《がん治療の副作用》男性がん患者のセクシュアルヘルス

がんの治療を受けている男性は、治療中、ときには治療後に、性生活に影響を及ぼす変化を経験することがあります。治療前のような性的活動への気力や関心はなくなる可能性がありますが、それでも、配偶者やパートナーと性的関係を持ち親密感を得ることはなおさら重要でしょう。

がん治療が性生活にどのように影響するかについて主治医や看護師から説明を受けることもあれば、自分から積極的に質問しなければならないかもしれません。質問は、「この種の治療を受けている男性によく見られる性に関する変化や問題は何か?」「治療中はどのような家族計画や避妊方法が推奨されているか?」といったものです。

その他の検討すべき質問については、このページの最後に記載してあります。治療が妊よう性にどのような影響を及ぼすかについての詳細は、「男児と男性の妊よう性の問題(原文)」をご参照ください。

セクシュアルヘルス(性的健康)に影響を及ぼす問題が生じるかどうかは以下の要因によります。

  • がん種
  • 治療の種類
  • 治療薬の量
  • 治療期間
  • 治療時の年齢
  • 治療後の経過期間
  • その他、個人の健康要因

■がん治療は男性の性的問題を引き起こす可能性があります

治療中に男性の性的活動に影響を及ぼす問題の多くは一時的なもので、治療が終了すると改善します。他の副作用は長期におよぶものもあれば、治療後に始まるものもあります。

治療副作用について主治医から以下のような説明があるでしょう。

・化学療法は、治療期間中にテストステロン値と性欲を低下させる可能性があります。治療後の一定期間は精液に化学療法の痕跡が含まれている可能性があるため、コンドームを使用するよう助言されることがあります。化学療法は通常、勃起能力には影響しません。

・骨盤(肛門、膀胱、陰茎、前立腺など)に対する外照射療法や小線源治療(内照射療法とも呼ばれます)は、男性の性機能に影響を及ぼす可能性があります。血管や神経が損傷すると、勃起や勃起維持が困難になり、これは勃起障害と呼ばれます。前立腺が損傷している場合はドライオーガズムが起きることがあります。

・ホルモン療法は、テストステロン値を低下させ、男性の性欲を低下させる可能性があり、勃起や勃起維持が困難になります。前立腺がんのホルモン療法による副作用についてはこちらをご参照ください。

・陰茎がん、直腸がん、前立腺がん、精巣がん、その他の骨盤内のがん(膀胱がん、結腸がん、直腸がんなど)の外科手術は神経に影響を及ぼし、勃起や勃起維持が困難になる場合があります。このような問題を防ぐために神経温存手術が行われる場合もあります。

・痛みの治療に使用される薬剤、うつ病に使用される薬剤、神経や血管に影響を及ぼす薬剤はすべて性欲に影響を及ぼす可能性があります。

心臓病、高血圧、糖尿病、喫煙などの健康問題はセクシュアルヘルスの変化の一因となる可能性もあります。

■セクシュアルヘルス問題への対処法

医療チームの人々は、この困難な時期に向き合う患者たちを手助けしてきた経験があり、有益なアドバイスをすることが可能です。

また、セクシュアルヘルスの専門家に相談して、わからないことや心配なことを教えてもらうのもよいでしょう。

ほとんどの男性が治療中に性生活を営むことができますが、これについて主治医に確認しておくとよいでしょう。例えば、治療中に感染や出血のリスクが高まる時期があり、性的活動を控えるよう助言されることがあります。受けている治療の種類によってはコンドームの使用が推奨されることもあります。

医療チームは以下のような支援が可能です。

治療について学ぶ
抱えている症状に基づいて、主治医または泌尿器科医が治療選択について助言を行います。例えば、セクシュアルヘルス問題が診断されたときに処方される薬剤や器具があります。陰茎への血流を増加させるために薬剤が投与される場合があります。また、固い棒や膨張性のある器具(陰茎インプラント)を陰茎に入れて、勃起や勃起維持を可能にする手術もあります。

コンドームや避妊薬について学ぶ
精液中に残留する可能性のある化学療法薬にパートナーが曝露されるのを防ぐためにコンドームを使用するよう助言されることがあります。パートナーの年齢により、妊娠を防ぐために避妊薬を勧められることもあります。詳細は「男児と男性の妊よう性の問題(原文)」をご参照ください。

関連する副作用を管理する
痛み、疲労、脱毛、活動への関心低下、悲しみ、睡眠障害など性生活に影響を及ぼす可能性のある問題については医師や看護師に相談しましょう。副作用について率直に話すことは、治療の助けとなり、気が楽になるような支援を受けることが可能になります。

支援やカウンセリングを受ける
このような時期に支援やカウンセリングを受けることは、自分の感情や懸念を親しい人と共有するのに役立ちます。また、専門家が運営または主導する支援グループに参加するのも有益です。看護師やソーシャルワーカーは地域の支援グループやカウンセラーを紹介してくれます。

支援を提供している組織の詳細は、がん関連の支援サービスを提供している全国組織のデータベース(原文)にアクセスし、一覧表から支援サービスを選択して閲覧することができます。

■セクシュアルヘルスの問題について医療チームと相談しましょう

治療により自分の生活にもたらされた変化について考えながら、医師、看護師、ソーシャルワーカーへの質問リストを作りましょう。以下の質問をリストに追加することを検討してみてください。

・この治療を受けている男性に多い性の問題は何ですか?

・治療中にどのような性の問題がありえますか?

・そのような変化はいつ起きる可能性がありますか?

・それらの問題はどれくらい続きますか?それらの問題のうち永続的なものはありますか?

・それらの問題はどのようにして予防、治療、管理が可能ですか?

・治療中に気を付けなければならない注意事項はありますか?例えば、パートナーを守るためにコンドームの使用は必要ですか?

・自分やパートナーは避妊をするべきですか?どんなタイプの避妊薬(避妊法)がお薦めですか?

・お薦めの支援グループはありますか?

・知識を深めるためにはどの分野の専門家に相談すればよいですか?

翻訳担当者 松長愛美

監修 河村光栄(放射線科/京都医療センター放射線治療科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん治療に関連する記事

がん性T細胞から得た戦略でCAR-T細胞療法が強化される可能性の画像

がん性T細胞から得た戦略でCAR-T細胞療法が強化される可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ白血病やリンパ腫のような血液腫瘍患者の一部では、CAR-T細胞療法が画期的な治療法であることが証明されてきた。しかし、がん患者の約90%を占...
がん免疫療法薬の効果予測、より優れたバイオマーカーの画像

がん免疫療法薬の効果予測、より優れたバイオマーカー

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ免疫療法薬である免疫チェックポイント阻害薬に反応する患者の予測において、現在使用されている分子マーカーは必ずしも有効でない。その理由を、主に...
米NCIによる、固形がんに対するT細胞療法の大幅強化アプローチの画像

米NCIによる、固形がんに対するT細胞療法の大幅強化アプローチ

米国国立がん研究所(NCI)ニュースリリース概要米国国立衛生研究所の一部である国立がん研究所(NCI)は、固形がんに対するT細胞ベースの免疫療法治療(CAR‐T細胞療法など)の...
ASCO、がん臨床試験の卵巣毒性評価に関する推奨を発表の画像

ASCO、がん臨床試験の卵巣毒性評価に関する推奨を発表

米国臨床腫瘍学会(ASCO)米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、がん臨床試験における卵巣毒性の適切な評価に関する新たな推奨事項をまとめた研究声明「Measuring Ovarian Tox...