FDAがCOVID-19の有望な治療法として回復期血漿の緊急使用を許可

速報

2020年8月23日

8月23日、米国食品医薬品局(FDA)は、COVID-19対応の一環として、入院患者におけるCOVID-19の治療を目的とする回復期血漿療法の研究的使用に対する緊急使用許可(EUA)を発出した。FDAは、決定書に記載されているように、評価可能な科学的根拠に基づいて、本製剤はCOVID-19の治療に有効である可能性があり、その既知および潜在的なリスクを上回ると結論付けた。

COVID-19回復期血漿療法の安全性と有効性を明確に証明するための臨床試験が現在も継続中であるため、緊急時にこの療法を利用しやすくするための対策として、FDAが科学的知見と過去数カ月間に得られたデータの広範なレビューを行い、その結果をもとに今回の措置が講じられた。

緊急使用許可は、COVID-19の疑いがあるか検査で確認済の入院患者の治療のために、COVID-19回復期血漿を米国内で供給し、医療提供者が適切に投与することを承認するものである。

保健福祉長官、Alex Azar氏

「FDAによるCOVID-19回復期血漿の緊急承認は、COVID-19から命を救うためのトランプ大統領の取り組みにおける画期的な成果です。トランプ政権は早くから回復期血漿が有効である可能性を認識していました。数カ月前にFDA、BARDA(生物医学先端研究開発局)及び民間の協力団体は、臨床試験を通じたデータ評価を継続しながら、この製剤を全米で利用できるようにするための取り組みを開始しました。私たちの取り組みにより、他のどの国よりも回復期血漿へのアクセスが広がり、これまでに7万人以上の米国人患者に使用されています。私たちは、すでに血漿を提供してくれた米国人の方々に深く感謝するとともに、COVID-19から回復した方々には、回復期血漿の提供を検討してもらえたらと思います。」とAzar長官は述べている。

FDA長官、Stephen M. Hahn医学博士

「私は命を救うために、COVID-19の安全で有効である可能性のある治療法をできるだけ早く世に出すことに尽力しています。私たちは、回復期血漿についてこれまでに確認してきた初期の有望なデータに勇気づけられています。今年行われた研究のデータにより、COVID-19から回復した患者の血漿が、この恐ろしいウイルス感染で苦しんでいる人の治療に役立つ可能性が示されています。また、研究者らと協力して、新型コロナウイルス感染症患者の治療における回復期血漿の安全性と有効性を検討する無作為化臨床試験を継続して実施していきます。」とHahn医師は述べている。

回復期血漿に関する科学的根拠

FDAの生物製剤評価研究センターは、緊急使用許可基準と入手可能な科学的根拠を総合的な評価に基づいて、緊急使用許可を発行するための法定基準を満たしていると判断した。

FDAは、COVID-19回復期血漿が、一部の入院患者におけるCOVID-19の重症度の軽減や罹患期間の短縮に有効であると考えるのが妥当であると判断した。また、FDAは、COVID-19治療において、回復期血漿の既知および潜在的な利点は、その既知および潜在的なリスクを上回るものであり、承認された利用可能なしかるべき代替治療法は存在しないと判断した。

緊急使用許可は無作為化臨床試験が不要になることを意図したものではない。また、現在進行中の無作為化臨床試験への患者の登録の促進は、COVID-19回復期血漿療法の安全性と有効性を確実に証明するために極めて重要である。FDAは、COVID-19回復期血漿療法が、現在入手可能なエビデンスに基づく新たな標準治療といえるものではないため、現在進行中のCOVID-19回復期血漿療法および他の治療薬の無作為化臨床試験のデザインを変更せず継続することを推奨する。

緊急使用許可の使用規定

緊急使用許可としては、COVID-19の治療におけるCOVID-19回復期血漿の使用に関する重要な情報を提供するファクトシートを、投与方法や潜在的な副作用を含めて医療提供者患者が利用できるようにすることを求める。COVID-19回復期血漿療法の副作用には、アレルギー反応、輸血関連循環負荷、輸血関連肺障害、輸血感染症の可能性が含まれる。

メイヨークリニック拡大アクセスプログラム

FDAは当初、従来の臨床試験や個々の患者に対する緊急の治験薬(IND)申請の方法で、COVID-19治療用の回復期血漿へのアクセスを進めた。

回復期血漿療法のための拡大アクセスプログラム は4月上旬に開始された。これは、FDAが研究者らと協力して、回復期血漿療法の無作為化臨床試験を推進するのと並行して、有効である可能性のある医薬品へのアクセスを患者に提供するための緊急的なニーズを満たすものである。個々の患者に対するIND申請が毎日のように数百件に達するようになったため、FDAは産学官の団体と協力して、国の未承認治療への拡大アクセス制度を通じて、国内で回復期血漿を必要としている患者に治療を提供するための拡大アクセスプログラムを適用した。このプログラムは、米国保健福祉省(HHS)の生物医学先端研究開発局からの資金提供を受けて開発され、メイヨークリニックが主導機関となっている。現在までに、このプログラムは7万人以上へ回復期血漿の投与を進めてきた。

緊急使用許可は、米国保健福祉省 の事前準備・対応担当次官補局に向けて発出された。

緊急使用許可は、COVID-19の予防および治療のための薬剤および生物製剤の緊急使用の承認を正当化する状況が終了するまで有効である。緊急使用許可は、法定な基準を満たさないと判断された場合に修正または取り消される可能性がある。

FDAがCOVID-19の有望な治療法として回復期血漿の緊急使用を許可

翻訳担当者 滝坂美咲

監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

FDAニュースに関連する記事

FDAがデスモイド腫瘍にニロガセスタットを承認の画像

FDAがデスモイド腫瘍にニロガセスタットを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年11月27日、米国食品医薬品局(FDA)は全身治療を必要とする進行性のデスモイド腫瘍の成人患者を対象にニロガセスタット[nirogacestat](...
FDAがフルベストラント併用で乳がん治療薬カピバセルチブを承認の画像

FDAがフルベストラント併用で乳がん治療薬カピバセルチブを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年11月16日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移病変に対し1つ以上のホルモン療法レジメンで進行または術後療法終了後12カ月以内に再発したホルモン受容...
FDAが遠隔転移を有する難治性大腸がんにフルキンチニブを承認の画像

FDAが遠隔転移を有する難治性大腸がんにフルキンチニブを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年11月8日、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンをベースとする化学療法、抗VEGF療法、およびRAS野生...
FDAが上咽頭がんにトリパリマブを承認の画像

FDAが上咽頭がんにトリパリマブを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年10月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移性または再発性の局所進行上咽頭癌(NPC)の成人患者に対する一次治療として、シスプラチンおよびゲムシ...