ASCOが初の抗体薬物複合体T-DXdを追加し、画期的TAPUR試験を拡大

ASCOが初の抗体薬物複合体T-DXdを追加し、画期的TAPUR試験を拡大

TAPUR試験に新たに2つの精密薬剤群が追加

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、Targeted Agent and Profiling Utilization Registry(TAPUR:分子標的薬剤およびプロファイリング利用登録)試験を拡大し、2つの新たな取り組みを開始した。

  • 初の抗体薬物複合体となるトラスツズマブ デルクステカンを試験に追加し、この薬剤がより幅広い患者層に有益であるかを評価する。
  • 加えて、ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法が、本試験の対象治療に追加された。TAPUR試験は、この併用療法について、米国食品医薬品局(FDA)により最近承認された適応症に関する規制要件への対応に製造企業が利用可能なデータの取得を支援する。

TAPUR試験では、ゲノム検査を用いて患者の遺伝子異常を特定し、それに適した治療法を選定することで、さまざまな種類のがんに対するオフラベル(適応外)治療を評価する。製造企業や規制当局はTAPUR試験に参加することで、FDAが承認した本来の適応以外に用いられた標的抗がん剤の安全性および有効性に関する質の高いデータを収集することができる。本試験のプロトコルに基づき、参加患者はこれらの薬剤を無償で受け取ることができる。

TAPUR試験に組み込まれた初の抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン

トラスツズマブ デルクステカンは、TAPUR試験に組み込まれた初の抗体薬物複合体である。本試験では、ErbB2(HER2)遺伝子の増幅を伴う固形腫瘍またはHER2発現(免疫染色[IHC]で2+/3+)非小細胞肺がんに、トラスツズマブ デルクステカンが有効であるかを評価する。この薬剤がTAPUR試験に組み込まれたことは、FDAが2024年4月に、全身治療歴を有し他に適切な治療選択肢のない切除不能または転移性HER2陽性(IHC3+)固形腫瘍の成人患者を対象として、この薬剤を迅速承認したという規制上の重要な進展を一層後押しするものとなった。本試験により、トラスツズマブ デルクステカンの適応対象となる患者層を拡大することができる可能性がある。

TAPUR試験が拡大し、ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法を評価

FDAは、BRAF V600E変異を有する切除不能または転移性固形腫瘍の成人および小児患者のうち、前治療後に病勢が進行し他に適切な治療選択肢がない患者を対象として、ダブラフェニブとトラメチニブの2剤併用療法を迅速承認した。この承認により患者に新たな道が開かれた一方で、TAPUR試験は、この併用療法に関するさらなるエビデンスを収集するための確立された枠組みを提供している。

「開始から10年目を迎えたTAPUR試験は、初の抗体薬物複合体コホートなど、革新的な治療法を試験の枠組みに組み入れることで、進化を続けています」と、TAPUR試験の試験責任医師であるRichard L. Schilsky博士(MD、FACP、FSCT、FASCO)は述べた。「また、企業の市販後コミットメントの履行を支援し、これらの治療法に関する規制当局への申請に本試験のデータを活用することで、試験データの活用可能性を拡大できる新たな機会にも期待しています」。

TAPUR試験には、全米272施設で進行がん患者3,000人以上が登録されており、まもなくプエルトリコの施設が加わる予定である。

トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)は、第一三共とアストラゼネカが世界的に開発・販売している。ただし、日本国内では、第一三共が独占的な権利を有する。ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)とトラメチニブ(商品名:メキニスト)はノバルティスファーマが製造・販売を行なっている。

  • 記事担当 田村克代
  • 監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学・北九州総合病院)
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2026/04/17

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん治療に関連する記事

液体生検、代謝リスク、アジア人向け個別化治療【ASCOブレイクスルー会議2026】の画像

液体生検、代謝リスク、アジア人向け個別化治療【ASCOブレイクスルー会議2026】

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のASCO Breakthrough(ブレイクスルー)会議では、世界中の腫瘍専門家がアジアに集まり、患者ケアの未来を形作る最新のがん研究成果について議論する...
【AACR26】原発不明がんの起源特定にDNAメチル化機械学習モデルが役立つ可能性の画像

【AACR26】原発不明がんの起源特定にDNAメチル化機械学習モデルが役立つ可能性

本アプローチはいずれは、様々ながんと診断された患者の個別化治療の決定指針となる可能性があるCpG領域のDNAメチル化を解析する機械学習モデルが、原発不明がん(CUP)患者におけ...
多標的イベルメクチン、抗寄生虫薬から抗がん薬への転用の画像

多標的イベルメクチン、抗寄生虫薬から抗がん薬への転用

ドラッグ・リポジショニング(既存薬の再開発)とイベルメクチンの概要(-Am J Cancer Res誌 2018.02.18論文より要約)

ドラッグ・リポジショニング(薬剤転用)...
市販薬ががん免疫療法薬の効果に影響を与える可能性の画像

市販薬ががん免疫療法薬の効果に影響を与える可能性

免疫療法薬が、かつては予後不良とされていたがんに対して新たな希望をもたらしている。免疫療法薬は、体自身の免疫システムを利用してがんと闘うことで、多くの場合、患者を化学療法の辛い副作用か...