抗がん剤不足の危機的状況をASCO副会長が議会で証言

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)副会長および最高医学責任者Julie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は、本日、下院歳入委員会において、抗がん剤不足の危機的現状について証言する。

米国食品医薬品局(FDA)の医薬品不足リストには15種類以上の抗がん剤が掲載され続けており、そのうち数種類は追加供給が不可能となっている。Gralow医師は、深刻な医薬品不足に直面しながら治療を工夫しているASCO会員の実体験を紹介する。また、同氏はこの問題を緩和するための対応策を講じるよう、議会に働きかける。

「連日、私たちは米国中の腫瘍内科医から、がん患者やその医療提供者が、これまでで最悪のがん治療薬不足に直面しているという課題について、報告を受けています」とGralow医師は語る。「この危機は、医療提供者に難しい選択を迫っています。例えば、どの患者が救命や延命のための抗がん剤をスケジュール通りに決められた用量で投与され、どの患者が投与されないかを決めなければならないのです」。

新たにがんと診断された患者の約半数は65歳以上であり、メディケア(米国の高齢者および障害者向け公的医療保険制度)は米国内最大のがん医療費負担制度となっている。そのため、ASCOは議会に対し、以下の3つの分野で早急な対策を講じるよう求めている。

1.支払い
議会は、人為的に低く設定されたジェネリック医薬品の償還率を緩和する(価格を上げる)といった代替的な支払い設定を検討し、それによって医薬品の安定供給をより促進することができるのではないか。医薬品費の支払改革は、品質と供給の安定性を考慮するべきである。

2.製造
議会は、例えば重要な医薬品の連続生産など、先進技術の採用を奨励できるのではないか。また、税額控除や政府との契約など、米国での製造を増やすための刺激策も可能ではないか。

3.品質
議会は、医薬品リスク管理計画書の要件強化や、購入者が品質と安定供給の提供能力を示すメーカーと契約するための刺激策を検討することが可能ではないか。

「この深刻な抗がん剤不足は危機的状況にあります。私たちは行動を起こさなければなりません。がん患者とその家族は、必要な治療を遅滞なくかつ必要な期間受けられると言われて然るべきです」とGralow医師は述べる。「ASCOは、がん患者が必要な救命・延命治療を受けることを保証する包括的な解決策を促進するため、議会と協働してゆく準備があります」。

  • 監訳 高濱隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
  • 翻訳担当者 山口みどり
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  • 原文掲載日 2024/02/06

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