糞便微生物叢移植は免疫療法関連大腸炎を改善か

糞便微生物叢移植は免疫療法関連大腸炎を改善か

MDアンダーソン研究ニュース 2026年9月14日

● 免疫療法関連大腸炎は、免疫療法薬に伴う重篤な副作用の一つであり、患者ががん治療を一時中断せざるを得なくなる可能性がある
● 本研究の対象患者の大半は、糞便微生物叢移植(FMT)を受けた後、大腸炎の症状が改善した
● 大腸炎の症状は、治療後中央値1.5日以内に改善した

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによると、糞便微生物叢移植(FMT)を用いて腸内微生物叢に働きかけることで、免疫療法薬に関連する大腸炎を患うがん患者が、ステロイドやその他の免疫抑制療法を必要とせずに済む可能性があるという。
 
Cell Reports Medicine誌に掲載された第1/2相試験の結果によると、糞便微生物叢移植による治療を受けた最初の13人の患者のうち、約77%に症状の改善が認められ、症状が治まるまでの期間は中央値でわずか1.5日であった。反応を示した10人のうち8人は、追跡調査期間中も寛解状態を維持していた。
 
「今回の結果で特に注目すべき点は、マイクロバイオーム(微生物叢)治療を早期に導入することで臨床的な改善が速やかに見られたこと、そしてがん治療を再開できた患者が多数いたことです」と、試験責任医師で消化器・肝臓内科教授のYinghong Wang医学博士は述べている。「これらの知見は、糞便微生物叢移植が、免疫療法関連大腸炎の経過のより早期の段階で、迅速かつ有効な治療法として役割を果たす可能性を示唆しています。これにより、免疫抑制療法への曝露を抑え、それに伴う合併症を軽減できる可能性があります」。

免疫療法関連大腸炎とは?

免疫療法薬は、免疫系を活性化させてがんを認識・排除する仕組みを利用した治療法であるが、一部の患者では、この治療によって免疫系が誤って正常な組織を攻撃してしまうことがある。その副作用の一つが免疫療法関連大腸炎であり、重度の下痢、腹痛、大腸の炎症を引き起こす可能性がある。場合によっては、免疫療法関連大腸炎のために、がん治療を一時中断せざるを得なくなることもある。
 
現在、大腸炎の治療には通常、ステロイドや生物学的製剤が用いられている。糞便微生物叢移植はこれとは異なるアプローチを採用しており、スクリーニングを経たドナーから採取した健康な腸内細菌を患者の消化管に移植することで、腸内細菌のより健全なバランスを取り戻すことを目的としている。

なぜ研究者はステロイドに代わる治療法を探しているのか?

ステロイドやその他の免疫抑制療法は炎症を抑えることができるが、長期にわたって使用すると、感染症やその他の副作用のリスクが高まる可能性がある。また、免疫系を抑制することによって、がんに対する体の反応にどのような影響が及ぶのかについても懸念されている。
 
ステロイドの使用を減らすことができる治療法を開発することは、免疫系が本来の役割を果たせる状態を維持しながら、がん免疫療法による副作用を管理するうえで重要な目標となっている。

この研究は腸内微生物叢について何を明らかにしたのか?

研究者らは、なぜ一部の患者には治療効果がみられ、他の患者にはみられなかったのかを明らかにするため、糞便微生物叢移植の前後に採取した便、血液、組織のサンプルを分析した。
 
治療に反応した患者では、反応しなかった患者と比べて、より健康的な腸内環境と関連する数種類の細菌が増加し、腸の炎症と関連する細菌が減少していることが確認された。また、反応した患者と反応しなかった患者の間では、免疫マーカーにも違いが見られた。
 
これらの知見は、腸内細菌叢が炎症や治療への反応にどのような影響を及ぼすのかを、研究者がより深く理解するのに役立つ可能性がある。
 
糞便微生物叢移植(FMT)に関連して報告された副作用は軽度で、一時的な腹部不快感、吐き気、微熱などが挙げられた。研究者らは今後、より大規模な無作為化試験において、FMTと標準治療を直接比較する研究を続ける予定であり、大腸がん、膵臓がん、リンパ腫といった他のがん種におけるFMTの追加の臨床試験を開始することも検討している。
 
本研究は、Adopt-A-Scientist GrantおよびUT MD Andersonの機関資金による支援を受けて実施された。共著者の全リスト、開示情報については、Cell Reports Medicine誌に掲載された論文全文をご覧ください。

  • 記事担当 青山真佐枝
  • 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2026/09/14

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん治療に関連する記事

免疫療法薬後の関節炎の再燃原因を解明、バイオマーカー候補かの画像

免疫療法薬後の関節炎の再燃原因を解明、バイオマーカー候補か

免疫療法を受けた患者の中には、炎症性関節炎を繰り返し発症し、再燃するたびに悪化することがある研究者らは、関節炎の初回発症時と再燃時の両方に存在する免疫細胞を特定した研究結果から、再燃を...
米国国立がん研究所の支援がもたらした免疫チェックポイント阻害薬の画期的発見の画像

米国国立がん研究所の支援がもたらした免疫チェックポイント阻害薬の画期的発見

米国国立がん研究所(NCI)は、世界最大のがん研究資金提供機関である。連邦政府の納税者による資金により、NCIの研究所をはじめ、全米および世界中のがんセンター、病院、地域診療所、大学な...
絶食は腸内細菌叢を整え、放射線治療後の腸の回復を促進の画像

絶食は腸内細菌叢を整え、放射線治療後の腸の回復を促進

●研究者らは、回復を早めるために腸幹細胞を活性化させるのに役立つ腸内細菌を特定した。
●前臨床モデルにおいて、短期の絶食によりこの細菌の数が増加し、放射線治療後の小腸の再生がより効果的に...
ヒストトリプシー(組織破壊療法)が肝腫瘍に新たな希望をもたらすの画像

ヒストトリプシー(組織破壊療法)が肝腫瘍に新たな希望をもたらす

ヒストトリプシーは、ギリシャ語の「histo(軟部組織)」と「tripsy(破壊する)」に由来する名称で、肝腫瘍の治療法として2023年に初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた...