紅茶の健康効果を示唆するNCI研究結果

研究結果

 英国の紅茶愛飲者50万人を対象とした前向き研究にて、紅茶の摂取量が多くなるほど死亡リスクがやや低くなることが示された。この研究は、英国で最も親しまれているお茶である紅茶を飲むことによる、死亡率に対する潜在的メリットについて大規模かつ包括的に分析したもので、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立がん研究所(NCI)の研究者が主導した。

 お茶の摂取量が多くなるほど死亡リスクはやや低くなることを示した過去の研究は、主に緑茶をよく飲むアジア人集団をメインの対象としていた。紅茶に関する諸研究の結果では一致をみていなかった

 今回の新たな研究では、1日に2杯以上の紅茶を飲む人は、飲まない人と比較して、あらゆる原因による死亡リスクが9%から13%低いことが判明した。また、紅茶の摂取量が多いほど、心血管疾患、虚血性心疾患、脳卒中による死亡リスクも低かった。この関連性は、紅茶の好みの温度、ミルクや砂糖の添加、およびカフェインの代謝速度に影響を与える遺伝的差異に関係なく認められた。

 この研究成果は、2022年8月30日付のAnnals of Internal Medicine誌に掲載され、紅茶は摂取量が多くても健康的な食生活の一部になり得ることを示唆していると、研究者は書いている。

 この研究は、UKバイオバンクと呼ばれる大規模コホート研究に参加した40〜69歳の男女498,043人を対象とした。参加者を約11年間追跡調査し、死亡情報は、リンクしている英国国民健康保険サービスのデータベースから得たものである。

 研究者

 Maki Inoue-Choi医学博士、 国立がん研究所がん疫学・遺伝学部門

 研究

 掲載誌:8月30日付Annals of Internal Medicine誌載

論文タイトル:Tea Consumption and All-Cause and Cause-Specific Mortality in the UK Biobank: A Prospective Cohort Study英国バイオバンクにおけるお茶消費量と全死因死亡率および特定原因による死亡率:プロスペクティブコホート研究)

 参考文献:

Inoue-Choi M, Ramirez Y, Cornelis MC, et al. Tea Consumption and All-Cause and Cause-Specific Mortality in the UK Biobank: A Prospective Cohort Study. Ann. Intern. Med. August 30, 2022. DOI: 10.7326/M22-0041

監訳:朝井鈴佳(獣医学・免疫学)

翻訳担当者 松谷香織

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原文掲載日 

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