がんの治療、予防および患者ケアの進歩が明らかに(2015年ASCO年次総会報道向けプログラム)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、2015年ASCO年次総会報道向けプログラムで取り上げる予定の研究を発表した。数々のがんに対する進歩や、免疫療法、標的治療、外科手術、放射線治療、がんの予防および患者の生活の質(QOL)を改善する革新的な戦略を含む、ほぼすべての領域に渡るがん患者ケアの進歩が示された。

51回年次総会は529日~62日にシカゴで開催され、世界中から25000人以上のがん専門家が参加する見込みである。本年の年次総会は革新と啓蒙のテーマに焦点を当て、患者ケアをより迅速に改善するためのがんの科学と医療情報技術(HIT)の統合の可能性を提示する予定である。新たな研究と合わせて、ASCOCancerLinQ™などのHITイニシアチブが本学会にて積極的に取り上げられる予定である。

年次総会の5000以上にのぼる演題の概要抄録の多くは513日(水)、東部標準時間(EDT)のPM 5:00abstracts.asco.orgにて公開される。公表禁止制限付きのメディア向け報道会見が同日の正午12:00(EDT)に開かれ、4つの重要な演題の抄録を中心に概要が発表される。総会演題を含めた一般演題締め切り後に応募された最新の演題の抄録(LBAs)は年次総会現地で発表される予定である。

公表禁止制限付き報道会見:513日(水)、正午12:00EDT

本報道会見ではASCOの年次総会で発表予定の研究範囲を代表する試験に焦点を当てる。報道向けに発表される試験結果の公表制限は513日(水)の午後 5:00(EDT)に解除される。

  • 再発性または難治性多発性骨髄腫患者において、新規モノクローナル抗体elotuzumab[エロツズマブ]の標準療法への追加効果を評価したランダム化第3相試験の結果(抄録番号8508
  • ハイリスク患者において、非黒色腫(非メラノーマ)以外の皮膚がんや前がん病変を予防する目的で経口ビタミンB3を使用したランダム化第3相試験(抄録番号9000
  • 小児腫瘍学グループによる、Wilms腫瘍という稀でハイリスクな腎臓がんの一種に罹患した小児患者における強化化学療法の有効性の解析(抄録番号10009)。
  • ハイリスクの局所進行または転移性前立腺がん男性患者において、ドセタキセル化学療法またはゾレドロン酸、あるいはその両者を標準療法へ追加することにより、生存期間が改善するかを評価した大規模試験からの知見(抄録番号5001

年次総会現地で発表予定の研究

ASCOは毎日記者会見を行い、以下の研究領域での重要な進歩に焦点を当てる予定である。

免疫療法:529日(金)、午後1:00-2:00(中部夏時間(CDT))

本報道向け概要で発表される試験結果の公表制限は午後1:00(CDT)に解除される。

  • PD-1を標的とした免疫療法が有効な大腸やその他のがん患者を特定するのに役立つ可能性があるゲノムマーカーの小規模研究(抄録番号LBA100
  • 進行性肝臓がん患者を対象としたPD-1を標的とした治療薬ニボルマブの第1/2相試験(抄録番号LBA101
  • 進行性頭頚部がん患者におけるPD-1を標的とした治療薬pembrolizumab[ペンブロリズマブ]の早期臨床試験からの知見(抄録番号LBA6008
  • 進行非扁平上皮、非小細胞肺がん患者におけるPD-1を標的とした治療薬ニボルマブの第3相試験(抄録番号LBA109

標的治療: 530日(土)、午前8:00-9:00(CDT)

本報道向け概要で発表される試験結果の公表制限は午前6:30(CDT)に解除される。

  • 治療抵抗性多発性骨髄腫患者における単独療法としてのモノクローナル抗体daratumumab[ダラツムマブ]の第2相試験(抄録番号LBA8512
  • 非ホジキンリンパ腫患者を対象としたCD-20を標的としたモノクローナル抗体obinutuzumab[オビヌツズマブ]とベダムスチンの併用療法の第3相試験の最初の結果(抄録番号LBA8502
  • 慢性リンパ性白血病を対象とした、初のBTK タンパク阻害剤であるibrutinib[イブルチニブ]の標準療法への追加を評価した第3相試験の初期結果(抄録番号LBA7005
  • 慢性血液がんの一種である骨髄線維症に対する新規JAK2タンパク阻害剤pacritinib[パクリチニブ]の第3相試験結果(抄録番号LBA7006

稀ながんおよび一般的ながんに対する進歩:530日(土)、10:30-11:30(CDT)

本報道向け概要で発表される試験結果の公表制限は午前6:30(CDT)に解除される。

  • 局所にとどまるハイリスク前立腺がん男性患者において、標準的なホルモンおよび放射線療法の終了後にドセタキセルを用いた補助化学療法の追加効果を検討する第3相試験(抄録番号LBA5002)。
  • センチネルリンパ節生検陽性のメラノーマ患者に対して再発リスクを下げるためにリンパ節を完全に廓清するべきかを評価した第3相試験結果(抄録番号LBA9002)。
  • 2つの稀で治療困難ながんである平滑筋肉腫および脂肪肉腫患者に対するエリブリンの第3相試験(抄録番号LBA10502)。
  • 閉経後の女性において、非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する腫瘍摘出手術および放射線治療後の乳がん発生の予防効果としてのアナストロゾールとタモキシフェンを比較した第3相試験(抄録番号LBA500)。
  • ホルモン受容体陽性、HER-2陰性の再発性、転移性乳がん女性患者におけるホルモン治療薬フルベストラントに標的治療薬palbociclib[パルボシクリブ]の併用を検討する第3相試験(抄録番号LBA502)。

総会演題報道概要、531日(日)、午前8:00-9:00CDT

この報道会見におけるすべての試験はASCOの総会演題として選ばれ、患者のケアに対して最高の科学的利点と最大の影響をもつと考えられる抄録に焦点が当てられる。本報道向け概要で発表される試験結果の公表制限は午前6:30(CDT)に解除される。

  • 早期口腔がんを対象とした頸部リンパ節の選択的切除と治療的廓清術を比較した大規模第3相試験(抄録番号LBA3)。
  • 限定的な脳転移がみられる患者において、放射線手術単独と放射線手術終了後の全脳照射追加を比較した、信頼のおけるランダム化第3相試験の結果(抄録番号LBA4)。
  • 小児期のがん治療がもたらす生命を脅かす長期に渡る副作用を抑制するために実施された、数十年に渡る取り組みによる生存期間の転帰の解析(抄録番号LBA2)。
  • 進行性メラノーマ患者において、PD-1標的治療薬ニボルマブとイピリムマブを単独および併用で用いた一次療法に関する第3相試験の初期結果(抄録番号LBA1)。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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