覚醒促進剤プロビジルが癌に伴う重度の倦怠感を改善

キャンサーコンサルタンツ
2008年6月

ロチェスター大学の研究者らは、覚醒促進剤モダフィニル〔Modafinil〕(商品名:プロビジル〔Provigil®〕)が癌に伴う倦怠感の治療に有効であると報告した。この研究に関する詳細は、米国シカゴで5月30日~6月2日に開催された2008年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

この覚醒促進剤は睡眠欲求を低減する比較的新しい世代の薬剤である。この薬剤は、従来の刺激剤のような副作用を伴うことなく注意力や覚醒状態を高めるとされている。この薬剤は、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸、その他の睡眠に関連する問題といった睡眠障害の治療薬として米国食品医薬品局に承認されている。プロビジルはまた、注意欠陥多動性障害の治療にも用いられている。この薬剤は注意力向上の目的で、軍隊や航空機の乗務員にも用いられている。プロビジルは12時間で体内から消失し、依存性はないと報告されている。

この無作為化試験では、さまざまな癌に対する化学療法受療中の患者で、癌に伴う倦怠感のある642人を対象とした。患者はプロビジル投与群(320人)とプラセボ群(322人)に無作為に割り付け、倦怠感、眠気、抑鬱症状について2つの違う時点で評価した。本研究報告の著者らは、倦怠感の程度が重度の患者ではプロビジル投与群がプラセボ群に比べ有意に改善した(P=0.017)と報告した。しかしながら、倦怠感が軽度から中程度の患者では改善がみられなかった。「眠気」については、コントロール群に比べてすべての患者で減少したとみられた(P=0.002)。プロビジルは抑鬱症状への効果はなかった。著者らは、プロビジルが癌に伴う重度の倦怠感の治療に有効である可能性があるとの結論に達した。

コメント:

これらの研究結果は興味深い発見であり、癌治療や癌に伴う倦怠感とその他の癌の副作用の治療においてプロビジルの果たす役割をより明確にするために、さらなる研究が進められるだろう。

参考文献:
1 Morrow GR, Jean-Pierre P, Roscoe JA, et al. A phase III randomized, placebo-controlled, double-blind trial of a eugeroic agent in 642 cancer patients reporting fatigue during chemotherapy: a URCC CCOP Study. Journal of Clinical Oncology. 2008;26:abstract 9512


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翻訳担当者 越智 律子

監修 平 栄 (放射線腫瘍医)

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