半分は、疲労の軽減によるものでした。このことは、疲労そのものが、評価し治療すべき重要な介入対象であることを示唆しています。この小規模な第2相試験の結果は、より大規模な試験での検証が必要ではあるものの、有望であり、規模を拡大して展開できる可能性のある医療提供モデルを示唆しています」と、Marcin Chwistek医師(FAAHPM)(Fox Chase Cancer Centerの支持療法・緩和ケアプログラム責任者、ASCO緩和ケア専門医)は述べた
研究概要
| 焦点 | がんの免疫療法を受けている患者における、遠隔運動プログラムが疲労および生活の質(QOL)に及ぼす影響 |
| 対象者 | ブラジル全土から参加した70人(大半は進行がんの患者) |
| 主な結果 | 免疫療法薬を受けている患者において、専門家の指導のもとで実施する遠隔運動プログラムは、主にがん関連疲労を軽減させることで、QOLを向上させる。 |
| 意義 | ● がんに伴う疲労は、重度かつ広範にみられる症状であり、がん患者の50~70%に認められる。多くの研究により、運動は疲労を有意に軽減し、健康関連の生活の質(HRQOL)を改善することが示されている。しかし、これまでの研究の大半は、化学療法や放射線療法を受けている患者を対象としていた。本研究では、免疫療法薬を受けている患者を対象に評価を行った。 ● がん治療中や治療後に運動プログラムを実施することは容易ではない。在宅での運動プログラムは、移動やスケジュール調整などの障壁を軽減できる一方で、参加者のモチベーションの維持が課題となる。 ● 本研究では、構造化された遠隔運動プログラムが用いられた。このプログラムでは、運動生理学の専門家が毎週参加者の状況を確認し、個別の運動計画を調整することで、参加者への支援と柔軟性の両方を提供した。 |
新たな研究により、構造化された遠隔運動プログラムは、がん免疫療法を受けている患者の健康関連QOL(HRQOL)を有意に改善したことが示された。QOLの改善の約半分は、疲労の軽減によるものであり、これは疲労が運動と健康状態の改善を結びつける重要な要因であることを示している。また、がん治療中のQOLを向上させるうえで、疲労は介入によって具体的かつ改善可能な標的となることが明らかになった。この研究結果は、10月16日から17日にかけてボストンで開催される2026年米国臨床腫瘍学会(ASCO)クオリティ・ケア・シンポジウムで発表される予定である。
研究について
「疲労は、がんそのものとその治療の両方に関連する最も一般的な症状の一つです。この疲労は、患者が抱える症状全体の負担を増大させ、QOLを低下させる要因となりますが、これを確実に改善する実用的な手段は依然として限られています。多くの患者にとっては直感に反するように思えるかもしれませんが、実は運動こそが、疲労に対処するための、科学的根拠に基づいた最良の戦略の一つなのです」と、筆頭著者であるPaulo Bergerot医師(腫瘍内科医、Hospital Santa Lúcia―ブラジル・リオデジャネイロ)は述べている。
この第2相試験では、遠隔で実施される運動プログラムへの参加が、がん患者の症状を軽減し、QOLを向上させることができるかどうかを評価した。特に、免疫療法薬を受けている患者に焦点を当てた。免疫療法薬では、疲労をはじめとする特有の免疫関連有害事象や持続的な症状が現れることが多い。本研究には、ブラジル全土の9つの病院から70人の参加者が登録された。年齢の中央値は68歳であった。参加者のほぼ半数が女性であり、4分の3以上が転移がんの患者であった。
主な知見
● 運動群の参加者の約83%が、12週間のプログラムのうち6週間以上にわたって継続的に取り組んでおり、これは中程度から高い遵守率と評価された。
● 運動群では参加者の76%が、健康関連QOL (HRQOL)において臨床的に意義のある改善を達成したのに対し、対照群ではわずか6%であった。臨床的に意義のある改善とは、がん治療の機能評価尺度であるFunctional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)の自己記入式質問票において、スコアが7ポイント以上上昇することと定義された。
● 運動支援を受けた群は、対照群と比較してHRQOLスコアが平均で約12ポイント高かった。
● 全体として、運動支援を受けた群では、対照群と比較して、エドモントン症状評価システム(ESAS)による疲労スコアが約4ポイント低下した。また、疲労の軽減そのものが、QOLの向上と関連していた。疲労の評価には、エドモントン症状評価システム(ESAS)が用いられた。
● 運動による健康関連QOLの改善のうち、47%は疲労の軽減によるものであった。
運動群の参加者からは、有害事象の報告はなかった。
次のステップ
研究者らは、QOLの改善が12週間の試験期間終了後も維持されるかどうかを評価する予定である。より幅広い患者集団において今回の知見を確認するためには、さらに大規模な試験が必要である。今後の研究では、本介入の費用対効果を評価するとともに、低・中所得国を含むさまざまな医療現場において、本プログラムをどのように実施することが最適かを検討する予定である。
本試験は内部資金によって実施された。
- 記事担当 青山真佐枝
- 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
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- 原文掲載日 2026/10/13
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