脳転移患者への放射線と免疫療法薬併用はリスクを伴う

デューク大学医療センター

腫瘍と闘うために免疫系を活性化する治療法は、多くの種類のがん患者の寿命を大きく延ばしてきた。
 
しかし、メラノーマや肺がんで脳に転移した患者が免疫療法薬と放射線治療を同時に併用すると重篤な炎症反応を引き起こす可能性があるという報告もある。
 
4月9日付けのJAMA Network Open誌に掲載された研究で、Duke Center for Brain and Spine Metastasisの研究者らは、定位放射線治療(訳註:ガンマナイフ、ノバリス、サイバーナイフなど)と呼ばれる標的放射線療法を受けた4週間以内に免疫療法薬の投与を受けた脳転移患者では、放射線壊死と呼ばれる症状を呈する脳の炎症のリスクが約2倍に増加したことを報告している。
 
「今回の知見により、定位放射線治療後4週間以内に免疫チェックポイント阻害薬の2剤併用療法を受けた患者において、これまで報告されていなかった脳組織損傷のリスクが明らかになりました」とZachary J. Reitman医学博士(デューク大学医学部放射線腫瘍学、脳神経外科学、病理学助教)は述べた。「このリスクを特定することで、これらの治療法をより効果的に使用し、腫瘍のコントロールを最大限に高め、副作用を軽減できる可能性があります」。
 
デュークがん研究所のReitman博士ら(筆頭著者で放射線腫瘍学助教Eugene J. Vaios医師を含む)は、デューク大学におけるメラノーマ(悪性黒色腫)および肺がん患者288人の治療成績を分析した。82人の患者は免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)とニボルマブ(販売名:オプジーボ)の2剤併用療法を受け、129人は免疫療法薬の単剤投与を受け、77人は免疫療法薬の投与を受けなかった。全員が定位放射線治療を受けた。
 
免疫チェックポイント阻害薬2剤併用と定位放射線治療を同時に受けた患者のうち、25.9%に症候性炎症と脳組織の損傷が生じた。一方、免疫療法薬(単剤)の投与と定位放射線治療を受けた患者では12.3%、免疫療法薬の投与を受けず定位放射線治療のみの患者では13.7%に同様の損傷が認められた。
 
Vaios医師によると、定位放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬2剤併用投与の間隔が4週間を超える場合(例えば、逐次療法)、症候性炎症の発生率が有意に低下することも判明した。逐次療法では、このリスクは免疫療法薬(単剤)または免疫療法薬なしの治療と同等になった。
 
これにより、定位放射線治療後の生存率が向上する可能性がある。
 
「定位放射線治療後、12カ月以内に症候性の脳組織損傷が生じた患者は、生存率が著しく低下することがわかりました」とVaios医師は述べた。「今後の研究では、治療の順序をより適切に決定し、リスクをより定量化し、治療選択を導き、患者に適切なカウンセリングを行うための予測アルゴリズムを開発することで、組織損傷を軽減する方法を明らかにしたいと考えています」。
 
Vaios氏と Reitman 氏のほか、研究著者は原文参照のこと。
 
本研究は、米国国立衛生研究所の一機関である米国国立がん研究所(5R38-CA245204, 1K38CA292995-01, K08-CA2560450)から資金提供を受けた。

  • 監修 夏目敦至(脳神経外科/河村病院)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/04/09

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