【AACR2025】がん関連の疲労と抑うつは余暇活動とQOLの低下につながる可能性

【AACR2025】がん関連の疲労と抑うつは余暇活動とQOLの低下につながる可能性

女性がんサバイバーは男性よりも、がん関連疲労を経験する割合が69%高く、うつ病を経験する可能性が58%高い

がんに関連する疲労や抑うつを訴えるがんサバイバーは、余暇の運動を行う頻度が約2倍少なく、がん関連疲労や抑うつを訴える割合は、男性よりも女性の方が高いことが、2025年米国癌学会(AACR)年次総会(4月25日〜30日)で発表された後ろ向き研究から明らかとなった。

がん関連疲労は化学療法や放射線治療を受けた患者の80%以上にみられ、抑うつはがん患者の約25%にみられる。通常の疲労とは異なり、がん関連疲労は休息によって回復せず、数週間から数カ月、あるいは数年にわたり持続することがあると、Simo Du医師(NYCヘルス+ホスピタルズ アルバートアインシュタイン医科大学附属病院ジャコビ医療センターレジデント、MHS:健康科学修士)は説明する。

「研修医時代、外来でも入院でも多くのがん患者さんを診てきましたが、がんに関係した疲労は患者さんが最も頻繁に訴える症状のひとつでした」と、この研究を発表したDu氏は述べた。「日常生活だけでなく、生活の質やメンタルヘルスにも影響を及ぼし、階段を上る、買い物をする、洗濯をするといった行動すら負担になるのです」

これまでの研究で、がんに関連した疲労が男女で異なる影響を及ぼすことが判明しているが、Du氏らはこの違いを解明し、それがQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにしようとした。Du氏らは2015-2016年と2017-2020年における国民健康栄養調査(NHANES)のデータを分析した。NHANESは毎年、米国の成人および小児の健康と食生活に関する情報を収集しており、その中にはうつや不安に関する項目も含まれる。今回の解析に含まれたがんサバイバーの回答は1,555人分であったが、サンプリング手法により全米約2,500万人のがんサバイバーの傾向を反映するデータとなっている。サンプリングモデルでは、年齢、人種、社会経済的状態、合併症も調整した。がんサバイバーが仕事関連の活動や余暇の活動を遂行する能力は、QOLの代替指標として使用した。

その結果、女性のがんサバイバーは、男性に比べてがん関連疲労を訴える割合が69%高く、うつ症状を経験する割合も58%高かった。うつの指標のほとんどにおいて女性のスコアが高かったが、「死んだ方がましだと思うことがある」という項目だけは男性のスコアが高く、Du氏はこれが男性がんサバイバーにおける自殺リスクの上昇を示唆している可能性があると述べた。

Du氏は、こうした性差の背景には複数の要因があると考えられると説明する。たとえば、女性は化学療法、放射線療法、そしてホルモン療法の長期使用において副作用を経験しやすいことが知られている。これは、薬物の代謝が遅いため体内に高濃度で蓄積され毒性が強まることや、免疫反応が強いために炎症性の副作用が増幅されること、さらに体組成の違いが薬物分布や放射線の線量に影響することなどが原因と考えられている。加えて、女性は介護の責任をより多く担うなど社会的役割の違いも、がん関連疲労の発症や症状の現れ方に影響している可能性がある。

全がんサバイバーのうち、がんに関連した疲労を訴えた人は、早歩き、ゆったりとしたサイクリング、ゴルフ、軽い庭仕事などの中等度の余暇活動が減る傾向が86%高かった。抑うつ感を訴えた人は、中等度の余暇活動だけでなく、ジョギングやランニング、クロスカントリースキー、急斜面のハイキング、集中的な庭仕事などの強度の活動が減る傾向が65%高かった。うつ病もがんに関連した疲労も、仕事に関連した活動には有意な影響を及ぼさなかった。

「本研究は、支援が必要な人々に特別に注意を向け、運動プログラムやサポートグループ、心身の行動療法などそれぞれに合った介入を行う重要性を示しています。そうすることで、QOLの向上に欠かせないがん関連疲労の適切な管理や、余暇活動の参加につながります」とDu氏は語った。

Du氏らは、今後の研究で、がん関連疲労改善のための個別化の介入について有効性を評価すること、さまざまなメカニズム(炎症マーカーなど)とがん関連疲労との関係性を探り、性別がその関係性に影響するかどうかを検討すること、さらにこれらの要因を複数のデータセットにわたって縦断的に調査ことなどを予定している。

この研究の限界は、自己報告データを用いていること、そして女性は疲労症状を過剰に報告する可能性があり、男性は抑うつ症状を過小に報告する可能性があることである。しかし、NHANESはこのようなバイアスを最小化するように設計された標準化されたプロトコルを採用しているとDu氏は指摘している。

Du氏は資金源や利益相反を報告していない。

  • 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 記事担当者 平沢沙枝
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  • 原文掲載日 2025/04/29

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