がん予防ガイドライン遵守でがんリスクが減少

多数の研究のレビューで、全発現率および死亡率の一貫した減少が示される。

食事および身体活動に関するがん予防ガイドラインを遵守することにより、がんの全発現率および死亡率が一貫して減少したことが、米国がん学会の学会誌であるCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌に発表された系統的レビューの結果により示された。

主要ながん団体が作成したガイドラインを遵守することによって、乳がん、子宮内膜がん、大腸がんなどのさまざまなタイプのがんのリスク軽減にもつながったと、本研究の筆頭著者で、アリゾナ大学Mel and Enid Zuckerman College of Public Healthの博士号取得候補者である、公衆衛生学修士のLindsay N. Kohler氏は述べた。

「偏った食事、運動不足、過度の飲酒、適正でない体重などの生活習慣が、がん症例の20%超を占めているため、こうした生活習慣の改善によってがんを予防できると思われます」とKohler氏は述べ、喫煙または受動喫煙を入れると、米国でのがんによる死亡の2/3は、こうした改善可能な要因によるものであると付け加えた。

Kohler氏らは、米国がん協会(American Cancer Society:ACS)や世界がん研究基金(World Cancer Research Fund:WCRF)/米国がん研究協会(American Institute for Cancer Research:AICR)が発行する食事および身体活動の各種ガイドラインの遵守について解析した過去10年以内の研究を確認した。

ACSガイドラインとWCRF/AICRガイドラインは多少異なるが、いずれも適正体重の維持、定期的な運動、十分な量の野菜中心の食事、飲酒量の制限を推奨している。

研究者らの最終レビューは、12件の前向きコホート研究に基づいており、ACSガイドラインまたはWCRF/AICRガイドラインの遵守と、がん発現率および死亡率との関連性を検討した。

研究参加者は、研究開始時で25~79歳であり、ほとんどが白人であった。

レビューを構成する研究12件で遵守の基準がさまざまであったため、広範囲にわたる結果に至ったが、一貫したパターンが明らかになったとKohler氏は述べた。

本レビューは、がん予防ガイドラインを遵守することによって、がんの全発現率の10~45%減少や、がんの全死亡率の14~61%減少につながったことを示した。

本研究はまた、男女両者ともに、乳がん(19~60%)、子宮内膜がん(23~60%)、大腸がん(27~52%)の発現率で一貫した減少を示した。

本研究は、ガイドラインの遵守と卵巣がんや前立腺がんの発現率には有意な関連性がないこと、肺がんとの関連性は研究により異なることを示した。

Kohler氏らによると、ガイドラインへの遵守が高い場合と低い場合を比較したところ、がん予防推奨事項をより多く遂行した人々がより多くの便益を得たことが分かった。

例えば、Kohler氏が言うには、ある研究で5つ以上の推奨事項を遂行した女性は、推奨事項を一つも満たさなかった女性と比べ、乳がん発現の可能性が60%低かった。

遂行した推奨事項が一つ増えるごとに、乳がんリスクが11%減少した。

Kohler氏は、本レビューは医師と公衆衛生専門家が患者へがん予防推奨事項を強調し続ける意義を示すものであると述べた。

「これらのガイドラインを遵守すれば、リスクを完全になくすことはできなくても、がんになったり、がんで死亡したりするリスクを減少させることが可能です」とKohler氏は述べるとともに、家族の既往歴や環境的要因もがんの発現率や死亡率に影響をおよぼすことを指摘した。

「しかしながら、これらの推奨事項を遂行することで全般的にはより健康的な生活を送ることになり、その結果、多くの重大疾患のリスクを軽減することができます」。

Kohler氏は、本レビューの主な限界は、研究の多様性であったと述べた。

そのため、Kohler氏らは、がんリスクの因果関係や特異的な減少を確証することはできず、情報の集約しかできなかったと述べた。

本研究は、米国国立がん研究所のがんセンター助成金による支援を受けた。

Kohler氏は利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 東海林 洋子(薬学博士)

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